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連載

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』 vol.95

【第255回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』

柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。

【第255回】柚月裕子『誓いの証言』

 くらよし子と名乗る人物から連絡があったのは、その日の夕方だった。よし子は文子の夫の妹で、嫁いで姓が変わっていた。
 よし子は佐方が文子に会いたがっている理由を説明すると、よし子はこれから文子が入院している病院に行くからそこで待っていてほしい、と言って電話を切った。
「よし子さんは三十分と経たずに病院へ来て下さり、そこで会うことができました。いきなり訪ねてきた私たちに親切に対応して下さり、とてもありがたく思いました」
 佐方たちと顔を合わせると、よし子は挨拶もそこそこに、看護師の許可を得て文子の病室へ三人を案内した。
 文子の部屋は四人部屋だった。すべてのベッドはカーテンが閉じられていて、患者の姿は見えない。
 文子のベッドは、出入り口から見て手前の右側だった。よし子がそっとカーテンを開けると、喉や腕などをたくさんのチューブで酸素や点滴、脈拍や心拍数を表示するモニターと繋がれている女性がいた。それが文子だった。
 よし子は反応しない義理の姉に優しく話しかけたあと、三人を連れて病室を出た。
 文子が入院している病棟の休憩室で、よし子は佐方たちに文子がどうしてこのような状態になってしまったのか説明した。
 事故が起きたのは、いまから三か月ほど前。看護師だった文子は勤務を終えたあと、いつものように自転車で帰路についた。
「よし子さんの話によると、その日は夕方から雨が降ってきたそうです。ちょうど、安藤さんが病院を出て家に戻ろうとしていた時間だ。まるでスコールのような雨で、車のワイパーを最速にしても、雨を払いのけられないほど激しかったそうです」

(つづく)

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連載小説『誓いの証言』は毎日正午に配信予定です(日曜・祝日除く)。更新をお楽しみに!
https://kadobun.jp/serialstory/chikainoshogen/

第1回~第160回は、「カドブン」note出張所でお楽しみいただけます。

第1回はこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/n/n266e1b49af2a
第1回~第160回の連載一覧ページはこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/m/m1694828d5084

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