柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中！（日曜・祝日除く）
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【第216回】柚月裕子『誓いの証言』

　確認を求められた久保は、小さい声で答える。
「間違いありません」
　続いて乙部は、岩谷のほうへ顔を向けた。
「それでは、被告人に対する不同意性交等事件の審理をします。検察官は起訴状を朗読してください」
　岩谷が椅子から立ち上がり、公訴事実を読み上げる。事件が発生した時間、場所、事件内容――久保が晶に薬を飲ませて同意なく性交を行った旨が語られる。
「罪名および罰条、刑法第百七十七条、不同意性交等罪、以上について審理願います」
　岩谷が着座する。
　乙部は久保に黙秘権と法廷での陳述はすべて証拠として扱われる旨を伝える。そしてたったいま岩谷が述べた起訴事実について訊ねた。
「検察官が話したことに間違いありませんか。それとも、違うところがありますか」
　久保が答える。
「違います。私は起訴状のようなことはしていません」

（つづく）

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