【第162回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉
【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』

柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。
【第162回】柚月裕子『誓いの証言』
しかし、勝也はそんな小さなイベントではなく、もっと大々的に蕃永石を打ち出さなければ周知には至らない、と組合の会議の場で意見した。自分は県の関係者だけでなく、事業を通じて全国に顔が利く。国内だけではない。海外のホテル事業者との関連もあり、それらの関係者を海外からも呼べるという。
企画展の担当は大橋がなった。勝也の任命だった。理事のなかで一番若く、体力がある。これからの蕃永石のためにも、若い者に活躍してもらいたい、とのことだった。
原じいの件で、心の奥底では勝也を嫌っていた。しかし、逆らうことができるはずもなく、担当を引き受けた。
本人の人間性を受け入れることはできなかったが、勝也が――ひいては児玉興業グループが持っている人脈は、大橋が考えていた以上だった。本来、会社の上層部の人間と会うためには、まずは窓口を訪れるところからはじめなければならない。会いたい目的を伝えて、返答を待つのだが、必ずしも会えるわけではない。むしろ、角が立たない理由をつけて断られるほうが多い。
だが、勝也の名前を出すと近日中に、場合によっては当日、案件の決定権を持っている者に会えた。それは、一介の職人ができることではない。悔しいが、勝也のその力の大きさは認めざるを得なかった。
結果、地元のテレビ局や新聞といったマスメディア、児玉興業グループの観光事業の系列ホテルの協力、イベント企画会社のアドバイスなどの力もあり、イベントは盛況のまま最終日の今日を迎えていた。
加藤の隣に立ち、奥山が大橋に
「先ほどご案内した、スウェーデン大使館のリアム・ジョンソン氏が、来年、ストックホルムで行われるワールドストーンフェアに、蕃永石の作品の展示を検討しているとおっしゃっていました。詳細がわかったら、改めて連絡をくださるそうです」
(つづく)
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