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＞＞【第15回】よくある話かと思いきや、現代日本の流行りであるユーチューバーなど、現実にも起こり得そうな感じでした。『コープス・ハント』

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第16回のベストレビューは、Kさんの『丸の内魔法少女ミラクーナ』（著者・村田沙耶香）に決まりました。Kさん、ありがとうございました。

悪意があるんじゃないかと思うほど挑発的な４作品の短編集。 収録４篇の内、笑って済ませられるのはひとつ目の「丸の内魔法少女ミラクリーナ」だけ。 他の作品の後味の悪さはきっと作者の意図通り。

レビュアー：Kさん

■丸の内魔法少女ミラクリーナ

３６才ＯＬ茅ヶ崎リナは「魔法少女ミラクリーナに変身して悪の組織の企みを阻止する」という妄想で、日々のストレスを前向きに解消している。
いい年して何をやってんだということは脇に置いておいて、魔法少女だろうと何だろうと無害な妄想に問題は無い。

ところが、友人レイコのモラハラな彼氏・正志をレイコから引きはがすために行なった頓珍漢な正志への要求、「魔法少女活動への参加」が仇になってしまいます。
正志は自分勝手な正義を振りかざす迷惑千万な「マジカルレイミー」となってしまうのでした。

所詮は魔法少女「ごっこ」と分かっていても、魔法少女への憧れと愛情を子供の時から持ち続けるリナとレイコ。
正志の有り様に「こんなのは本物の魔法少女じゃないって思うの」というレイコの発言が全てを物語っています。

モラハラ男に足りないのは他者への思いやりか、乙女心か。

■秘密の花園

小学３年生の時の初恋の男の子、早川君。

大学生になった千佳は飲み会で終電を逃した早川君を「家に泊まって行けば」と誘い込み、まんまと監禁します。
同棲中の恋人と喧嘩中の早川君は好都合とばかりにおとなしく千佳に従うのですが…

千佳は今も早川君を恋し続けていた。もっともその早川君は小学３年生以来膨らみに膨らんだ千佳の幻想の男の子。
千佳は、女たらしで女性を見下すくだらない男である現実の早川君を自分に思い知らせて、初恋と決別する為に監禁したのでした。

早川君、相当くだらない男のようですが、いくらなんでもこんな仕打ちを受けるいわれはありません。
千佳の幻想を裏切ったからと勝手に復讐されたに等しい。

幻想に縛られた女、千佳。
早川君の言う通り「こえー」。

■無性教室

徹底的に性別を隠すことが義務付けられた高校に通う優子ことユート。
性差が現れるような表現は一切禁じられ、体形を隠す為にトランスシャツと呼ばれるぴっちりとしたタンクトップで胸をつぶす。

ユートには気になる人がいた。
名前はセナ。
セナは中性的で男か女か分からない。
ユートは自分のことをヘテロセクシャルだと思っているが、性別が分からなくてもセナとセックスがしたいという衝動に駆られ、セナに気持ちを打ち明ける。

人間が無性になった時、セックスの欲望はあるのか？

この作品はかなり実験的。
全くの中性あるいは無性という状態が、性を持っている私には想像し難い。
肌を合わせることに安らぎはあるかもしれませんが、それはセックスとは別物と言う気がします。或いはそれがセックスの進化系？

■変容

４０才になる川中真琴は驚いた。自分が知らないうちに若者達からは「怒り」の感情が抜け落ちている。一方で「なもむ」という真琴には理解できない感情を持っている。

ファッションの流行と同じように人格にも流行があり、それを誰かがどこかで密かに決める組織があるらしい。
そんなことが有り得るのか、いやできるのか．．．

この作品世界のようにくっきりとは表出しませんが、磯野波平さんみたいに「ばっかもーん」なんて叫ぶ親父さんは今時いませんし、恋愛やセックスに興味の無い若者、物欲に欠ける若者も増えているようなので、時代によって気質が変化しているのは確か。

言葉なんて顕著に変わっていくので、昔人間の私は「エモい」はおろか「萌え」も全然ピンときません。

そんなこと有り得ないでしょうという自分の常識が、いやそういえばそんなこともあるかもと揺さぶられる作品。

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▼書籍の詳細はこちら（KADOKAWAオフィシャルページ）
https://www.kadokawa.co.jp/product/321903000373/
▼Kさんのページ【本が好き!】
https://www.honzuki.jp/user/homepage/no9511/index.html

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