【第187回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉
【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』

柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。
【第187回】柚月裕子『誓いの証言』
第十一章
大盛のしょうゆうどんをきれいに食べ終えた小坂は、満足そうに箸を置いた。
「いやあ、美味しかった。やっぱり名物は、ご当地で食べるに限りますね。朝ラーならぬ、朝うどん。最高ですね」
テーブルの向かいでまだうどんを食べていた佐方は、驚いて顔をあげた。
「もう食べたのか」
小坂は返事をする代わりに、佐方のどんぶりを覗き込みながら聞き返してきた。
「先生、普通盛りですよね。まだ食べ終えてないんですか。私は、ラーメンでもうどんでも、麺類はできるだけ速く食べるようにしているんです。のびちゃったら、美味しさが半減しちゃいますから。ほら、先生も急いで食べないと、せっかくのうどんがのびちゃいますよ」
「俺はそんなにのんびり食べてない。小坂が食べるのが速すぎるんだ」
小坂は腕を組み、思案顔で言う。
「そうかなあ。まあ、昨日はほぼ徹夜で朝までレポート書いてたから、朝ご飯を食べる時間がなかったんですよね。普段から食べるのは速いんですけど、今日はお腹空いてたから、特に速かったかもしれませんね」
佐方は残りのうどんを食べながら言う。
「俺は、無理についてこなくていいって言ったからな。小坂が、私も絶対行くって言うから連れてきたんだ」
小坂は、
「わかってますよ。だって、こっちに知り合いとか親戚とかいないから、こんなことでもないと来ないじゃないですか。一度、香川に来てみたかったんですよね。空は広いし、瀬戸内の海はきれいだし、うどんは美味しいし、やっぱり来てよかった」
小坂はうっとりとした様子で、窓から外を眺めた。
(つづく)
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