背筋が凍る怪談話なのに、笑って泣けて、そして温かい気持ちにもなれる。
江戸を舞台に一風変わった百物語を描く「三島屋変調百物語」シリーズは、宮部みゆき氏がライフワークとして2006年より書き続けており、NHK BSプレミアムでドラマ化もされました。
2025年6月にはシリーズ第9弾『青瓜不動 三島屋変調百物語九之続』の文庫版が刊行され、百物語はいよいよ折り返し地点を迎えようとしています。
「どこから読んでいいか分からない」、「途中から読んでいいの?」という方はご安心ください! シリーズに関わった歴代担当編集者、書籍に花を添えてくださった画家・イラストレーターさんがそれぞれ「おすすめの1話」を厳選しました!
ぜひ、シリーズの入口としてお役立てください。
▼【第2回】はこちら
https://kadobun.jp/feature/readings/entry-128200.html
【第3回】宮部みゆき「三島屋変調百物語」おすすめの1話
「おくらさま」(『三鬼 三島屋変調百物語四之続』)
選者:北村さゆりさん
単行本『三鬼 三島屋変調百物語四之続』装画担当
原稿を読んでおもい浮かぶ絵。その時のワクワク感を今も覚えています。384点は水彩画ですが、時には私の想いを叶えるために、版画や貼り絵など表現方法を変えました。絵が内容を説明しすぎると、受け手の想像の妨げになることは承知の上で、スレスレの挑戦をしたのが、「おくらさま」終盤のおちかの顔です。憧れの青野との別れが迫る複雑な乙女心を描きたかったのです。
単行本(日本経済新聞出版社刊)の装画は、作中の籠被りから思い切ってイメージを膨らませ、「宙を漕ぐ第三の鬼」を日本画材で描きました。
「三鬼」(『三鬼 三島屋変調百物語四之続』)
選者:日本経済新聞出版・Kさん
『日本経済新聞』朝刊に連載いただいた4話から1話選ぶとなると、表題作「三鬼」です。挿絵で伴走された北村さゆりさんが装画を担当され、渾身の鬼の絵も印象的でした。物語の面白さは言うまでもありませんが、コロナ禍を経た今、国内外の情勢が不穏さを増す今、「人は罪をおかすものだから」というクライマックスの言葉が読む者を我に返らせます。そして極悪人も含め登場人物に向けられる宮部さんの公平なまなざしが、深い感動を呼び起こします。
▼文庫版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321809000173/
▼単行本版 作品詳細(日本経済新聞出版オフィシャルサイト)
https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/2016/9784532171414/
「あやかし草紙」(『あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続』)
選者:KADOKAWA・A
私は昨年チーム宮部さんに加わったばかりの新参者です。そんな私が一読者としておすすめしたいのは「あやかし草子」。貸本屋「瓢箪古堂」の若旦・那勘一が語るのは、読む者の寿命を教える不思議な冊子の話。その話の奥に勘一が何かを隠していると悟ったおちかがとったある行動が、大胆でかっこよくて、えっ!と度肝を抜かれます。勘一の達観した雰囲気はそういうことだったのね……。すべてお見通しのお勝も良い。悲しみをのりこえたおちかの人生が動き始める、記念すべき1話です。
▼文庫版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321909000206/
▼単行本版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321712000436/
「三島屋変調百物語」シリーズ 特設ページ
https://kadobun.jp/special/miyabe-miyuki/mishimaya/