背筋が凍る怪談話なのに、笑って泣けて、そして温かい気持ちにもなれる。
江戸を舞台に一風変わった百物語を描く「三島屋変調百物語」シリーズは、宮部みゆき氏がライフワークとして2006年より書き続けており、NHK BSプレミアムでドラマ化もされました。
2025年6月にはシリーズ第9弾『青瓜不動 三島屋変調百物語九之続』の文庫版が刊行され、百物語はいよいよ折り返し地点を迎えようとしています。
「どこから読んでいいか分からない」、「途中から読んでいいの?」という方はご安心ください! シリーズに関わった歴代担当編集者、書籍に花を添えてくださった画家・イラストレーターさんがそれぞれ「おすすめの1話」を厳選しました!
ぜひ、シリーズの入口としてお役立てください。
【第1回】宮部みゆき「三島屋変調百物語」おすすめの1話
「針雨の里」(『青瓜不動 三島屋変調百物語九之続』)
選者:
単行本『青瓜不動 三島屋変調百物語九之続』装画担当
「針雨の里」は恐ろしいのになんとも温かい不思議な物語です。
コロナ禍の当時、命の尊さや相手を想う気持ちをより深く感じさせてくれたように思います。
富次郎の背中を押した展開にも胸が熱くなりました。
お話に登場する「風舞さん」は、実際に紙を切って形を模索しながら挿絵を描いたのですが、
のちに宮部さんから「風舞さん登場時の人形が素晴らしく、私のイメージも固まりました」とコメントを頂き、
作者の想像と重なったことは、忘れられない嬉しい思い出です。
▼文庫版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322412000816/
▼単行本版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322109000585/
「節気顔」(『泣き童子 三島屋変調百物語参之続』)
選者:文藝春秋・Tさん
『泣き童子』を担当したのがもう十四年も前。「くりから御殿」に山津波の話が出てきますが、原稿を頂戴したのが東日本大震災直後だったので、宮部さんが読者のことを気にされていたのを思い出します。当時の著者インタビューに「これまで以上に、やりたい放題やらせていただいた感じです(笑)」とあるように、三巻目で脂の乗り始めた時期。特にお薦めはラストの「節気顔」でしょうか。生者と死者をつなぐ不思議な話は怖くも温 もりと救いがあり、こんなことが実際にあればと思わせてくれます。
▼文庫版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321511000302/
▼単行本版 作品詳細(文藝春秋オフィシャルサイト)
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163822402
「同行二人」(『黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続』)
選者:毎日新聞出版・Nさん
富次郎が聞き手を継いで新章突入、『黒武御神火御殿』の中でも、「同行二人」は忘れられない1話です。妻子を失った飛脚の人生を変えた奇妙な遍路旅は、さまざまに形を変えて糧になっている気がします。表題作は迷い込んだ者を次々と餌食にする恐怖の館。単行本の際、その力の源となる火山のような怨念を、藤枝リュウジさんが迫力の装丁にまとめてくださいました。「そなたの罪を告白せい」という剣吞なコピーを宮部さんにお送りした日々を思い出します。
▼文庫版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322108000236/
▼単行本版 作品詳細(毎日新聞出版オフィシャルサイト)
https://mainichibooks.com/books/novel-critic/post-77.html
「三島屋変調百物語」シリーズ 特設ページ
https://kadobun.jp/special/miyabe-miyuki/mishimaya/