背筋が凍る怪談話なのに、笑って泣けて、そして温かい気持ちにもなれる。
江戸を舞台に一風変わった百物語を描く「三島屋変調百物語」シリーズは、宮部みゆき氏がライフワークとして2006年より書き続けており、NHK BSプレミアムでドラマ化もされました。
2025年6月にはシリーズ第9弾『青瓜不動 三島屋変調百物語九之続』の文庫版が刊行され、百物語はいよいよ折り返し地点を迎えようとしています。
「どこから読んでいいか分からない」、「途中から読んでいいの?」という方はご安心ください! シリーズに関わった歴代担当編集者、書籍に花を添えてくださった画家・イラストレーターさんがそれぞれ「おすすめの1話」を厳選しました!
ぜひ、シリーズの入口としてお役立てください。
▼【第1回】はこちら
https://kadobun.jp/feature/readings/entry-127117.html
【第2回】宮部みゆき「三島屋変調百物語」おすすめの1話
「暗獣」(『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』)
選者:南伸坊さん
単行本『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』装画担当
宮部さんの『あんじゅう 三島屋変調百物語事続』のイラストを依頼されて、うれしかったのは、私が江戸時代のお化けの絵が大好きで、あんな絵が描けたらなあ、と思っていたからでした。実際には「くろすけ」が出てくるまでは、直接お化けを描く機会はなかった気がしますが、江戸時代の浮世絵とか、素人の描いた絵日記の絵なんかを参考にイラストを作るのが愉しくて、とてもごきげんに仕事をしていた気分だけが残っています。
選者:中央公論新社・Nさん
新聞連載をまとめた『あんじゅう』(単行本)は、連載時の南伸坊さんのイラストをふんだんに収録しました。物語の魅力をさらに引き出す挿絵のありかたを探って、デザイナーと大いに悩んだのはいい思い出です。涙なくしては読めない表題作「暗獣」の〈くろすけ〉や、「逃げ水」の〈お旱さん〉といった愛らしいキャラクターが印象的な本書のキャッチコピーは「こわくて、かわいい」。「ぴったりね!」と宮部さんににっこりしていただけて、すごく嬉しかったのを覚えています。
▼文庫版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321206000226/
▼単行本版 作品詳細(中央公論新社オフィシャルサイト)
https://www.chuko.co.jp/tanko/2010/07/004137.html
「面の家」(『あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続』)
選者:原田維夫さん
単行本『あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続』装画担当
うれしいことに、宮部みゆきさんの「三島屋変調百物語」の中の「あやかし草紙」の新聞連載を、約一年間描かせていただいた。新聞連載でのさし絵で、私が考えているのは、如何にその作家さんの素晴らしい小説を目にして貰うかということで、新聞を開いた時のアイキャッチャーに成ることだと思っている。その意味で宮部さんのこの作品の、特に「面の家」が、その効果が出し易かった気がする。とんでもないものを描ける楽しさで、毎日ワクワクとしていた。
▼文庫版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321909000206/
▼単行本版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321712000436/
「青瓜不動」(『青瓜不動 三島屋変調百物語九之続』)
選者:KADOKAWA・W
文庫担当として、「あやかし草紙」から「青瓜不動」までを担当しております。新人だった私も、「三島屋」シリーズの巻数とともに歳を重ね、いまや中堅に……。「おちか」とともに仕事をしてきた自分としては、富次郎がたくましくなっていく様にも、おちかがおっかさんになったという事実にも、思わずホロリとしてしまいます。「青瓜不動」は恐ろしさと温かさが同居している、珠玉の一篇だと思っております。このお話からでも楽しめますので、ぜひご一読ください!
▼文庫版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322412000816/
▼単行本版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322109000585/
「三島屋変調百物語」シリーズ 特設ページ
https://kadobun.jp/special/miyabe-miyuki/mishimaya/