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連載

河﨑秋子の羊飼い日記 vol.22

【連載第22回】河﨑秋子の羊飼い日記「ラグビー王者国のマッチョメン」

河﨑秋子の羊飼い日記

北海道の東、海辺の町で羊を飼いながら小説を書く河﨑秋子さん。そのワイルドでラブリーな日々をご自身で撮られた写真と共にお届けします!
>>第21回「異世界に転生しても羊飼いだったらどうなるか想像してみた件」


場合によっては逃げまどう100キロオーバーの羊に追いつきねじ伏せる必要もあるわけで

 ラグビーW杯、日本代表の戦いが終わってしまった。強豪国・南アフリカ相手に点差をつけられてしまったとはいえ、よくベスト8まで残ってくれた。そして代表チームメンバーの、「この結果には満足していない」という悔しそうな表情が今後の更なるチーム力向上を予感させてくれる。
 とはいえW杯はまだ終わっていない。NZで一時生活していた私にとっては、NZ代表・王者オールブラックスが3連覇を果たすのか、今後の試合からも目が離せない。
 そう、NZはラグビー大国。北海道よりも人口が少ない国が王者として君臨し続けるぐらいだから、どんな小さな村でもラグビーのゴールポストが立っている。抜きんでてメジャーなスポーツなのだ。
 ところで、NZに『ヤングファーマーズ・コンペティション』という催しがある。各地の農業祭などで、地元の青年農業者がトラクターの操作、フェンシング(サーベルで戦うやつではなく、家畜用の柵を作りその精巧さ、頑丈さ、タイムを競う)、各種クイズなどの複数の競技を行い、総合点で若手農家としての1番を決める競技だ(ちなみに参加者は男性だけではない。少数ではあるが、女性も参加可能で、パワフルでとても魅力的だ)。
 各地の試合は地方大会を兼ねているらしく、年に一度、テレビのゴールデンタイムに全国大会が放送される。各地から選りすぐられた、技術体力申し分なく、頭も切れるマッチョ達。立ち居振る舞いも、洗練こそされていないが真面目で礼儀正しい。
 豪華な会場での開会式ではタキシードに身を包み、ズラッと並んだその姿に女性陣は黄色い声を上げる(女性の参加者は艶やかなイブニングドレスだ)。所謂『イケメン』の頂点である彼らは皆、見事なラグビー体型である。(付け加えるならば、NZでは日本ほど農家の嫁不足問題を憂う声を聞かない)
 そう、趣味と実益。ラガーマンとして優秀=国の最大の産業である第一次産業に従事するにあたって望ましい体力・体格・知識の持ち主、という図式が見てとれるのだ。そりゃラグビーも強くなるし、北海道より人口少なくても農産品の輸出で競争力ありまくりだよな……と、オールブラックスの力強いハカを見ながらしみじみ思ったのだった。

河﨑秋子(かわさき・あきこ)
羊飼い。1979年北海道別海町生まれ。北海学園大学経済学部卒。大学卒業後、ニュージーランドにて緬羊めんよう育技術を1年間学んだ後、自宅で酪農従業員をしつつ羊を飼育・出荷。
颶風ぐふうの王』で三浦綾子文学賞、2015年度JRA賞馬事文化賞、『肉弾』では第21回大藪春彦賞を受賞。


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最新号 2020年1月号

12月10日 配信

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