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【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』 vol.81

【第241回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』

柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。

【第241回】柚月裕子『誓いの証言』

 乙部は大橋に、改めて確認する。
「原告が、原滋さんの孫であることに間違いないのですね」
 姿勢を元に戻した大橋は、乙部に答える。
「はい、間違いありません」
 晶が安藤文子の養子になっていたことを書類で確かめたらしく、乙部は納得したようにうなずき、佐方に言う。
「原告が証人の大切な方の孫であることはわかりました。でも、それが今回の事件にどのように関係しているのかわかりません。弁護人は尋問を続けてください」
 佐方は頷き、大橋を見やった。
「大橋さんは蕃永町にお住まいとのことですが、原告のことはいつから知っているのですか」
「アキちゃん――昔からそう呼んでいたので、ここでもそう呼ばせてもらいます。アキちゃんのことは、彼女が生まれたときから知っています。アキちゃんの父親が私の同級生で、昔から仲良くしていましたから、アキちゃんが生まれたときは、そいつと一緒に喜びました」
「でも、その人と奥さん――原告の両親は事故で亡くなってしまったんですね」
 大橋は辛そうに目を伏せた。
「ショックでした。まさかこんなことが起きるなんて――とても信じられませんでした。でも、それ以上に耐えられなかったのが、原じいのことでした」
「原さんのこと?」
 大橋が頷く。
「両親が死んだことすらまだわからない幼いアキちゃんを抱いて、項垂うなだれている姿はとても見ていられませんでした。神様は無慈悲だなと思いました」

(つづく)

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連載小説『誓いの証言』は毎日正午に配信予定です(日曜・祝日除く)。更新をお楽しみに!
https://kadobun.jp/serialstory/chikainoshogen/

第1回~第160回は、「カドブン」note出張所でお楽しみいただけます。

第1回はこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/n/n266e1b49af2a
第1回~第160回の連載一覧ページはこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/m/m1694828d5084

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