KADOKAWA Group
menu
menu

連載

作家が選ぶ 私のおすすめミステリ vol.15

【インタビュー】作家・杉井光が選ぶ 私のおすすめミステリ 第15回

作家が選ぶ 私のおすすめミステリ

手に汗握る衝撃的な展開やドキドキの伏線回収など、数多くの人気作品が生まれる“ミステリ”ジャンル。そんな作品を生み出している作家の皆さんは、かつてどんな作品に出合い、そしてどのように自身の物語を生み出しているのだろうか?
今回は2025年8月27日に『羊殺しの巫女たち』が発売となる作家・杉井光さんに、おすすめのミステリ作品を伺いました!
現役作家が語るおすすめミステリという、カドブンならではの貴重なインタビューです!

――杉井さんおすすめのミステリ作品と、それぞれおすすめの理由も教えてください!

1:『地獄の道化師』江戸川乱歩(角川文庫)



少年探偵団シリーズは小学生のときに全巻読みました。ほとんどは怪人二十面相が敵役の怪奇冒険小説なのですが、10巻に1巻くらいの割合で二十面相が出てこない強烈に怖いホラーミステリが含まれていて、中でも強烈な印象だったのがこの一冊です。ラストはおぞましくも美しく、これしかないという説得力を感じさせてくれたのをいまでもよく憶えています。ミステリ原体験ですね。

2:『秋の花』北村 薫(創元推理文庫)



作家志望時代に読みました。刊行当時、この小説の影響で「女子高生が屋上から落っこちる」フォロワー作品がうじゃうじゃ増えたとか聞きます。遅ればせながら僕も影響を受け、後に書いたのが『神様のメモ帳』です。

――素敵な作品をご紹介いただきありがとうございます! 
杉井さんが作家になることを決めたきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

高校卒業後はミュージシャンを目指してアルバイト生活をしていたのですが、うまくいかずバンドも解散してしまいました。その頃、高校時代の女友達としょっちゅうやりとりをしていて、彼女が作家を目指して新人賞に投稿を続けていたんですね。投稿作を読ませてもらって、これなら自分の方が巧く書けるんじゃないのか? と思ったのが作家を目指すきっかけです。実際はそこから新人賞受賞まで6~7年かかっているので、当時の自信はまるっきり幻想だったわけなのですけれど。

――ご友人の投稿作がきっかけだったんですね! その後、杉井さんは『火目の巫女』で2005年に第12回電撃小説大賞銀賞を受賞しデビューされていますが、以降はキャラクター小説を執筆される機会も多かったと思います。
今回の新刊『羊殺しの巫女たち』はホラーミステリですが、ホラーミステリを書いたきっかけと、ミステリ作品を執筆するうえでのこだわりや意識されている点を教えてください。

きっかけはKADOKAWAの編集部からオファーをいただき、最初の打ち合わせで「いまホラーが熱いですよ」といった話を聞いたことです。それとは別に前々からスティーヴン・キングの『IT』をオマージュした「二つの時代を交互に描くホラー×青春小説」を書いてみたいと思っていて、いまがそのときだな、と心のエンジンに火が付いたのを感じて、構想をまとめ始めました。
キャラクターについては、キングの『IT』のオマージュなので、巫女は最初8人で考えていましたが、構想段階で6人に落ち着きました。旧弊的な村が長者と医者と宗教指導者の三役によって支配されているという、『獄門島』や『屍鬼』にも出てきた設定を踏襲したいと思っていたので、巫女6人のうち3人は三役それぞれの娘――神秘的な姫君、利発でさばけた娘、怜悧で大人びた娘。そこに主人公を加えて4人までは構想段階で決め、後の2人は書きながらキャラを固めていきました。自然と6人が正六角形を描くようなキャラ配置になったのではないかと思います。中でも夏帆というキャラは、コメディリリーフ的な部分もあり、作者の想定を超えて物語の推進力となってくれた感があります。
『IT』がそうであったように、本作も核となるのは「少年期の魔法のようなきらめき」と、「大人になってからそれを失うこと」です。ホラーとしてもミステリとしても読みどころがあるように書きましたが、読み終わってからそうしたディテールが全部洗い流されて青春小説としての印象だけが残る、というように感じてもらえたら狙い通りです。

そして執筆するうえでのこだわりについてですが、とにかくものすごいものを書こう、ということしか考えていない気がします。理想は、読み終わった人がまったくなにも言えなくなるような小説です。感想を書いていただくのはたいへんありがたいことですが、冷静に感想を書けるようでは作品のパワーがまだまだだったな、と思ったりもします。
僕の小説は基本的にすべてキャラクターが最大の売りになるように書いているので、そういう意味ではライトノベルと特に変わらない感覚で書きましたが、作品の雰囲気にふさわしい味付けというものがあるので、甘みはいつもよりかなり抑えてあるはずです。

――スティーヴン・キングの『IT』が執筆のきっかけのひとつになっていたんですね!
杉井さんが得意とする魅力的なキャラクターたちと、「少年期」「大人期」の2回にわたって村の謎を追う本作の構成は、ホラー好き、ミステリ好きそれぞれが楽しめる物語になっていること間違いなし。カドブン読者の皆さんも、ぜひ手に取って楽しんでみてください!

『羊殺しの巫女たち』



書 名:羊殺しの巫女たち
著 者:杉井 光
発売日:2025年08月27日

『世界でいちばん透きとおった物語』の著者による二度読み必至の本格ミステリ
「十二年後、次の祭りの日に、ここでまた集まろうよ。みんなで」
山に囲まれた早蕨部村で12歳を迎える6人の少女たちは、未年にのみ行われる祭りの巫女に任命される。それは繁栄と災厄をもたらす「おひつじ様」を迎えるため、村の有力者たちが代々守ってきた慣習だった。祭りの日、彼女たちは慣習に隠された本当の意味を知る――。そして12年後、24歳になった彼女たちは、村の習わしを壊すというかつての約束を果たすため、村に集う。脈々と受け継がれた村の恐るべき慣習と、少女たちの運命が交錯する中、山で異様な死体が発見される。
あなたは、真実に気づくことができるか。衝撃のホラーミステリが幕を開ける!

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322403000619/
amazonページはこちら
電子書籍ストアBOOK☆WALKERページはこちら

バックナンバーはこちら

第1回~第9回は、「カドブン」note出張所でお楽しみいただけます。
連載一覧ページはこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/m/m868d32080cc6

紹介した書籍

MAGAZINES

小説 野性時代

最新号
2025年8月号

7月25日 発売

ダ・ヴィンチ

最新号
2025年9月号

8月6日 発売

怪と幽

最新号
Vol.019

4月28日 発売

ランキング

アクセスランキング

新着コンテンツ

TOP