○世界84ヶ国の国家の原文・訳文を収録
○エピソードや地図に加え、面積・人口・通貨・言語ほか基本データも充実
角川ソフィア文庫『国のうた』(弓狩匡純・著)より一部を抜粋してお届け!
オランダ王国
世界で最も古い国歌
「ウィルヘルム」(Wilhelmus)は現存する国歌としては世界で最も古い(ただし、歌詞については「君が代」が最古)。沈黙公と称されたオレンジ(オラニエ)公ウィレム・ヴァン・ナッソウの側近で詩人でもあったシントアレホンデ領主フィリプ・ヴァン・マーニックスが1568年に作詞。アドリアン・ファレーリウスが、当時人気のあったフランス軍兵士の愛唱歌を元に作曲したといわれている。スペイン国王フェリペ2世に反旗を翻し、80年戦争と呼ばれる独立戦争の先頭に立って闘ったオレンジ公の一人語りといった形式を採っているだけに、15節からなる歌詞の最初の一文字を繫げれば「WILLEM VAN NASSOV」、つまり「ナッソウのウィレム」と読める仕掛けが施されている。フランス革命に影響を受けた愛国党が政権をとった18世紀末、「ウィルヘルム」の演奏は禁じられたが、フランスによる占領時代が終わると、再びこの歌は独立と自由のシンボルとして復活する。現在のベルギーを含むネーデルランデン王国が成立した1815年には、新たな国歌の制定を目指してコンテストが行なわれた。ヘンドゥリク・トーレンスの作詞による「オランダの血を受け継ぎし者よ」(Wiens Neerlands Bloed)が選ばれ、W・ヴィルムスが曲を付けたが、「ウィルヘルム」の人気には遥かに及ばなかった。1932年、勅令により「ウィルヘルム」が正式な国歌として定められた。
国名/オランダ王国 面積/4.1864 万㎢ 人口/ 1,738.4 万人 首都/アムステルダム 民族/ゲルマン系 言語/オランダ語 宗教/カトリック24.4%、プロテスタント15.8% イスラム教4.9%、ヒンズー教0.6%、仏教0.5% 独立年/1815 年 政体/立憲君主制 通貨/ユーロ
ギリシャ共和国
世界最長! 158 節にわたる叙事詩
詩人ディオニシオス・ソロモスの手による歌詞の原詩はなんと158節にまで及ぶというから驚かされる。ただし、ギリシャ大使館のエレナ・トリアンダフィルー等書記官(当時)の話によれば「続けて歌える人もいるが、公式には2節までが演奏される」という。オリンピックの閉会式では発祥の地であるギリシャに敬意を表し、この「自由への讃歌」(The Hymn to Freedom)が必ず演奏されることでも知られている。ソロモスは1821年に勃発したオスマン・トルコからの独立戦争に触発され、弱冠25歳でこの歌詞をしたためた(楽曲は1828年にニコラオス・マンザロスが作曲)。詩に登場する「Eleutheria」(自由)はギリシャでは極めてポピュラーな女性名でもあるため、彼は女性名詞である「自由」を一人称で語ることにより、この壮大な叙事詩を書き上げた。オスマン・トルコの没落後、ジョージ1世が迷うことなくこの歌を国歌としたのも頷けるだろう。それだけにギリシャでは、国歌は小学校の歴史の時間に教わるという。ちなみにこの歌はキプロス共和国国歌と同じ。トルコ系住民が北キプロス・トルコ共和国として1983年に分離独立したため、ギリシャ系の同国が取った対抗措置だが、複数の国が同じ歌詞と楽曲を採用するケースは極めて珍しい。
国名/ギリシャ共和国 面積/13.1957 万㎢ 人口/1,081万人 首都/アテネ 民族/ギリシャ人 言語/現代ギリシャ語 宗教/ギリシャ正教 政体/共和制 通貨/ユーロ
◎幻の「君が代」も掲載! この他の国歌は本書でお楽しみください。
▼弓狩匡純『国のうた』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321906000001/