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連載

カドブン meets 本が好き! vol.48

魅惑のジャパニーズ・ゴーストストーリー── 『怪談』(訳 円城 塔/著 ラフカディオ・ハーン)レビュー【本が好き!×カドブン】

カドブン meets 本が好き!

『怪談』レビュー【本が好き!×カドブン】

書評でつながる読書コミュニティサイト「本が好き!」(https://www.honzuki.jp/)に寄せられた、対象のKADOKAWA作品のレビューの中から、毎月のベストレビューを発表します!
今回のベストレビューは、しばたろうさんの『怪談』に決まりました。ありがとうございました。



魅惑のジャパニーズ・ゴーストストーリー

レビュアー:しばたろうさん

小泉八雲の『怪談』は何度も翻訳されているが、読んだのはこれが初めてだった。もともと知っていた有名な話は数編だろうか。「怪談」と「虫の研究」が収録されている。

翻訳では、引っかかりのない、読者に負担をかけない文章にすることが重要だという話を聞く。その点、本書は引っかかりだらけだ。古風で流れるような訳文のところどころに置かれた異物に足をとられ、立ち止まってしまう。
そのときの「なんじゃこりゃ」という戸惑いは、原書 "KWAIDAN" を読んだ海外の読者の感覚そのものかもしれない。異文化にたいする違和感。このユニークな新訳を読めば、それを追体験できる。

人名や地名は英語の音をそのままカタカナ表記してあり、読みづらいし意味がわかりにくい。海外の読者も、意味不明のアルファベットの羅列を読まされて大変だったことだろう。

日本ならではの名詞は英語表現に置き換えられ、似て非なる印象をあたえる。
たとえば、頻出する「スライドするスクリーン」という言葉からどんな物を想像するだろう。おそらく襖のことだが、得体のしれないエキゾチックな雰囲気をかもしだしている。

著者による注釈の内容は、いまの日本人が読んで知らないこともあるし、読んでいっそうわからなくなるところもある(訳書による巻末の「解題」の方がわかりやすい解説になっている)。

でも、このわかったようなわからないような余白が怪異譚にぴったり。
いまの日本とはちがう、エキゾチック・ジャパンを舞台にした幽霊物語はとても魅力的だった。

▼しばたろうさんのページ【本が好き!】
https://www.honzuki.jp/user/homepage/no14049/index.html

書誌情報



怪談
翻訳 円城 塔著者 ラフカディオ・ハーン
定価: 2,200円(本体2,000円+税)
発売日:2022年09月28日

八雲が世界に紹介した驚異の書「KWAIDAN」の真の姿が、明らかに!
1904年に出版された小泉八雲ことラフカディオ・ハーンの代表作『怪談』は、日本紹介本の一貫として英米人向けに英語で書かれた作品だった。そこで強調されたのは幽遠なる日本ではなく、謎なお化けがおもしろおかしく跳梁跋扈するJAPANだった?! 八雲が西洋に見せようとした日本の姿を、円城塔が独自のスタイルで訳出、往時の英米人の驚愕が蘇る!
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322202000842/
amazonページはこちら


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