背筋が凍る怪談話なのに、笑って泣けて、そして温かい気持ちにもなれる。
江戸を舞台に一風変わった百物語を描く「三島屋変調百物語」シリーズは、宮部みゆき氏がライフワークとして2006年より書き続けており、NHK BSプレミアムでドラマ化もされました。
2025年6月にはシリーズ第9弾『青瓜不動 三島屋変調百物語九之続』の文庫版が刊行され、百物語はいよいよ折り返し地点を迎えようとしています。
「どこから読んでいいか分からない」、「途中から読んでいいの?」という方はご安心ください! シリーズに関わった歴代担当編集者、書籍に花を添えてくださった画家・イラストレーターさんがそれぞれ「おすすめの1話」を厳選しました!
ぜひ、シリーズの入口としてお役立てください。
▼【第3回】はこちら
https://kadobun.jp/feature/readings/entry-128259.html
【第4回】宮部みゆき「三島屋変調百物語」おすすめの1話
「猫の刻参り」(『猫の刻参り 三島屋変調百物語拾之続』)
選者:こよりさん
単行本『猫の刻参り 三島屋変調百物語拾之続』装画担当
猫好きなので、思い出の一話は「猫の刻参り」です。「週刊新潮」での連載中は猫だらけの夢をみるほど猫のことばかり考えておりました。動物文学や児童書でみられるような、愛猫との絆の物語には、めっぽう弱いのです。シマっことおぶんちゃんのやりとりが愛らしく懐かしいです。装画は連載時の挿絵の延長線上にあるような彩色を心がけました。連載時はずっと白黒で表現されていた三毛猫チャミの毛色を愛でていただければ幸いです。
選者:新潮社・Tさん
「女性に辛い作品になって、ごめんなさい!」
「猫の刻参り」の主人公おぶんは子を喪い、夫と義両親に虐げられ、絶望の果てに化生のものになってしまいます。ご執筆中、娘を持つ私をご心配くださるほど、強いお覚悟を持って書かれた本作には、おぶんと猫たちへの宮部さんの果てしない優しさが溢れています。
当時、認知症の父と家族に疲弊して人の心を失いかけていた私は、宮部さんからある気付きをいただきました。だから今、私は生きています。
辛さの先に救いのある、光の物語です。
▼単行本版 作品詳細(新潮社オフィシャルサイト)
https://www.shinchosha.co.jp/book/375016/
「一途の念」(『魂手形 三島屋変調百物語七之続』)
選者:KADOKAWA・I
はじめて「三島屋」シリーズで担当させていただいたのは文庫版の『泣き童子』で、『魂手形』ではじめて自分で宮部さんからお原稿をいただく経験をしたので、私にとって特別な一冊です。そして作品自体も8巻目にあたる『よって件のごとし』と同時進行でご連載いただいていたため、7巻と8巻は対のような作りになっています。私のお気に入りの一編は「一途の念」。富次郎に聞き手が変わったことで黒白の間で語られるエピソードもバリエーションがさらに豊かになったのですが、本作はそれを特に感じられる作品です。おちかが聞き手の時代は彼女の過去の影響もあってか濃い恋愛話が語られることが少なかったのですが、本作は情念たっぷりの恋愛模様がゾゾゾッとしていて読み応え抜群です。
▼文庫版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322211000496/
▼単行本版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322007000501/
「三島屋変調百物語」シリーズ 特設ページ
https://kadobun.jp/special/miyabe-miyuki/mishimaya/