【第241回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉
【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』

柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。
【第241回】柚月裕子『誓いの証言』
乙部は大橋に、改めて確認する。
「原告が、原滋さんの孫であることに間違いないのですね」
姿勢を元に戻した大橋は、乙部に答える。
「はい、間違いありません」
晶が安藤文子の養子になっていたことを書類で確かめたらしく、乙部は納得したように
「原告が証人の大切な方の孫であることはわかりました。でも、それが今回の事件にどのように関係しているのかわかりません。弁護人は尋問を続けてください」
佐方は頷き、大橋を見やった。
「大橋さんは蕃永町にお住まいとのことですが、原告のことはいつから知っているのですか」
「アキちゃん――昔からそう呼んでいたので、ここでもそう呼ばせてもらいます。アキちゃんのことは、彼女が生まれたときから知っています。アキちゃんの父親が私の同級生で、昔から仲良くしていましたから、アキちゃんが生まれたときは、そいつと一緒に喜びました」
「でも、その人と奥さん――原告の両親は事故で亡くなってしまったんですね」
大橋は辛そうに目を伏せた。
「ショックでした。まさかこんなことが起きるなんて――とても信じられませんでした。でも、それ以上に耐えられなかったのが、原じいのことでした」
「原さんのこと?」
大橋が頷く。
「両親が死んだことすらまだわからない幼いアキちゃんを抱いて、
(つづく)
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