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北上次郎の「勝手に!KADOKAWA」 vol.13

北上次郎の勝手に!KADOKAWA 第13回・神永曉『悩ましい国語辞典』その2 「頭蓋骨」をどう読むか

北上次郎の「勝手に!KADOKAWA」

数々の面白本を世に紹介してきた文芸評論家の北上次郎さんが、KADOKAWAの作品を毎月「勝手に!」ご紹介くださいます。
ご自身が面白い本しか紹介しない北上さんが、どんな本を紹介するのか? 新しい読書のおともに、ぜひご活用ください。

神永 曉『悩ましい国語辞典』


書影

神永 曉『悩ましい国語辞典』
定価: 1,188円(本体1,080円+税)
※画像タップでAmazonページに移動します。


 前回書き忘れたことがある。「頭蓋骨」をどう読むのか、という問題だ。何を言っているんだ、「ずがいこつ」に決まっているじゃないか、と思われるかもしれないが、違うんである。

『悩ましい国語辞典』によると、すべての国語辞典が「ズガイコツ」を本項目にしているわけではないという。「頭」を「トウ」と読んで、「トウガイコツ」を本項目にしているものも少なくない、と『悩ましい国語辞典』の著者神永曉は書いている。

 ズガイコツ派――『日本国語大辞典』『新選国語辞典』(小学館)、『三省堂国語辞典』『新明解国語辞典』(三省堂)、『岩波国語辞典』(岩波書店)
 トウガイコツ派――『大辞泉』(小学館)、『大辞林』(三省堂)、『広辞苑』(岩波書店)、『明鏡国語辞典』(大修館)

 なんとこのようにわかれている、というから驚く。そうだったんですか。

 どうしてこのようにわかれているのか、ということについて、神永曉が推測を書いていて、それも興味深いので引いておく。解剖用語としては「トウガイコツ」であるというのだ。ただ、知人の医師から聞いた話と断っていて、確実な話かどうかはわからないとただし書きをつけている。

 トウガイコツ派の各辞典も「ずがいこつ」を空見出しとして設けているので、引くことに関しては問題がないようだが、学術的な読みと国語的な読みが異なっていて、それが辞典にも影響を与えている、というのは面白い。

 ところで、佐藤究『テスカトリポカ』(KADOKAWA)を読んでいたら、この「頭蓋骨」が出てきて、「とうがいこつ」とルビが振られていた。
「頭蓋骨はどうするんだ?」という会話に、「とうがいこつ」とルビが振られていたのである。発言の主は、闇医者。なるほど、この小説がとてもリアルに立ち上がってきた。

神永曉『悩ましい国語辞典』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321709000037/


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