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連載

カドブン meets 本が好き! vol.13

幕末の混乱期の恋愛物語。『荒城に白百合ありて』【本が好き×カドブン】

カドブン meets 本が好き!

書評でつながる読書コミュニティサイト「本が好き!」(https://www.honzuki.jp/)に寄せられた、対象のKADOKAWA作品のレビューの中から、毎月のベストレビューを発表します!
>>【第12回】ちょっとした勇気が、すてきな出会いにつながります。なかなか、いいじゃない!一人旅。『ひとり旅日和』


書影

須賀しのぶ『荒城に白百合ありて』(KADOKAWA)


第13回のベストレビューは、ねこやなぎさんの『荒城に白百合ありて』(著者・須賀しのぶ)に決まりました。ねこやなぎさん、ありがとうございました。

幕末の混乱期の恋愛物語。

レビュアー:ねこやなぎさん

昌平坂学問所で学ぶ青年、薩摩藩士の岡元伊織と
会津の少女、青垣鏡子との恋愛物語です。

昌平坂学問所は、幕府唯一の官学教育機関の中核で、
日本最高の知を会得しようと、若者たちが
勉強に励んでいました。

伊織はその中でも秀才でしたが、未来への展望を
抱くことができずにいました。

安政2年10月2日の夜。
安政の大地震と呼ばれる直下型の地震が発生。

燃え盛る江戸の町で、伊織はゆらゆらと近づいてくる
少女を見かけました。

美しい少女の足は真っ赤で、何度も転んでいるのかも
しれませんが、苦痛は感じられません。

舞うように歩いている少女は、
あやかしではないかと疑うほどの美しさを備えていました。
その少女が、鏡子でした。

惹かれあう2人でしたが、
敵対する薩摩と会津。
激動の時代に、そう簡単に会うことはできず……。

鏡子は、会津の娘とあって、なかなか
素直に気持ちを表すことはできないようで、
読んでいてもどかしくなりました。

他の学友のように、目的を見出せない伊織と、
自分の生きる意味を見出すことができていなかった鏡子。
共に生きにくさを感じていた2人が
惹かれあったのは、ごく自然のことだったのかもしれません。

惹かれあっても、現代のように簡単に恋愛関係に
なることもできず……。

究極の「障害のある恋愛」だと思います。
常に死と隣り合わせにいるような時代、
極限の状態にいるからこそ、深まる愛。

鏡子が最後に自分の気持ちに素直になったときに、
また悲劇が……。

幕末の悲しい恋愛物語で、
ラストはとても切ない。

この世界で、ともに生きられない。
だから、あなたと、ここで死にたい。

2人が最後に選んだ道は、寂しさを感じさせる
ものでしたが、そういう結末だからこそ、
心に残ると思いました。

ところで。
須賀さんのお名前だけは、新刊案内などで知っていたのですが、本を読んだことはありませんでした。

何となく、少女向けの小説を書いている人というイメージを持っていたので、
少女ではない私が読むのは……と思っていたのです。

実際に読んでみて、時代小説の中でも、読みやすい文体で、読者対象は少女に限定していないと感じました。
今まで須賀さんの本を手に取らずにいたことが悔やまれます。

そして、読み終えた今は、好きな作家さんが
増えたことに感謝したい気持ちです。

▼書籍の詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321903000385/

ねこやなぎさんのページ【本が好き!】
https://www.honzuki.jp/user/homepage/no11499/index.html


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