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特集

【ブックガイド】『この夏の星を見る』文庫化&映画大ヒット記念 いま改めて読みたい辻村深月の物語

2020年春、コロナ禍によって「いつも通り」の日常がすべて消え去ったある日。茨城県に住む高校2年生の亜紗、東京の中学に入学したばかりの真宙、長崎県五島列島に住む高校3年生の円華……それぞれ離れた場所に住む中高生たちは、コロナ禍で複雑な想いを抱えながらも、星についての活動を通じてやがて繋がっていく――。
中高生たちの青春を描いた本作はコロナ禍に苦しんださまざまな世代の心に届き、今月公開された映画も大ヒット。
今回は本作の文庫化、また映画化を記念して、『ダ・ヴィンチ』2019年4月号の特集から一部を抜粋し、これまでの辻村深月作品をご紹介!
「この夏」に改めて読みたい、とびっきりの物語をあなたに。

※本記事の一部は『ダ・ヴィンチ』2019年4月号より転載

文:河村道子

いま改めて読みたい辻村深月の物語

この物語は、あなたの宝物になる。
『この夏の星を見る』(角川文庫)



亜紗は茨城県立砂浦第三高校の二年生。顧問の綿引先生のもと、天文部で活動している。コロナ禍で部活動が次々と制限され、楽しみにしていた合宿も中止になる中、望遠鏡で星を捉えるスピードを競う「スターキャッチコンテスト」も今年は開催できないだろうと悩んでいた。真宙(まひろ)は渋谷区立ひばり森中学の一年生。27人しかいない新入生のうち、唯一の男子であることにショックを受け、「長引け、コロナ」と日々念じている。円華(まどか)は長崎県五島列島の旅館の娘。高校三年生で、吹奏楽部。旅館に他県からのお客が泊っていることで親友から距離を置かれ、やりきれない思いを抱えている時に、クラスメイトに天文台に誘われる――。

閉塞感のなかで、肥大化していく夢がふと引き寄せる女たちの暗転
『鍵のない夢を見る』(文春文庫)



日常に倦み、ふと抱いたささやかな欲望。注目を浴びたい、彼が欲しい、昔の恋人にもう一度会いたい、母になりたい、私はもっと価値ある女だと周囲に認めさせたい──地方の町の閉塞感のなか、5 人の女性は夢を醸造し、増幅させていく。魔が差す、踏み外す、そして引き寄せてしまう“犯罪”という名の転落。日常という箱のなかに潜む不穏を描き出した傑作短編集。

するべきことは、その子を救うこと 限られた時間、誰かのために懸命になる
『名前探しの放課後』(上・下)(講談社文庫)



“今から、俺たちの学年の生徒が一人、死ぬ。――自殺、するんだ。”タイムスリップで3ヵ月先から戻されたいつか。動揺のなか、浮かんだその記憶。だが、それが誰なのか、詳細さえも思い出せない。タイムリミットの迫る死を回避するために、その“誰か”を探したいと、依田いつかが相談したクラスメイトの坂崎あすなは、ある日、遺書と自分の死亡記事を書き続けている同級生を見つける――。

ここで働く人、訪れた人が丹精に紡ぐ自分だけの珠玉の物語 
時代が変わっても受け継がれる静謐な情熱
『東京會舘とわたし』(上・下)(文春文庫)



大正11年、国際社交場として創業して以来、90余年も東京を見つめてきた優美な建物には、訪れた人やそこで働く人々の、この場所への崇高な愛が堆積している。灯火管制の下で行われた結婚式、GHQ接収中に生まれたカクテル、東日本大震災のあの日のこと……。いくら時が流れても変わらないのは、この場所での幸せな思い出を守りたいという人々の情熱だ。

“わからない人たちを軽蔑してもいい”とさえ
言えるほどの“大好き”という気持ちの尊さ
『ハケンアニメ!』(マガジンハウス文庫)



9 年ぶりに復活したワケアリ天才アニメ監督・王子千晴を口説き落としたプロデューサー・香屋子。目指すはクールを制した最高のアニメに贈られる称号・覇権アニメ。一方、新進気鋭の監督・瞳と敏腕プロデューサーが手掛ける話題作もオンエア。血反吐を吐くような忙しさも、呑み込み切れない理不尽もある。けれど“どうしようもなく好き”! 真っ直ぐさが愛しいお仕事小説。

“背負うものがあるということは、強い”
覚悟と決意を産み出していく、家族というものの絆
『青空と逃げる』(中公文庫)



夫の乗っていた車が起こした事故のせいで、平穏な家族の日常を奪われた早苗と息子・力。疑惑を残したまま失踪した夫の代わりに2 人が背負うことになったのは、世間からの悪意ある眼差しと夫の行方を追う者たちの執拗な追及。母と子は住み慣れた東京を抜け出し、日本各地を流転することに。崩壊してしまった家族。3 人が行き着く場所は……。

あまりにも近くて、当たり前の存在だからこそ
つい出てきてしまう、人間関係の獰猛さ
『家族シアター』(講談社文庫)



“自分は親だから、謝らなくてもいいって思ってるよね”。血のつながりが絶対なんてことはない。でも近しいから、つい勘違いしてしまう。娘の考えていることが理解できない母、趣味で反目し合う兄弟、うまく息子と話すことができない父……他人となら起きない事件が、家族には起きる。大嫌いだけど大好きなのに……。矛盾したその人間関係を紡ぎ出す7つの物語。

“そこがすべて”だと思っていた場所で
傷ついた子どもたちの切実さが開けていく扉
『かがみの孤城』(上・下)(ポプラ文庫)



中学入学早々、あることが原因で学校に行けなくなってしまったこころ。部屋でひきこもっていたある日、部屋の鏡が光り出し、“孤城”のなかに引きずりこまれてしまった。見つけた鍵で部屋を開ければ、どんな願いも叶うと告げる狼面の少女。“孤城”には、こころと同様、学校に行っていない6 人の中学生たちがいた。ともに始める“鍵探し”。それぞれの叫びと願いを抱きながら冒険が始まる。

信じていたものが、自分の正当性が、揺らいでいく
対岸から見た“過去”と対峙する
『嚙みあわない会話と、ある過去について』(講談社文庫)



記憶は私だけの物語だった……? 都合の良いように改ざんし、自分のなかの箱に美しく収めていたものが取り出されたとき、何かが起きる。かつて地味な子だった国民的アイドルの教え子と再会した美術教師、カリスマ経営者となった“イタい”同級生に会いに行くフリーライター……。嚙みあわない会話が、これまで自分の見ていた過去の景色を一変させ、立ちすくむ驚愕の4編。

あいつらが来ると、人が死ぬ。 辻村深月、初の本格ホラーミステリ長編!
『闇祓』(角川文庫)



転校生の白石要は、少し不思議な青年だった。背は高いが、髪はボサボサでどこを見ているかよくわからない。優等生の澪は、クラスになじめない要に気を遣ってこわごわ話しかけ徐々に距離を縮めるものの、唐突に返ってきた要のリアクションは「今日、家に行っていい?」だった――。この転校生は何かがおかしい。身の危険を感じた澪は憧れの先輩、神原一太に助けを求めるが――。学校で、会社で、団地で、身の周りにいるちょっとおかしな人。みんなの調子を狂わせるような、人の心に悪意を吹き込むような。それはひょっとしたら「闇ハラ=闇ハラスメント」かもしれない。「あの一家」が来ると、みんながおかしくなり、人が死ぬ。だから、闇は「祓わなくては」ならない――。辻村深月が満を持して解き放つ、本格長編ホラーミステリ!

作品特設サイト



https://kadobun.jp/special/tsujimura-mizuki/kono-hoshi/


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