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試し読み

「王の子を産むか、さもなくば死か」。「トッカン」「上流階級」シリーズ著者・高殿円の新たなる代表作!『忘らるる物語』試し読み#02

「王の子を産むか、さもなくば死か」次期皇帝を選ぶ道具にされた少女は、触れただけで男を殺せる伝説の民と出会った。
連載中から反響の大きかった、高殿円さんの『忘らるる物語』。単行本発売を記念して、第1章を特別公開します!



『忘らるる物語』試し読み2

 女兵士は、何の感慨もないような顔で胸元を整え、肩やひざを手で払った。そのたびに青や赤や黄色の粉が散って、環璃は色粉をかけ合う遠い昔の故郷の祭りを思い出した。
 ──いいかい、ぜんぶ本当のことなんだ。女を暴力で犯そうとした男は、一瞬でパッと灰燼はいになっちまうのさ。まるではじめからいなかったかのようにね。
 一年に一度の、馬のたてがみを切るための神聖な祭り。その準備のために刃物に火をいれ、念入りに研いでいるとき、女だけが集まった幕屋で夜通し年老いた巫女キケが聞かせてくれた異国の話を思い出していた。
 たしかあの女は、こうも言っていたのではないか。にわかには信じられずに笑い合う娘たちに向かって、しんな顔つきで、まるでそのくぼんだ目でたことがあるかのように、──ウソだと思うだろうが本当なんだ。そこの女たちは世界中でだれよりも強い。たとえ帝の親衛隊であっても、そいつらには指一本触れられやしないのさ……
 そう、指一本、あの男だって片手で乳房を摑んだだけだった。背後にいた男はもっと早くから女の体に触れていたけれど、女の肌には直接触れず脇に腕を入れて羽交い締めにしていた。もう一人の男は女の服の合わせに手をつっこんでじかに乳房をまさぐろうとしたのだ。そしてその直後に手が膨らんで指の骨が破裂した。
「来ないでいいと言ったのに」
 女はもはや環璃の顔も見ず、洞穴のほうへ戻ろうとしている。環璃は男たちであった、いまはもうよくわからない肉の縮んだ塊のほうへふたたび目をくれた。不思議なことに、あれほど光を放ち美しかった花ははや枯れて、木の葉のように土の上に散っていた。あれではもうほかの木の枝や葉のくずとも区別がつかないだろう。
「あの、青い花はなんなの」
 環璃は女に言った。
「なんであいつらは、千々になって消えたの」
 女は座って火を熾こし始めた。泥炭燃料を使ったからか、環璃よりずっと早く炎がいた。
「ねえどうして」
「座っていろ。お前はまだ傷ついている」
「傷なんて」
 ない、と言い切ろうとして思いとどまった。女の言うとおりだ。まだ、自分を襲った男の手の感触を覚えている。思い出すたびにざわりと鳥肌がたつ。
「……あなただって、されてた」
「そうするように仕向けた。乾いた山でやたら血を流せば冬ごもりに失敗した獣たちが集まってくる。ああすれば危険なものは来ない」
「どうして来ないの」
「この山では獣より、私のほうが恐ろしいからだ」
 座れ、と言われて火の近くに座った。いつの間にか日が暮れてどうくつの外はまぶたの裏側のように真っ暗だった。
 じっと火を見つめていると、小さな鉄鍋の中でふつふつと湯が沸いた。女はその中に乾燥した肉と山藻、それにいくつか見たこともない乾物と米、塩の塊を入れてぶたを落とした。炊飯のにおいが岩窟に立ちこめる。まだ、生きていることを思い出す。
(生きている。炊飯のにおいをぐなんてどれくらいぶりだろう)
 女は使い込まれた木のわんにふうっと息を吹きかけ、鉄鍋の蓋をとった。中であぶくを生みながら米が膨らんでいる。半分よりずっと多い量を椀に注ぎ入れ、環璃へすすめた。
「ありがとう。でもこれはあなたの食事だわ」
「私は腹がすかない。痛みも感じない。寒さも暑さも、まったく感じないわけではないが人よりずっと鈍い。カミが来てから三日食わずに戦えるようになった」
「カミ」
 思いもかけない返事だった。
(〝ようになった〟ということは、変わったということなのかしら。人ではないものになったということ……?)
 彼女の使う言葉をうまく理解できないまま、環璃は受け取った木の椀を両手で持ち続けた。温かい。お椀がではなく、目の前でよそわれる食事が。たったそれだけのことが、環璃のさび付いて朽ちかけた心をもう一度動かそうとする。
「どうした、禁忌にふれるものでも入っているのか」
「いいえ、わたしが食べられないのは鹿肉だけ。知らずに口にしたぶんはお見逃しくださるおきてだから、いまは食事への感謝だけお祈りする。土地神よ、わたしは環璃、瑪瑙のかんむり鹿の一族の王です。《刈り取られた麦に、くびられた獣に、昨日と明日あしたに》」
 一呼吸おいて汁をすする。こんなにおいしい食事は久し振りだった。
「ワリ、というのが名なのか。聞いたこともない名だ」
「血族の女はそのとき必要なものの名を付けられる習わしなの。ワリは泉。その年はクニの水場がいくつかれたからと聞いたわ。あなたの名前は?」
「私はチユギ」
 それも珍しい響きだった。少なくとも環璃の知っている人間で同名の者はいない。
「どんな字を書くの?」
「ただの呼び名だ。みだりに字にすることは禁じられている」
「もしかして、あなたは死の海のむこうの、人の足ではたどり着けるかどうかわからない険しい山の裂け目から来たの?」
「なぜそう思う」
巫女キケばばが、女だけのつどいのときによく言っていたから。果ての果ての果てトーには不思議な一族が住んでいて、その神のよりしろになった女に触れた男はみな灰になるんだって」
「間違ってはいない。よりしろという言い方が合っているかはわからない」
 チユギは指の先を水で洗い、二本の指を使って器用にかゆを食べた。彼女は腹を満たすために何度も咀嚼そしゃくする。
颱汗藩国タイハンに行く途中だったの」
「そうか」
突都とつとで、藩王ジヨグルねやをともにするために」
「結婚するのか」
「そうじゃない。大弓張星見卜おおゆみはりのほしうらを知らない?」
 興味なさそうにチユギは頭を振った。
「じゃあ、燦帝さんのみかどが十年ごとに交代することは?」
「それは知っている」
「いまの帝の治世六年の二年前、そこの卜部うらべが占いで皇后星を選んだ。北の氏族の中で子を産んだ経験のある十代の女が選定されて、わたしに決まった。わたしは次の帝になる資格をもつ四人の藩王の国を、占いで決められた順に巡る」
「なんのために?」
「王と寝るため」
 チユギがとげでも刺さったような顔をして目を細めた。
「なぜそんなことをする」
「王と寝て二月ほど共に過ごす。その間に子ができれば、その藩王が次の帝になる。わたしは皇后になる」
「子ができなければ?」
「次の国に行き、次の国の王とまた二月寝る」
「そしてまた、子ができなければ次の国へ、か。それでも子ができなければどうなる?」
「簡単なことよ。わたしは殺され、次の皇后星が立つだけ。また占いで哀れな鹿や馬が生きたまま焼かれて、その死に様を見て卜部たちがあれこれ決めるのだと思う。わたしにとってはどうでもいいことだけれど。だから皇后星には子を産んだことがある健康で若い女が選ばれる。そういうことになっている、らしいわ……。昔から。いつからか、なぜなのかはよく知らない」
 残っていた粥をのどに流し込んだ。肉からは知らない獣の味がした。ありとあらゆる獣の塩漬け肉を食べてきた環璃が知らない味といえば、思い当たるのはひとつしかない。鹿の肉だ。
「帝はお前を次の皇后星にするために、お前の一族を根絶やしにしたのか」
「そうよ」
「お前は産んだ子のために生き続けているのか」
「そうよ」
 それ以外に生きる意味を見いだし得なかった。たとえ氏族の掟が自殺を禁じていても、環璃にとってもう滅びた民の掟などなんの意味もない。反対に、あの子のためなら、環璃は禁忌であった鹿の肉でもこの手でほふり食らうだろう。
「わたしが皇后になれば、いまは別の氏族に預けられている我が子は次の帝の子の兄になる。もう一度氏族の名を復活させるにはそれしか方法がないの」
「子がすでに死んでいるとは思わないのか」
 クッと環璃は笑った。そんなこと、もうひゃくまんべんだって考えた。自分はだまされているだけじゃないのか。知らないのはわたしだけで、もうあの子はとっくにこの世にはいず、黄昏たそがれの門の向こうで優しかった夫の腕に抱かれているのではないのかと……
「そのあたりは、帝心中(帝の側近たち)もちゃんとわかっているのよね。わたしはあの子と引き裂かれる前にあの子の手のひらの朱印をもらったの。人の手のひらには皺紋しゅうもんがあるでしょう。一人ひとり違う。あの朱印が三月みつきに一度送られてくるわ。見て、少しずつ大きくなっているの」
 環璃は胸帯の中に挟み込んでいる紙を取り出して、手のひらでしわを伸ばした。赤子の手だが、人の手では偽造できない手のひらの皺の紋様がくっきりと押されてある。
「赤子は人質か」
「人質よ。でもこれだけがわたしを正気でいさせてくれる。つらいときは何度もでて、匂いを嗅いで顔を覆って月の夜を思い出すの。わたしには生きてすることがそれしかない。見て、かわいいでしょう。もう二歳になったころよ。去年の今頃は、一族であの子に……、よちよち歩きをしはじめたばかりのあの子にありったけの金刺繡ししゅうの上着を着せてお祝いした。あの子、重くて歩けなくなってよろよろして。そんな様子をみんなで見て笑ったわ。なんてかわいいのって。月が満ちるのも欠けるのも喜びだった。一日一日大きくなっていくあの子がいずれ馬に乗って、父親と狩りに出るのが見られる日がくると信じていた。なにも……疑わずに……」
 紙には涙のあとがある。朱印がにじんではいけないといつも鼻が痛くなるほど涙をこらえて天を仰ぐ。月をつかもうとした赤子の手首に、青い馬のたてがみを編んだ腕輪を結んだ日を思い出す。いったいなんだったのだろう。環璃たちが神の使いだと一心に大事にしてきた美しい美しい尊い北原のいきものたちとは。
 カミではなかった。一族を守ってくれなかった。
(見過ごさず屠ればよかった。ぜんぶ食ってやるのだった)
「どうしてあの男らは、あんなふうに死んだの?」
 鍋から粥をさらったあとは、さらに水をいれ酒かすと香草を入れて飲み物をつくる。鍋にこびりついた米まで無駄にしないのと同時に、傷んだ食べ物で食あたりしないように酒と薬を体に入れるのだ。白湯さゆをのみ、粥を食べ、最後に香草酒を飲む。旅の食事である。
「私は確たる神……、確神ゲゲルとともに生きている」
「確神……」
「われらの神はわれらの中に住まう。女の体の子が生まれる袋の中に神がおわす」
子宮オワザに?」
「男には子宮がない。だからわれらがカミは男を嫌う」
 チユギはまるで御神酒おみきでも飲むように両手で椀を傾け飲み干した。さらに水少量を入れて指と椀を洗い、その水で炉端の石をらした。そうすることで蒸気が立ち上り最後まで水を無駄にはせずに済む。
 旅慣れている。チユギはいったいどんな暮らしをしているのだろう。そういえば、荷物は人ひとりで運ぶにはずいぶん多い。
「環璃と言ったな。これから私と来るか」
「あなたと?」
「お前はいま無力だ。だが、確神に選ばれれば子を取り戻せるだろう」
 差し出された袋を受け取った。てっきり水かと思っていたが、かなり強いウクだった。もっとも環璃はウワバミなので何食わぬ顔をして飲み干した。じんわりと指先に熱が戻ってくる。
 久し振りに口にする酒はおいしかった。殴られ、口の中がぐちゃぐちゃになったあと血止めのために飲む酒とは比べものにならない。
「あなたと共に行ったらどうなるの」
「我々のクニは火の山の裂け目だ。常に地中から毒のもやが吹き出し、獣も踏み入れば死ぬ。それはヒトも変わりはない。土は鉱毒で汚染され、湧き出る水はわずかで畑をつくることはできない。岩の間に生えた少ない山の恵みを口にして暮らしている。あるいは鉱物を売る。硫黄や大昔の溶岩が固まった美しい石を加工する職人もいる。それらをふもとの村に売って、食べ物を手に入れる」
「そういう生き方もあるのね。山の暮らしね」
 キルカナンの山々に住む人々で、似たような暮らしをしている氏族と交流をもったことがある。彼らも水晶や緑柱石といった鉱物を採掘し、それを売って暮らしていた。もっともあの山は一度も噴火したことがない。火を噴く山があることは知っている。湯治場へ向かう裕福な隊商を見送ることは珍しくなかった。
「ねえチユギ。あなたのような体になるには、どうすればいいの? 確神に選ばれるためには」
「確神のおわす山に行き、そこでしばらく眠るだけだ。お前が花のようだと言ったものが一面に生えている谷がある。そこには無数の彩のカミがいらっしゃる。そこで暮らしているうちに、確神のうちのお一人がお前を選ぶ」
「選ばれたかどうかはどうやってわかるの」
 チユギは腰の紐を緩め、胸の合わせから両腕を抜いて上半身をあらわにした。そうして、背を向けた。骨と骨のくぼみに青い花が浮き出ている。あの男たちを襲って食った肉の花に似ていた。
「背の辺りにしるしが現れる」
「まだらの、入れ墨のようね」
「私の確神はおとなしい。私が怒るまでめったに外には出てこない」
「ひとりひとり、宿すカミは違うの?」
「全く同じ紋様は見たことがない。我々は自分たちのことを果てトーの民と呼ぶが、こうも呼ばれていることは知っている。まだらの民と」
「斑」
 蔑称べっしょうに近い響きであることは環璃にも感じ取れる。恐れる人々がいるのだ。正しくはカミによって途方もない力を得た彼女たちを。
「……わたしが知る限り、あなたたちがいう確神は、きのこの一種のように見えるわ。あれは花のように見えたけれどたしかにかさだった。斑の、鮮やかな、糸を張り巡らせ粉を飛ばして増えていく菌類」
「外から来た者の中には、そのように言うものもいた」
 では、寝ている間に菌類が体内に入り込み、女の子宮に定着するということだろうか。そして子をはぐくむふくろの中でどんどんと増え、糸を伸ばし、体内外に胞子の雨を降らす……
(なるほど。男には子宮がないから、菌類にとっては無用な肉なのだ。だから、あのように攻撃しすべて食らい尽くしてしまう)
「一月に一度、女は血を流すだろう。それがなくなる。あの血を吸って確神は体内にとどまっている。だから、確神に選ばれた女は二度と子ははらめない」
「そうよね。そういうことになるわ」
「だが、代わりに力を得る。たとえば十人の手練てだれの男が襲ってきても、その動きが止まっているように見える。いくら動いても疲れることはない。いつも高揚し、冷静でいられ、一人で居ても多幸感が後押ししてくれる。正直、百人を相手にしても負ける気がしない」
 そう言うチユギの態度から、彼女が無敵の戦士であり、いままでどんな屈強な相手にも負けたことがないのだということがありありとうかがえた。彼女は決してむくつけきたいをしていない。鋭い剣を携えているわけでも、特殊な訓練を受けたわけでもないのだという。
「でも、子を産めなくなるのね。男に触れられないということは、犯されることもないかわりに恋人をつくることもできないのね。抱き合うことも」
「そうだ。だから確神のおわす山には、夫が死んで操を立てるか、子を産み終えた女だけが暮らしている。だいたい皆四十を超えている」
「四十!」
 環璃はまじまじとチユギの顔を見た。
「あなたもそうなの」
「私はもっとだ」
 さらに驚きを重ねることになった。小柄だということを差し引いても、チユギはどう見ても、二十代前半のようにしか見えない。顔にはひとつの皺もなくつやがあり、髪は黒々としてよくいて整えた黒馬の毛並みよりも美しかった。
「見えないわ。あなたも子を産んだことがあるの?」
「いや、私は……」
 珍しく彼女が歯切れ悪くくちもったので、環璃は慌ててべつのことを聞いた。
「男に触れられないということは、産んだ子が男の子だったら、もう、その子にも触れられないってことよね。もちろん恋人にも」
「そうだ。確神は怒りを感じたときに表面に出てくる。だから、平常時触れたぐらいで相手がすぐに灰になったりはしない。だが、万が一ということもある。男が彩の谷に入ればたいてい発作を起こして死ぬからだ。だから、谷に行くときは、みな男の家族とは別れる。二度と会えなくても、二度と触れ合えなくても守るべきものがあるという覚悟をもって決別する」
「二度と会えないの?」
「月経が終われば、確神は去る」
 ああそうか、と環璃は吐息した。歳をとって月のものがなくなるまで生き延びれば、もう一度いとしいものに触れられる日がくる。たとえ、力を失っても。
「それまでも、遠くから見ることはできる。谷と谷を挟んで、親子が会う。麓の集落には男の兵士もいるから、彼らにおまえの赤子をさらってきてもらえばいい。皺紋があるなら間違うことはないだろう。たとえ谷と谷を挟んでしか会えなくても、いまよりはずっといいのではないか」
「あなたも」
 そうしているの、と聞きそうになって、環璃はその質問が彼女を困らせることにすぐに気づいた。
「あなたも、谷の兵士たちも、もうこの手に抱きしめられなくなってもいいから、いのちを守ることを選んだのね。体の中に菌を住まわせて、その力を借りて、どんな兵力にも勝る方法を手に入れたのね。たしかに茸は毒をもつものも多いわ。幻覚を見せる茸もあるし、匂いを嗅いだだけで酔っ払ったようになるものもある。干したものをせんじて飲むだけでこわいくらいに元気になって、眠らずに働けるという話を聞いたことがある。獣の死体に生えるものもある。めただけで屈強な男が一瞬で命を落とすのは、赤ん坊の小指くらいの小さくて白い茸だわ。そういうものが、あなたの腹の中にあるのね……」
 それから二人、小さくなっていく火を見つめながらいろいろな話をした。チユギの話す彩の谷の話はどこかおとぎ話めいていて、この目で男たちがじんかいになるところを見ていなければ、かつて婆に話を聞いていた幕屋の娘たちのように、遠い遠い異国に伝わる伝承のひとつだと笑い飛ばしたかもしれなかった。
 けれど、いまはそれが真実であることを知っている。
 ともに来ないか、とチユギは言った。彼女は環璃が、これからただの子を産む道具として、行く先々で男たちにどのような扱いを受けるのか知って、谷に来ないかと声をかけてくれたのだろう。
(もし、彼女の誘いを受ければ、わたしはどうなるのだろう)

(つづく)

作品紹介



忘らるる物語
著者 高殿円
定価:2,090円(本体1,900円+税)
発売日:2023年3月10日

男が女を犯せぬ国があるという。

辺境の王族として生まれ、幸福な結婚をしたばかりの環璃は、突如たったひとりになった。広大な大陸を統べる燦帝国の次期皇帝を選ぶための籤、”皇后星”に選ばれたからだ。一族はすべて皆殺し、産んだばかりの息子を人質に取られ、環璃は候補の王たちと寝るためだけに国々を巡る。絶望の淵に突き落とされた彼女が出会ったのは、触れた男を塵にする力をもつチユギという名の戦士だった……。
女が産み、男が支配する世界を変える「忘れられた物語」とは? 破格のエンタテインメント巨編!

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322101000889/
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