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連載

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』 vol.58

【第218回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』

柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。

【第218回】柚月裕子『誓いの証言』

 部屋の前方にあるドアが開いて、原告のユウカ――安藤晶が入ってきた。
 法廷が静まりかえる。
 晶は飾り気のない紺色のワンピースを着ていた。長い髪を後ろでひとつに結んでいる。化粧はしていない。それがもとから整っている顔立ちを、いっそう際立たせていた。
 晶は証言台に立ち、下に向けていた顔をあげて乙部を見た。
 乙部による晶の人定質問が終わり、晶が宣誓書を読み上げる。晶が椅子に座ると、乙部は岩谷に尋問をはじめるよう告げた。
 岩谷は椅子から立ち上がり、晶のそばに歩み寄る。
「これから尋問をはじめますが、気分が悪くなったらいつでも言ってください。無理をする必要はありません」
 晶が小さい声で答える。
「わかりました」
 岩谷は、事件当日のことを晶に訊ねた。
「その日、あなたは勤めていた銀座の店――シャルモンを閉店時間の十二時十五分に、被告人とともに出ましたか」
 晶が答える。
「はい、一緒に出ました」
「店の外で客と会うことは、よくあったのですか」
 晶が小さく、首を左右に振る。
「ありません。お店がはじまる前も、閉店してからもありませんでした」
「では、店の外で会った客は、被告人がはじめてだったということですか」
 今度は頷く。
「そうです」
 岩谷は、そのあとの行動を訊ねる。
「店を出たあと、あなたは被告人とふたりで、店の近くにあるバー『ローネ』に行きましたか」
 晶は素直に答える。
「はい、行きました」

(つづく)

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連載小説『誓いの証言』は毎日正午に配信予定です(日曜・祝日除く)。更新をお楽しみに!
https://kadobun.jp/serialstory/chikainoshogen/

第1回~第160回は、「カドブン」note出張所でお楽しみいただけます。

第1回はこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/n/n266e1b49af2a
第1回~第160回の連載一覧ページはこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/m/m1694828d5084

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