
日常の隣にある裏社会。本書で描かれる裏社会には、表では「存在しない」人々が蠢く。裏社会を仕切る“意思”から与えられた作業を実行することが彼らの生きる糧。作業内容は、殺人である。『KILLTASK』【本が好き×カドブン】
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>>第19回「例え失恋だろうが、何気に手にしたダイエット本だろうが、「ダイエットの神」が降りてきたなら、ありがたく自分を変えるチャンスと信じ即実践しよう。」
第20回のベストレビューは、休蔵さんの『KILLTASK』(著者・行成薫)に決まりました。休蔵さん、ありがとうございました。
日常の隣にある裏社会。本書で描かれる裏社会には、表では「存在しない」人々が蠢く。裏社会を仕切る“意思”から与えられた作業を実行することが彼らの生きる糧。作業内容は、殺人である。
レビュアー:休蔵さん
世の中、表があれば裏がある。
日常を送る社会にも裏社会がある。
表と裏の間には一定の繋がりがあり、裏社会に生きる人々も実際は表社会の住民としての“登録”がある。
しかし、本書が描く裏社会に住む人々は、表社会と完全に分断されている。
唯一の繋がりは本書のタイトルにある「KILLTASK」、つまり裏の人間が表の人間を葬り去ること。
殺人だ。
本書の主人公“僕”は殺し屋見習いとして登場する。
先生となったのは“悪魔”と“天使”。
2人と行動を共にする“僕”は、その仕事も目の当たりにする。
“意思”からの“KILLTASK”の実行だ。
実行したらきちんと作業報告をする。
オプションがあれば、その報告も。
そして、仕事終わりにはサラリーマンと同じようにアルコールを胃に流し込む。
表世界と同じ日常生活のようだが、彼らは表社会では行方知れずになっているか死んだことになっている。存在しないことになっている男たちが、人知れず人を消す。
“人知れず”は正確ではない。
実際に変死体は見つかり、警察の捜査がはじまる。
しかし、他殺とはならず、“トリイ”つまり迷宮入りとして片づけられる。
“悪魔”と“天使”はやり方が大きく異なる。
“悪魔”は勢いのままにターゲットの命を奪う。
顔を蹴りつけ、相手の戦意を消失させ、一気にカタをつける。
最後は様々な種類の毒薬を注入する。
毒薬はオプションにより使い分ける。
一方の“天使”は指輪に仕込まれたナイフを使う。
相手を慈しむように頬を手で包む、頸動脈に刃を突き立て切断。
わざわざ血にまみれるやり方を採用しているのには、“天使”なりの理由が…。
この2人ともう1人、バックアップメンバーとも言える杏と一緒に行動をするようになった“僕”。
もちろん、表社会では行方知れずの身。
それも家族を惨殺した殺人者として。
ひょんなことから“天使”と出会い、生か死かの希望を問われた“僕”は、「死にたくない」と答えた。
この一言が“僕”の人生を大きく変え、家族殺害の真相に迫ることへと繋がっていく。
そして、黒幕として登場したのは…。
毎年相当数の行方不明者が出る。
彼らはどこにいるのか、それとももういないのか。
そして、多くの自殺者がいる現実。
そんな現実社会の闇をうまく取り込んで仕上げられた1冊。
「なぜ人を殺してはいけないのか」という哲学的な命題にも回答を示した意欲作だ。
エンターテイメントとして楽しむことはもちろん、いろいろと考えさせられた。
人間の人間らしさは、どこにあるのだろうか。
人間は、生物界のなかで清いものと言えるのだろうか。
むしろ、人間だからこその汚さ、醜さがあるはず。
本書はそんなところにも目をつけていて、興味深かった。
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