朗読つきカドブンレビュー
カドブンを訪れてくれている皆様こんにちは。
今年も最後のレビューとなりました。
今回はレトロな装丁が素敵な三津田信三著『犯罪乱歩幻想』をご紹介いたします!
このタイトルと表紙で読む前から心躍りますね(笑)。
さてさて、さっそくページを開いてみると、
私のことを、さぞかし妙な奴だと不審がられていませんか。
と、一人称の語りが。
「おおおお……」
なんともいえない「乱歩感」に思わず声が漏れます(笑)。
そんな謎解きとジワジワと忍び寄る恐怖が心地よい「屋根裏の同居者」から始まる本著には七つの短編が収録されています。
七作品のうちの五作品は、乱歩作品のオマージュとなっていて、タイトルまで模すという徹底っぷり(上記の「屋根裏の同居者」ですが乱歩作品には「屋根裏の散歩者」というものがあるようです)。
三作目の「G坂の殺人事件」(乱歩の方は「D坂の殺人事件」となります)はなんとも懐かしくどこか牧歌的な「本格」で、繰り広げられる推理に思わず微笑んでしまいます。
このように江戸川乱歩を彷彿させるミステリーや「本格」五作品に、ひたひたと冷たい水が染みてくるような「骸骨寺坊主の話」「影が来る」が加わったのが本著『犯罪乱歩幻想』。
様々なスタイルの作品は読んでいて飽きることがなく、あっという間に読み終わっちゃいました。
誰しも子供の頃に推理物を読んで「犯人は誰だ?」と頭を悩ませたり、怖い話を読んで眠れなくなったり、なんて経験があると思いますが、今回「骸骨寺坊主の話」を一人、深夜四時に読んでいた時のこと。
話があまりに怖くて、だんだん自分の背後が気になり始めましてね(笑)。
振り返ってなにもいないことを確認したいんですけど、振り返れないんですよ。
なんかいたら怖いですから。
子供の頃ってこんな風に江戸川乱歩とかを読んでたかもなあ……
そんな子供時代に戻れるなんとも楽しい(怖いですけどね)一冊でした!