KADOKAWA Group
menu
menu

連載

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』 vol.65

【第225回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』

柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。

【第225回】柚月裕子『誓いの証言』

 法廷は、証言台があるスペースと傍聴席が、柵で隔てられている。晶は付添人とともに柵を出て、傍聴席の最前列に座った。そばにいる傍聴人たちが、ちらちらと好奇の眼差しで見るが、晶が気にする様子はない。毅然とした態度で前方を見つめている。
 乙部が公判を続ける。
 岩谷はシャルモンのマスターのニシ――西にしふとしを証人として呼んだ。
 西田は、佐方が店で会ったときと、なにも変わっていなかった。落ち着いた態度も、気難しそうに見える表情も同じだ。
 西田が証言台に立ち宣誓をすると、岩谷は証人尋問をはじめた。
「原告が、あなたの店に勤めたのはいつからですか」
「四か月ほど前です」
 西田は、晶から雇ってほしいと店に来たこと、客からの評判は良く、すぐに店のナンバー1になったことを語った。
「店での勤務態度はどうでしたか」
 岩谷の質問に西田はよどみなく答える。
「真面目でした。私がいままで見てきた女の子のなかでも、五本の指に入るくらいです」
「あなたは、事件当日、店が終わったあとに原告と被告人が一緒にバーへ行くことを知っていましたか」
 西田は首を横に振った。
「私は基本的に、店の外のことは本人たちに任せています。もちろん客と一線は超えるなとか、金の貸し借りはするなとか、そういうことは言いますよ。でも、それを守るか守らないかは、本人次第だ。それに、本人にもプライバシーがある」
 岩谷は後ろで手を組み、もったいぶるようにゆっくりと訊ねる。
「被告人がはじめて原告に店で会ったのは、いつでしたか」
「三か月前です」
「それは確かですか」

(つづく)

連載一覧ページはこちら

連載小説『誓いの証言』は毎日正午に配信予定です(日曜・祝日除く)。更新をお楽しみに!
https://kadobun.jp/serialstory/chikainoshogen/

第1回~第160回は、「カドブン」note出張所でお楽しみいただけます。

第1回はこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/n/n266e1b49af2a
第1回~第160回の連載一覧ページはこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/m/m1694828d5084

関連書籍

MAGAZINES

小説 野性時代

最新号
2025年7月号

6月25日 発売

ダ・ヴィンチ

最新号
2025年7月号

6月6日 発売

怪と幽

最新号
Vol.019

4月28日 発売

ランキング

アクセスランキング

新着コンテンツ

TOP