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作家が選ぶ 私のおすすめミステリ

【インタビュー】作家・岩井圭也が選ぶ 私のおすすめミステリ 第13回

作家が選ぶ 私のおすすめミステリ

手に汗握る衝撃的な展開やドキドキの伏線回収など、数多くの人気作品が生まれる“ミステリ”ジャンル。そんな作品を生み出している作家の皆さんは、かつてどんな作品に出合い、そしてどのように自身の物語を生み出しているのだろうか?
今回は2025年6月17日に『最後の鑑定人』が文庫化される作家・岩井圭也さんに、おすすめのミステリ作品を伺いました!
現役作家が語るおすすめミステリという、カドブンならではの貴重なインタビューです!

――岩井さんおすすめのミステリ作品と、それぞれおすすめの理由も教えてください!

1:『ちあき電脳探偵社』北森 鴻(PHP文芸文庫)



小学3年生の時に出合ってのめりこんだのが、北森 鴻さんの『ちあき電脳探偵社』です。この作品がきっかけで、拙いながらも小説らしきものを書くようになりました。

2:『白夜行』東野圭吾(集英社文庫)



その後ミステリを読むようになりましたが、最も記憶に残っている作品の一つが東野圭吾さんの『白夜行』(集英社文庫)です。大学受験をした帰りの空港で買って読みはじめて、止まらなくなったことを覚えています。

3:『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成(角川文庫)



作家になってからは浅倉秋成さんの『六人の嘘つきな大学生』に衝撃を受けました。圧倒的な面白さはもちろんのこと、私自身この作品の登場人物たちと同じ2011年に就職活動をしていたので、そういう意味でも思い入れが深い作品です。

――幼少期・学生時代・作家になってから衝撃を受けた作品と、岩井さんの人生の節目ごとに出合った作品をご紹介いただきありがとうございます!
岩井さんが作家になることを決めたきっかけ、またミステリ作品を書くようになったきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

前述のとおり、小学3年生の時に学年誌に連載されていた『ちあき電脳探偵社』と出合い、熱烈なファンとなりました。しかし学年誌のため、連載は1年で終了。その後ももっと読みたいと思った私は、「ないなら自分で書けばいい」という自給自足の精神で、『ちあき電脳探偵社』とよく似たジュブナイルミステリを書くようになりました。それがきっかけで作家を志し、後年、20代で本格的に小説を書きはじめました。
私が書く小説には、ミステリとは呼べないものもたくさんあります。ただ、ミステリは岩井圭也という小説家の出発点であり、今後も欠くことのできない領域だと思っています。

――岩井さんの作家人生の始まりは、まさしく『ちあき電脳探偵社』だったんですね!
ミステリ作品を執筆されるうえで、こだわりや意識されている点はございますか。

必ずしも克明に描くわけではありませんが、犯罪を扱うミステリであれば、犯人の動機を重視しています。ミステリの醍醐味の一つは、残された手がかりから真犯人や犯行様態をロジカルに導く過程を楽しむことにあると思います。しかし、動機を論理的に導くことは難しい場合が少なくありません。場合によっては、犯行に及んだ本人ですら動機を理解できていないこともあります。一方で、論理的に導くことが難しい場所にこそ、人間心理という最も魅力的な「謎」が潜んでいるようにも思います。その「謎」を解き明かすことこそが、私がミステリを書いている最大の理由かもしれません。

――ミステリは「動機」という人間の感情が大きく影響するジャンルだからこそ、書き手である岩井さんも「証拠を積み重ねて解き明かす楽しさ」を執筆時に意識されているんですね。
『最後の鑑定人』着想のきっかけと、読みどころをお伺いできましたら幸いです。

私は理系の大学・大学院(修士)の出身で、この背景を活かしたミステリが作れないか、という発想が出発点でした。最初に思いついたのは科学捜査研究所(いわゆる科捜研)の職員を主人公にした物語でしたが、既視感のあるものにしかなりませんでした。その後、科学鑑定について調べるなかで、警察職員ではなく「民間の鑑定人」が存在すると知りました。民間鑑定人であれば、刑事だけでなく民事も扱えるという幅の広さに気付いてからは、一気に構想が固まりました。
『最後の鑑定人』は科学鑑定を軸としたミステリですが、理系分野になじみのない方でも楽しんでいただけると思います。各章で披露される「動機」も含めて、味わっていただければ幸いです。

――『「民間の鑑定人」だからできること』にたどり着いた時、土門誠の物語が誕生したんですね!
夏には本作が藤木直人さん主演でドラマ化されると伺いました。
ドラマ化の知らせを聞いたときのお気持ちと、楽しみにされている点を教えてください!

ドラマ化のお話をいただいた時は、素直に驚きました。映像で土門の活躍を見ることができるなんて、『最後の鑑定人』を執筆していた時には想像もしていなかったことです。
藤木直人さんが土門誠というクセのある人物をどのように演じてくださるのか、今からとても楽しみです。またこのドラマ化をきっかけに、一人でも多くの方が科学鑑定への興味関心を持ってくださると嬉しいです。

――ありがとうございます。
カドブン読者の皆さんもぜひ、ドラマと共に『最後の鑑定人』を楽しんでみてくださいね!

『最後の鑑定人』



書 名:最後の鑑定人
著 者:岩井圭也
発売日:2025年06月17日

嘘をつくのは、いつだって人間です――孤高の鑑定人・土門誠の事件簿!
かつて科捜研のエースとして「彼に鑑定できない証拠物なら、他の誰にも鑑定できない」と言わしめ、「最後の鑑定人」として名を轟かせた土門誠。しかしとある事件をきっかけに、科捜研を辞職。新たに民間鑑定所を立ち上げた土門のもとに次々と不可解な事件が持ち込まれる。いつも同じ服、要件しか話さないという一風変わった合理主義者でありながら、その類まれなる能力で、難事件を次々と解決に導いていく――「科学は嘘をつかない。嘘をつくのは、いつだって人間です」。孤高の天才鑑定人・土門誠の華麗なる事件簿。


詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322412000809/
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