
【インタビュー】作家・澤村御影が選ぶ 私のおすすめミステリ 第11回
作家が選ぶ 私のおすすめミステリ

手に汗握る衝撃的な展開やドキドキの伏線回収など、数多くの人気作品が生まれる“ミステリ”ジャンル。そんな作品を生み出している作家の皆さんは、かつてどんな作品に出合い、そしてどのように自身の物語を生み出しているのだろうか?
今回は2025年3月22日に『准教授・高槻彰良の推察EX3』が刊行された作家・澤村御影さんに、おすすめのミステリ作品を伺いました!
現役作家が語るおすすめミステリという、カドブンならではの貴重なインタビューです!
――澤村さんおすすめのミステリ作品と、それぞれおすすめの理由も教えてください!
1:『ドロレス・クレイボーン』スティーヴン・キング:著 矢野浩三郎:訳(文春文庫)
何度も読み返すくらい大好きな本を一冊挙げるなら、『ドロレス・クレイボーン』かもしれません。ホラーの帝王スティーヴン・キングによる心理ミステリ。殺人容疑をかけられ、警察で取り調べを受けている女性のお話です。圧倒的な筆力で描き出される彼女の人生の物語に、とにかく引き込まれます。探偵が出てきて謎を解くような作品ではないんですが、終盤で一つの真実が明らかになったとき、ひどく胸を突かれました。
2:『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーエンズ:著 友廣 純:訳(早川書房)
『ドロレス・クレイボーン』が気に入った方には、『ザリガニの鳴くところ』(早川書房)もおすすめです。こちらも、殺人容疑をかけられた女性の人生が語られていく物語。『ザリガニ~』は映画もおすすめです。(『ドロレス~』も『黙秘』というタイトルで映画になっていますが、こちらはまず原作を読んでほしい……)
3:『禁忌の子』山口未桜(東京創元社)
最近読んだ本だと、本屋大賞の候補にもなった『禁忌の子』が非常に面白かったです。自分と瓜二つの死体が運び込まれてくるという冒頭のつかみがまず素晴らしくて、タイトルの意味がわかった瞬間には鳥肌が立つほどの興奮を覚えました。探偵役の城崎先生のキャラもすごく好きです!
――素敵な作品をご紹介いただきありがとうございます!
澤村さんが作家になることを決めたきっかけ、またミステリ作品を書くようになったきっかけはどのようなものだったのでしょうか?
小さい頃から「おはなし」を考えるのが好きで、小学校高学年の頃にはもう作家になりたいと漠然と思っていました。あんまり自分がミステリ作家だという自覚はないんですが(笑)、物語を作るときに、何かしらの謎や隠された真実があった方が面白いぞという意識は確かにあります。「実はこの人物の過去にはこんな出来事が」とか「実はこの人はこう考えていて、だからこういう行動に出たんだ」というような、「実はこうだった」を話の中に組み込むようにはしているので、それがミステリといえばミステリ……になっているといいなと、思います……。
――小学校高学年の時には、もう作家業を意識されていたんですね!
ミステリ作品を執筆されるうえで、こだわりや意識されている点はございますか。
私が書いているものは「ミステリ」である前にまず「キャラクター小説」なので、登場人物の造形等は割と誇張されているんですが、それでも最低限のリアリティは大事にしたいと思っています。主な舞台が大学なので、学生生活のあれこれについては自分の過去の記憶を総動員して、それでも足りない部分は人に聞くこともあります。事件や人物の心理・行動に無理がないかということも、不安に思ったら担当さんに相談しています。自分で本を読んだりドラマを観たりしているときに「いや、これはないでしょ」という部分があると、やっぱり気持ちが冷めてしまうので……まあ、高槻シリーズは近頃本物の怪異を扱うことも多いので、そこはもうどうしようもないですけどね(笑)。
――澤村さんの作品は各キャラクターにたくさんのファンがいらっしゃいますが、それはキャラクター造形に限らず、物語の設定や登場人物の行動の面でもリアリティや納得感を大切にされているからなんですね。
怪事件を収集する准教授×孤独な大学生の民俗学ミステリという「准教授・高槻彰良の推察」シリーズ着想のきっかけと、最新作『准教授・高槻彰良の推察EX3』の読みどころをお伺いできましたら幸いです。
前作の『憧れの作家は人間じゃありませんでした』が吸血鬼や座敷童が出てくる話だったから、それに近いジャンルで、でももう少しリアルな方向で……という感じに考えていって、都市伝説や怪談を扱った話になった覚えがあります。最新刊は3冊目の番外編集になりますが、「思い出」をキーワードに、様々なキャラクターの記憶のアルバムをめくるような作りになっています。11巻(『准教授・高槻彰良の推察11 夏の終わりに呼ぶ声』)の裏側を描いた話が多いので、ぜひ11巻とあわせてお読みいただければと思います!
――民間伝承や儀礼・社会などの歴史を読み解いて研究する「民俗学」をテーマとした本作。今まで「その地域の伝統・習慣としてなんとなく知っていた・続けていた」文化を「なぜ?」と疑問を持って探求していく姿勢は、“ミステリ”というジャンルに通じるものがありますね。
あわせてご紹介いただいたシリーズ11巻では、高槻ゼミの合宿での楽しいイベントとともに、青木ヶ原樹海へ行くことになった主人公・尚哉たちのお話など、青春と異界を描く物語が盛りだくさん!
ぜひ今回の最新作とともに、シリーズを通して楽しんでみてくださいね!
『准教授・高槻彰良の推察EX3』
書 名:准教授・高槻彰良の推察EX3
著 者:澤村御影 イラスト:鈴木次郎
発売日:2025年03月22日
高槻ファミリーの大切な「思い出」と、推しキャラエピソード満載の番外編!
ゼミ合宿の写真を見ながら、深町尚哉は写真にまつわる高槻の講義と、ある絵についての依頼を思い出す。それは女子校の美術部にある絵で、「絵から抜けだした女を見ると呪われる」らしい。高槻は早速調査に向かうと言い出すが……。
ほか、ゼミ合宿の裏側で起きていた、沙絵、そして難波のお話や、イギリス時代の渉と高槻の「妖精が入っている箱」についての切ない秘密、佐々倉の誕生日祝いなど、謎と思い出がいっぱいの番外編!
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322410001724/
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シリーズ紹介
『准教授・高槻彰良の推察 民俗学かく語りき』
怪異を収集する准教授×孤独な大学生の民俗学ミステリ
「怪異は、現象と解釈によって成り立つんだよ、深町くん」
人の嘘がわかる耳を持ち、それゆえに孤独になってしまった大学生・深町尚哉。
なんとなく受講した「民俗学2」のイケメン准教授・高槻になぜか気に入られ、怪異に出会うとついテンションが上がってしまう彼の「常識担当」として助手をすることに。
親しくなるにつれて尚哉は、高槻の瞳が時々夜空のような青色に変わることや超記憶能力を持っていることなどを知る。実は高槻もまた、幼い頃に奇妙な体験をしていたのだ……。
このアパートは、幽霊物件?! 隣の空き部屋から聞こえる奇妙な音の正体は……。
――「第一章 いないはずの隣人」
ふと気づくと、周りにいつも針が落ちている……。これは呪い?それとも……。
――― 「第二章 針を吐く娘」
肝試しに出かけた少女が消えた。しかし数日後、彼女は帰ってきた。足の裏はきれいなままで……。
――「第三章 神隠しの家」
果たしてこの世に「本物の怪異」は存在するのか――?
ちょっぴり残念なイケメン准教授と、常識担当の大学生の凸凹コンビが民俗学の知識を使って、怪奇事件や都市伝説の謎を「解釈」する軽快なミステリ、開講!!!
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