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連載

今野敏「ヤメろと言われても! Ⅱ」 vol.7

大ベテラン作家の趣味は模型作り! ロシアの客人にもらったプラモデルを作ろうと意気込んではみたが……。今野敏「ヤメろと言われても! Ⅱ」#42

今野敏「ヤメろと言われても! Ⅱ」

前回登場した、ロシアからの客人にもらった戦車のプラモデル。だが中々時間がとれず……。

 さあ、ロシア戦車を作るぞ、と意気込んではみたものの、作業台に向かう時間がまったくない。この原稿は二〇二〇年の年明けに書いているのだが、さすがに年末は忙しかった。
 なんとかやる気を見せようと、キットの箱を開いてみた。おお、すごい量のパーツだ。そして、組み立て説明書(モデラーはインストと呼ぶ)。
 なんと、インストがロシア語で書かれている。そりゃそうだ。ロシア製のプラモデルなんだから。
 英語訳も付いているし、どうせプラモデルのインストなんて、イラストしか見ないので、おそらく問題ないだろう。
 プラモデルの箱を開けるたびに、子供の頃のわくわくを思い出す。男の子はなぜプラモデルが好きなのだろう。おそらく、理屈ではない。
 部品を組み上げて、一つの形を完成させる。その喜びは、おそらく男の子のDNAの中に組み込まれているのだろう。
 前にもこのエッセイで書いたかもしれないが、プラモデルは高いので、私の子供の頃は、滅多に買うことはできなかった。その代わりに、家の周りにあった木材などをナイフで削り、何かを作っていた。
 少し大きくなると、模型屋でバルサ材を買い、それを加工するようになる。バルサ材は、少年モデラーたちにとって、最も馴染み深い素材だった。
 思えば、その頃にプラモデルよりもフルスクラッチに親しむ素養が出来上がったのかもしれない。
 模型作りは楽しい。模型屋に行くと、それだけで心が躍ったものだ。そして、私の小さい頃には、町には模型屋が必ずあったし、それはいつまでもそこにあるものと思っていた。
 ところが、このところ模型屋が町から姿を消している。目黒の大鳥おおとり神社交差点にあった模型店も、いつのまにか閉店していた。
 かつてモデラー御用達だった渋谷イエローサブマリンもなくなった。ちなみにイエローサブマリンは模型店というより、ゲームショップになってしまった。
 そう。世の中の少年たちは模型など作らずにゲームをやっているのだろう。きっと彼らはナイフの使い方も知らず、鉛筆すら削れないのではないか。
 模型作りの道具はたいていが刃物だ。だから、怪我もする。それで学んでいくのだ。怪我をしなかった者は、怪我を避ける術を知らない。
 渋谷の東急ハンズから模型コーナーが消えたことはもう書いたと思う。おそらく需要がなくなったのだろう。
 その責任は模型業界にもあると思う。模型雑誌はやたらきれいな作例を取り上げ、ハードルを上げすぎた。あの誌面を見ると、素人が手を出す気が失せてしまう。プラモデルくらい気軽に楽しみたいのだ。


インスト(組み立て説明書)が当然ながらロシア語だ


パーツの量がすごく、かなり細かそうだ


言葉が分からなくても、主にイラストを見るのでおそらく問題ない


英語訳も付いている。作業台に向かえるのはいつだ……?


写真=今野 敏

「カドブンノベル」2020年3月号収録「ヤメろと言われても! Ⅱ」第42回より


「カドブンノベル」2020年3月号

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◎つづきの第43回は「カドブンノベル」2020年4月号に掲載しております。


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