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【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』 vol.74

【第234回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』

柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。

【第234回】柚月裕子『誓いの証言』

 検察側、弁護側の双方は、どちらかが提示した物証を証拠として認めない場合、不同意であると裁判官へ述べることができる。
 しかし、その多くは書類証拠と呼ばれるものに対して使われる。誰かの証言が書かれている書類を裁判官に提出したが、それが本当かどうかわからない。もしかしたら、噂の類の話であり、裁判で証拠として扱うような重みがあるものではないかもしれない。そのような疑いがあるときに、その書類に書かれている証言をした人物を公判に呼び出し、噂などではなく自分がはっきりとこの目で見た、もしくは、聞いた、との証言が得られなければ、証拠として扱うことは認めない、というものだ。
 だが、いまのような映像や音声での証拠は疑いようがない。佐方は乙部に向かって、問題がないことを告げた。
「然るべく」
 乙部は頷き、公判を進める。さきほどの防犯カメラの映像の提出で、検察側の証拠調べが終わった。次は弁護人の証拠調べの番だ。
 乙部が佐方に言う。
「続いて弁護人、立証してください」
 佐方は椅子から立ち上がり、乙部を見た。
「証人として、大橋猛さんをお願いします」
 乙部が岩谷に訊ねる。
「検察官、意見はありますか」
「然るべく」
 岩谷が静かに答える。
 公判がはじまる前に行われる、公判前整理手続きで、大橋の出廷は伝えていた。原告の晶を子供のころから知る人物であり、被告人の久保とも面識がある。今回の事件の遠因に関係している証人として出廷をさせたい、との理由だった。

(つづく)

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連載小説『誓いの証言』は毎日正午に配信予定です(日曜・祝日除く)。更新をお楽しみに!
https://kadobun.jp/serialstory/chikainoshogen/

第1回~第160回は、「カドブン」note出張所でお楽しみいただけます。

第1回はこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/n/n266e1b49af2a
第1回~第160回の連載一覧ページはこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/m/m1694828d5084

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