
【インタビュー】作家・中山七里が選ぶ 私のおすすめミステリ 第12回
作家が選ぶ 私のおすすめミステリ

手に汗握る衝撃的な展開やドキドキの伏線回収など、数多くの人気作品が生まれる“ミステリ”ジャンル。そんな作品を生み出している作家の皆さんは、かつてどんな作品に出合い、そしてどのように自身の物語を生み出しているのだろうか?
今回は2025年4月25日に『棘の家』が文庫化された作家・中山七里さんに、おすすめのミステリ作品を伺いました!
現役作家が語るおすすめミステリという、カドブンならではの貴重なインタビューです!
――中山さんおすすめのミステリ作品と、それぞれおすすめの理由も教えてください!
1:『学校の殺人』ジェームズ・ヒルトン:著 龍口直太郎:訳(創元推理文庫)
あの文豪ヒルトンの作品ということで半ば軽い気持ちで手に取ったが、ミステリとしては本格も本格、びっくりした思い出があります。
最近、全集には入っていないので入手しづらいのですが、一読の価値有りです。
2:『UFO大通り』島田荘司(講談社文庫)
何を隠そう、最初にゲットしたサイン本。サインをいただく際、島田さんとふた言み言交わした直後に小説を書き始めました。中山七里の生まれた瞬間でした。
――寄宿舎で発生した怪死事件と奇妙な遺言状からなるヒルトンの長編推理小説『学校の殺人』と、UFOと変死体とが組み合わさり、読み応え抜群な中編集となっている『UFO大通り』。素敵な作品をご紹介いただきありがとうございます!
中山さんが作家になることを決めたきっかけ、またミステリ作品を書くようになったきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
約19年前、島田さんのサイン会に行ったその日にパソコンを買って、小説を書いてみることにしました。勢いで書いた170枚、それだけではどこにも応募できませんでした。公募ガイドを見て締切が間に合いそうだったのがこのミス(「このミステリーがすごい!」)だけでした。原型の170枚はホラーだったので、残り330枚をミステリにして体裁を整えました。出してみたら最終選考に残ってしまいました。その作品が『魔女は甦る』。交通事故みたいなものです。世が世なら横溝に出していたかもしれません。
――第8回『このミス』大賞を受賞してデビューするまでに、そんなエピソードがあったんですね!
ミステリ作品を執筆されるうえで、こだわりや意識されている点はありますか?
とにかく読んでいる間は嫌なこと、不安なことを一切忘れてほしい。それ以外のこだわりは何もありません。
定価以上の娯楽を提供する。それだけです。
――「定価以上の娯楽を提供する」。シンプル・イズ・ベストな、中山さんの強い想いがこもった回答をありがとうございます。
今回文庫化された『棘の家』着想のきっかけと、読みどころをお伺いできましたら幸いです。
確か「家族小説」を書けというオファーだったと思いますが、僕に書かせると家族はこうなってしまいます。家族の数だけ不幸がある。そこに留意して書きました。幸福の数は限られていますが、不幸の数は無限ですからね。
――「不幸の数は無限」。この一言にドキッとした読者の方もいるのではないでしょうか。
小学校で娘がいじめを受け、いじめた側の少女が殺された。しかも、犯人は家族の中にいる――? 加害者と被害者の立場が二転三転しながら紡がれる「人間の裏の顔」。
ミステリ好きの方、そしてどんでん返しの作品が好きな読者のみなさんも、ぜひ手に取ってみてくださいね!
『棘の家』
書 名:棘の家
著 者:中山七里
発売日:2025年04月25日
家族全員、容疑者。人間の裏の顔を描く家族ミステリ。
穂刈は、クラスで起こるいじめに目を逸らすような、事なかれ主義の中学教師だった。
しかし小6の娘がいじめで飛び降り自殺をはかり、被害者の親になってしまう。
加害児童への復讐を誓う妻。穂刈を責める息子。家庭は崩壊寸前だった。
そんな中、犯人と疑われていた少女の名前が何者かにインターネットに書き込まれてしまう。
追い込まれた穂刈は、教育者としての矜持と、父親としての責任のあいだで揺れ動く……。
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