【第245回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉
【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』
 
  
柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。
【第245回】柚月裕子『誓いの証言』
 佐方は項垂れている大橋の前に立ち、見つめながら訊く。
「児玉勝也氏の手足となって動き、組合員たちに圧力をかけた弁護士は、この場にいますか?」
 急に岩谷が、椅子から立ち上がった。顔から血の気が引いている。この尋問の意味が、やっと理解できたらしい。慌てた様子で乙部に向かって叫ぶ。
「異議あり! この尋問は本件と関係ありません!」
 乙部がなにか答えようとする。しかし、遅かった。佐方に問われた大橋は俯いていた顔をあげて、被告人席を見た。小さいが、確信が籠った声で言う。
「います。被告人の久保利典です」
 法廷内に驚きの声があがる。乙部が静かにするよう促しても、騒ぎは収まらない。誰もが混乱していた。
 岩谷はものすごい形相で、佐方を
 乙部が一段と大きな声をあげた。
「静かに! 言うことを聞かない人は、審判妨害罪で退廷を命じます!」
 そこまで言って、やっと法廷内に静寂が戻った。しかし、明らかに空気が熱を帯びている。誰もが予期していなかった裁判の展開に、気持ちが高ぶっているのだ。
 乙部が大橋に訊く。
「原告の祖父を組合から外す算段に、被告人が関わっていたことに間違いはありませんか」
 大橋が答える。
「間違いありません」
 久保は床に目を落としたまま、じっとしている。
(つづく)
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