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『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VIII 太宰治にグッド・バイ』松岡圭祐
角川文庫の巻末に収録されている「解説」を特別公開!
本選びにお役立てください。
『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VIII 太宰治にグッド・バイ』著者:松岡圭祐
『ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VIII 太宰治にグッド・バイ』文庫巻末解説
解説
〈作家になるのは簡単だが、作家であり続けるのは大変だ〉
本書の主人公
この言葉を額面通りに受け取られても困る。正しくは〈作家になるのは
たとえ出典を知らなくても、杉浦李奈はこの言葉の真意を
杉浦李奈は初登場時では二十三歳。小説投稿サイト〈カクヨム〉にアップした作品が目に止まり、KADOKAWAから三作、他社から一作ライトノベルを発表している。初の一般文芸の単行本『トウモロコシの粒は偶数』を
続いてベストセラーを連発するミステリー作家の新作が物議を醸すのが『~Ⅱ』である。未解決の幼女失踪事件をモデルにしたその作品に書かれたとおり、幼女の遺体が発見される。その直後、くだんの作家は車ごと岸壁から海に飛び込み死亡してしまう。
『~Ⅲ クローズド・サークル』では、サブタイトルにあるように、李奈たち九人の作家を含む十二人が離島のリゾート施設で、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』を
李奈も被害に遭ったパクリ作品を量産する新人作家に関わりながら、「シンデレラ」物語の原典を探索するのが『~Ⅳ シンデレラはどこに』だ。
『~Ⅴ 信頼できない語り手』では、シリーズ中最も派手で恐ろしい事件が起きる。日本小説家協会の懇親会が開かれていたホテルの宴会場で発火装置による火災が発生し、作家、評論家、編集者などあわせて二百十八名が死亡する大惨事が
『~Ⅶ レッド・ヘリング』がそれまでの六作と違うのは、李奈に対して直接悪意が向けられるところだろう。李奈の著作に対するアマゾンの評価がのきなみ星一つになるだけでなく、李奈の原稿を偽った官能小説が版元に送付されたり、ホスト遊びにかまける李奈のフェイク映像が実家に送られるなど、偽計業務妨害や
このように駆け出しの若手作家である杉浦李奈が、心ならずも文学や文壇に絡んだ事件の調査に関わっていくというのが、シリーズを通してのテーマとなっている。盗作問題、モデル小説が及ぼす危険性などを通して、
第二がKADOKAWA、新潮社、小学館、
「もっと宣伝してくれりゃいいのに。KADOKAWAはケチだよね。わたしたちが少しばかり稼いでも、どうせ
第三が李奈の成長物語であることだ。李奈は常に「作家であり続ける」ことに強い不安を抱きながら創作に向き合っている。数冊の著作があるとはいえ重版もかからず、次の作品のプロットを練ってもなかなか担当編集者から色よい返事がもらえない。他社からのオファーがあるわけでもなく、もちろん連載などは夢のまた夢。
作家として徐々にステップアップしていった李奈はついにⅦで、二作目の一般文芸書が本屋大賞にノミネートされ重版も決定し、その上昇気流に乗って鉄筋のマンションに引っ越すことになる。
そんな環境と立場の変化、自分自身に直接降りかかった火の粉をはらった李奈の活躍を描いたⅦまでの物語は、ドラマでいえばシーズン1に当たるのではないだろうか。
そして筆者がシーズン2の始まりと勝手に位置づけた本書では、ついに李奈は
本書は一作目以来となる太宰治をめぐる話題がテーマとなる。太宰が
一方、同じ本屋大賞にノミネートされ、その授賞式で出会った純文学作家の
太宰治の五通目の遺書という、フィクションとわかっていても心を揺さぶられるテーマに興が
作家として、文芸界のトラブル解決人として、ステップアップしていく杉浦李奈の活躍から、今後も目を離せそうにない。
作品紹介・あらすじ
ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論 VIII 太宰治にグッド・バイ
著者 松岡 圭祐
定価: 880円(本体800円+税)
発売日:2023年02月24日
コミカライズ決定! 人気のビブリオミステリシリーズ!!
太宰治の遺書とみられる文書が、75年ぶりに発見された。太宰本人の筆である可能性が高いことから筆跡鑑定が進められていたが、真贋判定の直前に仕事部屋で起きたボヤにより鑑定人が不審な死を遂げる。李奈が真相究明に乗り出すが、同時期に本屋大賞にノミネートされた同業者の柊が行方不明になったことで、胸中は穏やかではない。太宰の遺書と気鋭の作家の失踪に関連は? そして遺書は本物か? 手に汗握るビブリオエンタメ!
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322211000504/
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