KADOKAWA Group
menu
menu

特集

【第5回】宮部みゆき「三島屋変調百物語」シリーズおすすめの1話――歴代担当編集者&装画担当画家が悩みに悩んで厳選!

背筋が凍る怪談話なのに、笑って泣けて、そして温かい気持ちにもなれる。
江戸を舞台に一風変わった百物語を描く「三島屋変調百物語」シリーズは、宮部みゆき氏がライフワークとして2006年より書き続けており、NHK BSプレミアムでドラマ化もされました。
2025年6月にはシリーズ第9弾『青瓜不動 三島屋変調百物語九之続』の文庫版が刊行され、百物語はいよいよ折り返し地点を迎えようとしています。

「どこから読んでいいか分からない」、「途中から読んでいいの?」という方はご安心ください! シリーズに関わった歴代担当編集者、書籍に花を添えてくださった画家・イラストレーターさんがそれぞれ「おすすめの1話」を厳選しました!
ぜひ、シリーズの入口としてお役立てください。

▼【第4回】はこちら
https://kadobun.jp/feature/readings/entry-128337.html

【第5回】宮部みゆき「三島屋変調百物語」おすすめの1話

「泣き童子」(『泣き童子わらし 三島屋変調百物語参之続』)


2016年6月/角川文庫刊


2013年6月/文藝春秋刊


選者:木村桂子さん
単行本『泣き童子 三島屋変調百物語参之続』装画担当


時代物の挿画は前から興味があって、「オール讀物」で宮部さんの「百物語」連載は緊張しながらも楽しく描いた。単行本『泣き童子』ではメインに泣く子供を描くという方針をいただいて、さて、困った。本屋で米国製の泣く子の写真集を見つけそれを資料としたが、やはり日本の子供とは違う。が、なんとか描き上げて出来上がった本書を見たら、京極夏彦さんの迫力ある題字と絶妙な落款の位置で、堂々とした表紙になっていた。

▼文庫版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321511000302/
▼単行本版 作品詳細(文藝春秋オフィシャルサイト)
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163822402

「金目の猫」(『あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続』)


2020年6月/角川文庫刊


2018年4月/KADOKAWA刊


選者:KADOKAWA・Y


「三島屋」シリーズの初代担当として、スタート当時を振り返ってみようと思います。
私が宮部みゆきさんの担当になったのは2007年のこと。その春に、宮部さんは『名もなき毒』で吉川英治文学賞を受賞され、翌年には直木賞の選考委員に名を連ねることになります。名実ともに、人気作家の頂へと駆け上がっていかれた時期でしたから、それまで文学賞のパーティーでお見かけしても、各社のスター編集者たちに囲まれて、近づくのも畏れ多く感じたものです(もちろん宮部さんご本人はいたって気さくな方です)。そんな宮部さんの担当に、ミステリーとは縁遠い編集畑を歩いてきた私が抜擢されたのには理由がありました。のちに「三島屋シリーズ」となる記念すべき第1作、『おそろし』の刊行を翌年に控え、私のそれまでの担当畑が歴史・時代物メインだったからに他なりません。当時、作品はまだ雑誌「家の光」に連載中で、終了を楽しみに待ちながら、満を持して書籍化作業に入ることとなりました。単行本の装画は、宮部さんの推挙で、雑誌連載の挿絵と同じ小泉英里砂さんに引き続きお願いしました。その4年後、幸いにもこの文庫化も担当しますが、再び小泉さんに文庫のカバー絵を描き下ろしていただきます。版元が変わる単行本は連載時の画家さん、文庫カバー(そして、有難いことにずっと角川文庫!)は小泉さんに、というレールが、ここに敷かれたのでした。
さて、お題は「おすすめの1話」でした。5冊目の『あやかし草紙』最終話「金目の猫」をご紹介します。本の担当編集者イコール、必ずしもその原稿を取った編集者ではなく、その意味で、『おそろし』は単行本も文庫も私が担当しましたが、純粋に、直接お原稿を頂戴したのはこの「金目の猫」だけ。当時、編集長を務めていた「小説野性時代」に、雑誌担当として頂戴した作品です(2018年2月号)。スタートから続いた聞き手のおちかがその役を降り、従兄の富次郎へとバトンタッチすることになる、第1期完結の節目の作品でもあります。愛猫家としての宮部さんの一面も窺えて、思い出深いです。
江戸怪異を描いた作品は他にもありますが、『おそろし』は、宮部さんのアイディアでサブタイトルに「百物語事始」と明確に謳い、定まりどおり99話まで書く、と宣言されて世に送り出されました。
むしろ周囲の編集者たちが、「まさか99話?」と疑ってかかっていた節もあるのですが、20年近くを経た今も続く、宮部さんの「ライフワーク」に育ちました。今ようやく折り返しの50話に届こうとしています。スタート時、先輩編集者たちは「自分らが居なくなっても彼が見届けますから」と言い、定年を迎えて去っていきましたが、当時30代半ばだった私も50を超え、残念ながら、それも叶うか、怪しくなってきました。
「宮部チーム」も若い編集者たちへと世代交代しましたが、チーム一丸となって出来る限り伴走して、物語の締めくくりに立ち会うことが、今の願いです。

▼文庫版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321909000206/
▼単行本版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321712000436/

「魂手形」(『魂手形 三島屋変調百物語七之続』)


2023年6月/角川文庫刊


2021年3月/KADOKAWA刊


選者:三好愛さん
単行本『魂手形 三島屋変調百物語七之続』装画担当


不思議で愛らしい神様がたくさん出てくる『賽子と虻』は大好きだし、江戸時代のゾンビをひたすら描いた『よって件のごとし』も忘れがたい……。一話と言われて悩みに悩んだのですが、その世界観におおいに魅せられたのはやはり、『魂手形』です。特に「魂の里」というあの世に行かれなかった魂が集う異界の描写がすばらしく、宮部さんの文章に想像力をぐいぐい押し広げてもらいながら、さまざまな姿形の魂を描くのがとても楽しかったです。

▼文庫版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322211000496/
▼単行本版 作品詳細(KADOKAWAオフィシャルサイト)
https://www.kadokawa.co.jp/product/322007000501/

「三島屋変調百物語」シリーズ 特設ページ


https://kadobun.jp/special/miyabe-miyuki/mishimaya/


紹介した書籍

関連書籍

MAGAZINES

小説 野性時代

最新号
2025年9月号

9月25日 発売

ダ・ヴィンチ

最新号
2025年10月号

9月5日 発売

怪と幽

最新号
Vol.020

8月28日 発売

ランキング

書籍週間ランキング

1

悪魔情報

著者 城戸 協力 オモコロ編集部

2

天国での暮らしはどうですか

著者 中山有香里

3

濱地健三郎の奇かる事件簿

著者 有栖川有栖

4

見仏記 三十三年後の約束

著者 いとうせいこう 著者 みうらじゅん

5

完全版 ユージニア

著者 恩田陸

6

デモクラシーのいろは

著者 森絵都

2025年9月29日 - 2025年10月5日 紀伊國屋書店調べ

もっとみる

アクセスランキング

TOP