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北上次郎の「勝手に!KADOKAWA」 vol.12

北上次郎の勝手に!KADOKAWA 第12回・神永曉『悩ましい国語辞典』 「スコップ」と「シャベル」はどう違うか?

北上次郎の「勝手に!KADOKAWA」

数々の面白本を世に紹介してきた文芸評論家の北上次郎さんが、KADOKAWAの作品を毎月「勝手に!」ご紹介くださいます。
ご自身が面白い本しか紹介しない北上さんが、どんな本を紹介するのか? 新しい読書のおともに、ぜひご活用ください。

神永 曉『悩ましい国語辞典』


書影

神永 曉『悩ましい国語辞典』
定価: 1,188円(本体1,080円+税)
※画像タップでAmazonページに移動します。


 新刊書店で角川ソフィア文庫の棚を見ていたら『さらに悩ましい国語辞典』という本があった。「さらに」ということは、その前にも本があるわけだ。で、棚を探したら、ありました。それが、神永曉『悩ましい国語辞典』。

 それにしても書名が秀逸だ。「悩ましい」と言われると、なぜ「悩ましいのか」と考えてしまう。著者は辞典編集の専門家なのですね。つまり、日本語の辞書での扱いをどうするか、いつも頭を悩ませているというわけだ。

 たとえば「スコップ」と「シャベル」の差。『日本国語大辞典第二版』(小学館)の「スコップ」の項目には、「小型のシャベル」とだけあるんだそうだ。おかしいなと思って、著者はそれを調べていく。というのは、スコップのほうがシャベルより大きい、と著者が考えていたからだ。そうして『大辞泉』(小学館)にたどりつく。

「東日本では大型のものをスコップ、小型のものをシャベルといい、逆に西日本では大型のものをシャベル、小型のものをスコップということが多い」

 つまり『日本国語大辞典第二版』は、西日本型だったわけである。

 こういうふうに、東と西で意味や読み方が異なる例は他にもあって、それが「谷」。「深谷」「渋谷」「四谷」は、「や」と読みますね。ところがこれは、江戸近辺の方言だという。大きくいえば、東日本は「や」と読むところが多く、西日本は「たに」と読む地名や名字が多い、というのである。ホントですか。東日本の「なかやくん」が、西日本では「なかたにくん」になるとは知らなかった。

「一段落」は「いちだんらく」で、「ひとだんらく」と読むのは間違いだ、という誤用の指摘が多いのはもちろんだが、みんなが誤用するようになると辞書に載るようになるというのも面白い。たとえば「姑息」。本来の意味は「しばらく休む」だが、「ひきょうな」という誤った使い方が70%になっているので、そちらの意味も載せている国語辞典も出始めているという。おお、言葉はホントに面白い!

神永曉『悩ましい国語辞典』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321709000037/


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