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作家が選ぶ 私のおすすめミステリ vol.14

【インタビュー】作家・東川篤哉が選ぶ 私のおすすめミステリ 第14回

作家が選ぶ 私のおすすめミステリ

手に汗握る衝撃的な展開やドキドキの伏線回収など、数多くの人気作品が生まれる“ミステリ”ジャンル。そんな作品を生み出している作家の皆さんは、かつてどんな作品に出合い、そしてどのように自身の物語を生み出しているのだろうか?
今回は2025年7月2日に『谷根千ミステリ散歩 密室の中に猫がいる』が発売された作家・東川篤哉さんに、おすすめのミステリ作品を伺いました!
現役作家が語るおすすめミステリという、カドブンならではの貴重なインタビューです!


――東川さんおすすめのミステリ作品と、それぞれおすすめの理由も教えてください!

1:『連続自殺事件【新訳版】』ジョン・ディクスン・カー:著 三角和代:訳(創元推理文庫)



中学生になった私が初めて自腹で購入した大人向けのミステリが、ジョン・ディクスン・カーの『連続殺人事件』(創元推理文庫)。怪しい古城あり、不可能趣味あり、主人公の恋バナあり、と盛りだくさんの内容で愉快な読書体験でした。数年前に『連続自殺事件』という新タイトルで再文庫化されましたので、新刊書店ではそちらのタイトルで、古本屋ならば旧タイトルで探してみてください。

――素敵な作品をご紹介いただきありがとうございます! また、東川さんからは他にも3冊の作品をおすすめしていただきました。

東川さんが衝撃を受けた一冊
2:『改訂完全版 斜め屋敷の犯罪』島田壮司(講談社文庫)



あらすじ
北海道の最北端・宗谷岬に傾いて建つ館――通称「斜め屋敷」。雪降る聖夜にこの奇妙な館でパーティが開かれたが、翌日、密室状態の部屋で招待客の死体が発見された。人々が恐慌を来す中、さらに続く惨劇。御手洗潔は謎をどう解くのか!? 日本ミステリー界を変えた傑作が、大幅加筆の改訂完全版となって登場!
講談社オフィシャルサイトより引用:
https://www.kodansha.co.jp/book/products/0000212236

東川さんもミステリを書こうと思った一冊
3:『月光ゲーム』有栖川有栖(創元推理文庫)



あらすじ
夏合宿のために矢吹山のキャンプ場へやってきた英都大学推理小説研究会の面々を、予想だにしない事態が待ち構えていた。山が噴火し、偶然一緒になった三グループの学生たちは、陸の孤島と化したキャンプ場に閉じ込められてしまったのだ。その極限状況の中、まるで月の魔力に誘われたように出没する殺人鬼! 有栖川有栖のデビュー長編。
東京創元社オフィシャルサイトより引用:
https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488414016

東川さんが「短編のお手本」と語る一冊
4:『亜愛一郎の狼狽』泡坂妻夫(創元推理文庫)



あらすじ
雲や虫など奇妙な写真を専門に撮影する青年カメラマン亜愛一郎は、長身で端麗な顔立ちにもかかわらず、運動神経はまるでなく、グズでドジなブラウン神父型のキャラクターである。ところがいったん事件に遭遇すると、独特の論理を展開して並外れた推理力を発揮する。作家・泡坂妻夫のデビュー作「DL2号機事件」など全8話を収録した。
東京創元社オフィシャルサイトより引用:
https://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488402143

あ、もちろん角川文庫の横溝正史も、ぜひ!

――どの作品も読み応えのあるミステリですね。
東川さんが作家になることを決めたきっかけ、またミステリ作品を書くようになったきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

かつて光文社文庫で『本格推理』という短編コンテストみたいな公募企画がありました。アルバイト生活だった私が、この企画に応募したのが1995年の暮れのこと。マヤノトップガンが勝った有馬記念を取りそこなったウサ晴らしに一気呵成に書き上げた短編「中途半端な密室」は、自分にとって初めて最後まで書ききった作品であり、当然ながら初投稿でした。これを『本格推理』にて編集長(すなわち選者)を務める鮎川哲也先生が入選作としてくださったことが、作家を目指すきっかけとなりました。初めて書いた作品が入選するんだから、きっと自分には才能があるんだろう──と当時の私は単純にそう思ったんですね。

――初めて書いた作品が入選! すごいですね。その後も東川さんは『本格推理』にさまざまな作品が掲載されたのち、2002年に『密室の鍵貸します』で作家デビューされましたね。
「謎解きはディナーのあとで」シリーズなど、東川さんの作品にはミステリでありながらどこか軽やかな、読んでいて楽しくなる雰囲気が漂っています。ミステリ作品を執筆するうえで、こだわりや意識されている点はございますか?

私の場合、書くものはすべてユーモアミステリなのですが、そこで意識するのは「最後までユーモアミステリであり続けること」です。明るく軽快にスタートした物語が、やがて殺人事件などが起こるにつれて次第に重苦しい雰囲気になって、結末のころにはもはやユーモアの欠片もない、ただの深刻なミステリになっている──というようなパターンは避けねばなりません。どれほど人が死のうが、どれだけ主人公が酷い目に遭おうが、最後まで冗談をいえる雰囲気を保ち続けること。これが最も大事で最も難しい点かもしれません。

――ミステリという“謎解き”のドキドキとユーモアの絶妙なバランスがあるからこそ、東川さんの作品は何度でも手に取りたくなる物語になっているんですね。
今回の新刊は、東京の下町情緒あふれる谷根千にある雑貨屋「怪運堂」の店主・竹田津優介と女子大生・岩篠つみれが主人公の「谷根千ミステリ散歩」シリーズ待望の第2巻。
シリーズの着想のきっかけと、新刊の読みどころをお伺いできましたら幸いです。

そもそもは、KADOKAWAの編集者から「谷根千を舞台にミステリを書きませんか」と提案してきたものです。「いま谷根千がブームですから」とも、いわれた気がします。正直、私としては「谷根千ってどこ?」と首を捻るぐらいに、まるで縁のない場所だったのですが、実際に散歩、いや、実際に取材してみると、確かに風情があって面白そうな街だと思えたので、その提案に乗っかることにしました。今回の作品の読みどころは、ズバリ猫。そして、その猫にほのかな嫉妬心を燃やすつみれちゃんの姿ですかね。ミステリとしては不可能犯罪から日常の謎まで、なかなかバラエティに富んだ内容になっていると思いますよ。

――どこかほっとする谷根千の雰囲気が、心地よいミステリと合わさって本作に描かれていますね。シリーズ第2巻では、猫が犯人かもしれない!? 密室殺人と衝撃の真相に、ぜひご注目ください!

『谷根千ミステリ散歩 密室の中に猫がいる』



書 名:谷根千ミステリ散歩 密室の中に猫がいる
著 者:東川篤哉
発売日:2025年07月02日

ゆるすぎる名探偵&迷推理女子による、猫とユーモアたっぷりの本格ミステリ
下町情緒あふれる谷根千の路地裏にある、隠れ家的雑貨屋「怪運堂」。 店主の探偵の素質に気付いた岩篠つみれが難事件を持ち込むと、竹田津は猫をかまったり寄り道ばかりしながらも、鮮やかに謎を解き明かしていく!

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322309001301/
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第1回~第9回は、「カドブン」note出張所でお楽しみいただけます。
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