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連載

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』 vol.72

【第232回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』

柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。

【第232回】柚月裕子『誓いの証言』

 十分の休憩を挟んで、公判は再開された。
 公判は、検察側の証拠調べが続く。岩谷は、証人が証言する口頭証拠調べから、事件に関する物理的なもの――たとえば凶器、現場に残されていた遺留品などを裁判官に提示する証拠物調べに移った。
 法壇の横に、天井から白いスクリーンが下ろされ、その前に置かれた机にはプロジェクターが置かれた。
 準備が整うと、岩谷が声を張った。
「では、こちらをご覧ください」
 法廷の照明が暗くなり、スクリーンに映像が映し出される。そこには一組の男女がいた。路上で抱き合うような姿勢をとっている。
 やがて女性が膝から崩れ落ちそうになった。それを男性が両手で支え、引きずるように建物のなかへ入っていく。ふたりの姿が建物のなかへ消えたところで映像は終わり、照明が明るくなった。
 岩谷は裁判官たちがいる法壇と傍聴席を見やりながら、映像の説明をする。
「いまご覧になった映像は、事件当日、被告人が原告を連れ込んだホテル――ロイヤルアスク近辺の路上に設置されていた防犯カメラに残っていたものです。録画された日時は、事件当日、深夜一時十分。いままでの証言から、被告人が原告を連れ込んだとされる時刻と一致します。そして、ここにご注目ください」
 岩谷はプロジェクターを操作して、女性を抱きかかえた男性がホテルに入ろうとしている瞬間をスクリーンに再度、映した。そして、ふたりの上半身をアップにする。ふたりの顔が大きく映し出され、それが久保と晶であることが判明する。

(つづく)

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連載小説『誓いの証言』は毎日正午に配信予定です(日曜・祝日除く)。更新をお楽しみに!
https://kadobun.jp/serialstory/chikainoshogen/

第1回~第160回は、「カドブン」note出張所でお楽しみいただけます。

第1回はこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/n/n266e1b49af2a
第1回~第160回の連載一覧ページはこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/m/m1694828d5084

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