谷根千ミステリ散歩 中途半端な逆さま問題

なぜ学校1のイケメンが“あんな酷いこと”を…? ゆるすぎる名探偵×犯人に騙されまくる助手の本格ミステリ『谷根千ミステリ散歩』特別ためし読み!#2
「小説 野性時代」で人気を博した、東川篤哉さんの本格ミステリ『谷根千ミステリ散歩』。
10月17日の書籍発売に先駆けて、「もう一度読みたい!」「ためし読みしてみたい」という声にお応えして、集中掲載を実施します!
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(応募要項は記事末尾をご覧ください)
>>第1回へ
◆ ◆ ◆
3
翌日は土曜日で大学の講義もお休み。そこで私は昨日の自分の言葉どおり、『快運堂』なる店を探してみることにした。ピンクのパーカーにチェックのミニスカート。髪をポニーテールに纏めた私は、とりあえず愛用のスマートフォンを手に、五月晴れの町へと飛び出す。
だが道すがら、いくら検索してみても、それらしい情報はヒットしない。――おやおや、これはなかなか手強いぞ。本当にあるのかしら、『快運堂』って?
大いなる不安と多少のワクワク感を覚えながら、とりあえず日暮里の駅の方角へと歩を進める。路上で目に付く商店の看板を片っ端から見て回りながら、「カイウンドウ快運堂カイウンドウ……」と馬鹿みたいに口の中で繰り返す私。やがて、その呟きが「ウンドウカイ運動会ウンドウカイ……」とナチュラルに変化したころ、いきなり野太い男性の声が、背後から私の名を呼んだ。
「やあ、つみれちゃん、何してるんだい?」
「えッ!?」と思わず声をあげて振り向くと、目の前には紺色の制服に身を包んだ長身の巡査の姿。わ、ヤバイ――と思って条件反射的に身構えたものの、よくよく見れば見知った顔だし、そもそも私には警官相手にヤバイと感じる心当たりなど微塵もない。パーカーの胸を撫で下ろしつつ、私は彼の名を呼んだ。「なんだー、斉藤さんかー」
斉藤巡査は谷中交番に勤務する若い警察官。お酒が好きで『吾郎』にもときどき飲みに訪れるので、お互い面識があるのだ。そんな彼はこちらに歩み寄ると、
「どうしたの、つみれちゃん? 大学で春の運動会でもやるのかい?」
と実にトンチンカンなことを聞いてくる。私は首を傾げながら、
「はあ、運動会って何のこと!? 違いますよ。私、開運グッズのお店を探してるんです。『快運堂』っていう店なんですけど、斉藤さん、知りません?」
ちなみにカイウンドウのカイは立心偏のほうね――とキッチリ言い添えて、私は上目遣いで反応を待つ。すると斉藤巡査はポンと手を打ち、得意げに右手の親指を立てた。
「ああ、それなら知ってる。一部で評判になってる、あの店だろ」
「え、知ってるんですか! わーい、教えて教えて!」
ピョンピョン飛び跳ねる私の頭上で、結んだ髪もブンブンと勢い良く揺れる。
「うーん、教えてあげてもいいけれど――その前に」といって若い巡査は急にプロの目つきに変わると、正面から私を見据えた。「ちょっと質問させてもらっていいかな?」
「えー、急に何です? 職務質問とか?」
「いや、職務質問じゃないよ。つみれちゃんがどこの何者かは、よく判ってるからね。そうじゃなくて、実は一昨日の木曜の昼間、この近所にある石材店に泥棒が入ったんだよ」
「へえ、石材店に泥棒ねえ」
何を隠そう実は谷中は墓の町。日暮里駅を出て、すぐのところに広がる『谷中霊園』には、徳川慶喜から森繁久彌に至るまで歴史上の偉人たちが数多く眠っている。それ以外にも行く先々に古い寺院があり、それに隣接するように墓地がある。墓地がある以上、墓石の需要があることは必然。というわけで谷中には石材店が実に多いのだ。
とはいえ石材店に侵入する泥棒の話は、あまり聞いたことがない。私は興味を持って尋ねた。
「で、何が盗まれたんです? やっぱり墓石?」
「そんなもの奪っていく泥棒なんていないよ」
「そっか。重いもんね」
「軽くても盗まないと思うけどね」
「じゃあ何なんですか。金庫の中の売上金がゴッソリ――とか?」
「確かに普通の窃盗事件なら、そんな感じだよね。でも今回の事件は、そうじゃない。どうやら、この泥棒、何も盗らずに逃げたらしい。石材店の人が調べてみても、これといって無くなったものがないらしいんだ。金庫の売上金も無事だったし、店主のたんす預金も手付かずのまま。従業員の財布や貴重品が奪われた形跡もない」
「だったら、そもそも泥棒が入ったかどうか、それ自体が疑わしいのでは?」
「いや、泥棒が侵入したことは事実らしい。怪しい人物が裏口から出ていくところを、偶然、二階の窓から顔を出した奥さんが目撃しているんだ。彼女の証言によると、犯人は男性。だが顔は判らない。奥さんは逃げていく犯人の姿を上から見たので、角度的に顔は確認できなかったんだな。奥さんは咄嗟に『ドロボーッ』と叫んで、近隣住民の協力を求めたが、これは案外と逆効果でね。誰だって、そんな危険な奴、相手にしたくないだろ」
「むしろ『火事だーッ』って叫べば、話は違っていたでしょうね」
そうすれば、近所の人は窓から顔を出す。そして逃げる泥棒の姿を、誰かが目に留める。そんな可能性も大いにあったことだろう。「――で、逃げられた後になって、被害を調べてみたら、べつに何も盗まれていなかった?」
「そういうこと。もともと裏口は施錠されておらず、扉は半開きの状態だったらしい。そこで犯人はシメシメと思って、侵入したんだろうな。ところがカネ目のものを物色する間もなく、近くに人の気配を感じるか何かしたんだろう。慌てた犯人は何も盗らずに逃げ出した。要するに、ありふれた窃盗未遂事件だな」
「ふうん、それで斉藤さんは、私に何を聞きたいんです?」
「一昨日の昼、だいたい午後三時前後のことなんだけど、この付近で怪しい男の姿を見なかったかい? 男はグレーのパーカーを羽織って、下は青いズボンを穿いていた。たぶんデニムパンツだろう。背中に黒いリュックを背負っていたらしい」
「ふうん。この季節、そういう恰好した男子は、うちの大学にだって大勢いますからねえ。それに一昨日の午後三時なら、私はもう大学を出て家に帰り着いていたはず。この付近をうろついたりはしてないから、残念だけど、お役に立てそうもありませんね」
「そうか。それじゃあ、仕方ないなあ」
でも、もし何か気付いたことがあったら交番まで報せてよ――と付け加えて斉藤巡査は自分の話を終えた。ならば、今度はこっちの番だ。
「さあ、教えてくださいね。評判の開運グッズの店って、どこ?」
「うーむ、口で説明するのは、なかなか難しい場所なんだけどね」といって斉藤巡査は周囲を見回すと、「じゃあ、つみれちゃん、この信号機を見てごらん」
「はぁ!?」ポカンと口を開けて、私は頭上を見やる。「この信号機が何?」
「ほら、この信号機、ちょうどLの字を逆さまにしたような恰好だよね。で、仮に、この長い縦棒が谷中銀座商店街だとするだろ。すると、ちょうど赤信号のあたりが有名なドーナッツの店で……そうすると、ええっと……開運グッズの店は、だいたい……」
「もう、地図を見せてッ、ちゃんとした地図を!」――L字形のカウンターとか信号機じゃなくて、ちゃんとした谷中の地図で、誰か私に説明して!
4
マトモな地図を求める私は、斉藤巡査に連れられて彼の勤務する谷中交番を訪れた。そこで地元の地図を前にしながら、商店街と目的地の正しい位置関係を把握。「ふむふむ、商店街を真っ直ぐいって突き当たりをL字形に曲がったとすると、『快運堂』はこのあたりかぁ」
意外とそれは、なめ郎兄さんや斉藤巡査が教えてくれたとおりの位置にあるらしい。
「ふむふむ、だいたい判りました」だいたいしか判っていないのに、全部判った気になるのが、私の悪いところだ。「ありがとう、斉藤さん。――墓石泥棒、早く捕まえてくださいね!」
「うん、まあ、墓石泥棒ではないんだけどね」と苦笑いして手を振る斉藤巡査。
ペコリと頭を下げて交番を後にした私は、再び「カイウンドウ快運堂カイウンドウ……」と口の中で繰り返しながら、脇目も振らずに目的地を目指す。その呟きがやはり「ウンドウカイ運動会ウンドウカイ……」と変化したころ、私は一軒の古民家風の建物の前を通り過ぎた。
瞬間、視界の片隅に映り込む何か。「――ん!?」と思わず声をあげた私は、その建物を五歩ばかり行き過ぎたところでピタリと足を止めた。
そこは谷中のメインストリートから少し離れたところにある、静かで狭くて、どこか懐かしい感じの路地。立ち並ぶ家々はどれも古ぼけた感じ……いや、レトロな趣がある。そう、昭和の風情があるのだ。失われた時代の空気感があるのだ。モノはいいようなのだ。
とにかく私は行き過ぎた距離を引きかえして、先ほど視界に映った《何か》を確認。それは玄関に掲げられた看板だった。いや、看板と呼ぶにはあまりに小さい、まな板に文字を書いたような代物だ。素人が彫刻刀で雑に彫ったような文字が、そこに三つ並んでいた。
『怪運堂』――と読める。私はムッと眉をしかめた。
「立心偏のカイウンドウって……『快い運』じゃなくて『怪しい運』なのね……」
そういえば昨日、なめ郎兄さんは私に対して『カイウンドウっていっても、そんなに怪しくはないんだ』と、わざわざ《怪しくないアピール》をしていた。あれは、この怪しすぎる店名を念頭に置いての発言だったのだろう。だが実際に目にする『怪運堂』は店名から連想されるとおりの怪しげな店だ。いや、そもそも本当にこれは店舗なのだろうか。正直、私には空き家になった木造二階建ての古民家にしか見えない。窓という窓はすべてピッタリと閉じられている。窓に嵌った磨りガラスに顔を寄せてみても、室内の明かりや人の気配などは、いっさい感じられない。玄関の引き戸はもう何年も開閉されていないのではないか。そんな懸念すら覚えるほど、建物全体が死んだように静まり返っている。
――ははーん、きっとこれは《評判の店にきてみたら、とっくに閉店してた》っていう、毎度よくあるパターンだね!
そう解釈した私は玄関先に『某月某日に閉店しました。長らくのご愛顧ありがとうございました』という例の張り紙を探してみる。だが結局それも見当たらない。
「……てことは、まさか営業中!? はは、まさか、そんなわけないよね……」
思わず半笑いになる私は、意を決して玄関の引き戸に手を掛ける。その引き戸が想像以上に滑らかに動くのを知って、私はこの建物が空き家でないことを実感した。
「わ、開いちゃった……」ていうか、自分で開けたのだが。「ご、ごめんくださ~い」
どんな他人の家でも挨拶しながら入れば不法侵入にはならない。そんな独自理論を信じつつ中に足を踏み入れてみると、果たしてそこは別世界。いや、ひょっとして異世界か?
いきなり私を出迎えたのは、成人男性ほどの背丈がある巨大な招き猫が二匹。いや、二体だ。向かって右側の招き猫は左手を挙げ、左側の招き猫は右手を挙げている。左右対称の巨大招き猫は、かなりの威圧感。お客様を招こうとしているのか、追い払おうとしているのか、サッパリ判らない。少なくとも私はその場で回れ右して、ダッシュで逃げ出したい気分に陥った。だが、くるりと背中を向けた瞬間――
「いらっしゃいませ」
奥のほうから、いきなり男性の声。安定感のある響きを耳にして、私の両足がピタリと止まる。その背中へ向けて、男性の柔らかな声が一方的に話しかけてきた。
「それらの巨大招き猫は、とあるお屋敷の正門の両側に置かれていたものなのですが、持ち主に不幸がありましてね。数奇な運命をたどった挙句、この店に引き取られたのです。ここへきた当初は、やはり玄関先の両側に置いていたのですが、近隣住民から『あまりに目障り!』なんて、いわれましてね。仕方がないので、室内に置くようにしたのです」
「はあ……」
室内に置いても、やっぱり目障りなのでは……?
そんなふうに思った私はもう一度、店内へと向き直り、巨大招き猫の向こう側へと恐る恐る視線を送る。
間接照明に照らされた薄暗いフロアは板張りの床。そこに陳列棚やガラスのショーケースが置かれている。目に付くのは比較的まともなサイズの招き猫たちだ。右手を挙げているもの、左手を挙げているもの。中には両手を挙げている変わり種もある。他にも達磨や七福神の置物、うねくる龍や滝登りする鯉を描いた絵画などの縁起物が並ぶ。赤い馬をかたどったオブジェは、一日千里を駆けるといわれる赤兎馬だろう。
なるほど確かに、ここは開運グッズを扱う専門店らしい。しかも閉店中ではない。それが証拠にフロアの奥、床から一段高くなった畳敷きの小上がりに、店主らしき若い男性の姿があった。 薄い座布団の上で綺麗に正座している姿は、それ自体が置物かと見紛うばかり。ピンと伸びた背中はまるで定規を当てたようだ。
「ご、ごめんください」
ペコリと頭を下げながら、さっきと同じ言葉を繰り返すと、
「はい、いらっしゃいませ」
と向こうも再度、同じ言葉を口にした。
クラシックな店の雰囲気に合わせたのか、男性は若いながらに茶色の作務衣姿。若いといっても私よりは遥かに上だろう。兄と昔馴染みということだから、やはり三十チョイ過ぎあたりか。目許に掛かる長めの髪の毛。尖った鼻と尖った顎。大昔の喜劇俳優を思わせる丸い眼鏡が印象的だ。レンズの奥の切れ長の目は、まるで値踏みをするかのように、油断なく私を見詰めている。
「この店は初めてでいらっしゃいますね」作務衣姿の眼鏡の店主は、正座したまま穏やかな声で聞いてきた。「何かお探しのジャンルなどございますか」
「は、ジャンル!?」
「ええ、例えば招き猫とか達磨とか縁起物の掛け軸、あるいは幸せになれる壺とか悩み解消の壺、さらには金運を呼ぶ壺とか身体の痛みが嘘のように楽になる壺とか……」
「…………」キタ、キタ、壺キタァ――ッ!
心の中で恐怖の悲鳴をあげた私は、詐欺師を糾弾するような目で、丸眼鏡の店主を睨み付けながら、「いいえ、ないです、ありません。べつに悩みとかないですし、身体の痛みとかもありません。そもそも幸せになろうなんて思っていませんから!」
「そういう方は、この店を訪れないと思いますが」店主は怪訝な表情で私を見やると、「ひょっとして、どなたからか評判を聞いて、ここへいらっしゃったのでは?」
そうそう、危うく忘れるところだ。いまさらのように私は大事な名前を口にした。
「ええ、この店のことは兄から聞きました。兄は『吾郎』という居酒屋で板前をやっている、なめ郎という男なのですが」
「え、なめ郎……」瞬間、店主の顔色が一変した。「じゃあ、君のお兄さんは岩篠なめ郎?」
「そうですそうです」私は何度も首を縦に振って、「兄とは、お友達なんですよね?」
「ん、友達!? 僕となめ郎が!? は、はは……」しばしの間、乾いた笑い声を店内に響かせた店主は、いきなり真顔になって「いいや、べつに友達ではないよ。昔から知ってはいるけどね」と、あまりに素っ気ない返事。私はここにいない兄のことを心の底から哀れんだ。
――ただの知り合いだってさ! 友達と思っているのは、お兄ちゃんだけみたいよ!
意外な成り行きに戸惑う私。すると店主は不躾にこちらを指差しながら聞いてきた。
「そういう君は、なめ郎の妹さん? てことは君、名前は? いや、待てよ。他人に名前を聞くときは、まずは自分から名乗るのが礼儀だな」勝手にそう思いなおした店主は、座布団の上で居住まいを崩して──正して、ではなく崩してから──その名を告げた。「僕の名前は竹田津優介(たけだづゆうすけ)。見てのとおり『怪運堂』の店主だ。ちなみに竹田津は大分県の竹田津と同じ漢字。優介の《優》は自分でいうのもおこがましいけど《優しい》の《優》だよ」
それとあと『優秀』の『優』でもある――と店主は本当におこがましく付け加えた。案外、自意識過剰なところがあるらしい。ところで彼は大分県の竹田津という地名を、まるで誰もが知る観光地か何かのごとく説明に用いたが、そんなローカルな地名にピンとくる者が、ここ谷中にいったい何人いるだろうか。だが私は偶然その名を知っていた。大分県の竹田津といえば国東半島にある港町。鰯が獲れるかどうかは知らないが、お陰で私は彼から聞いた名前を頭の中で即座に『竹田津優介』と思い浮かべることができた。
「竹田津さんですね。私の名前は岩篠つみれ。つみれは平仮名です」
「ふうん、なめ郎の妹が、つみれちゃんか。ははッ、そりゃあいい」と竹田津さんの口から遠慮のなさすぎる笑い声。「――んで、そのつみれちゃんが、この店に何の用? 商売繁盛の壺でも買いにきたのかい? ま、そんな壺なんて、この世に存在しないけどね」
といって竹田津さんは、こちらを向いてニヤリ。さっきは、あれほど怪しい壺を売りつけようとしていたくせに――と心の中で呟きながら、私は小さく溜め息だ。
「壺の話は、もういいですから」
「判った。じゃあ、つみれちゃんは、どんな開運グッズがお望みなのかな?」
ついさっきまで、『怪運堂』の店主として「~でいらっしゃいますね」とか「~でございますか」などと丁寧すぎる対応をしていた竹田津さんが、いまはもう『なめ郎の身内ごときに敬語を用いるなど、もったいない』とばかり、客であるはずの私に対して《ちゃん付け》のタメ口でぞんざいに聞いてくる。――いったい、なんで? お兄ちゃん、この人に何かしたの? ひょっとして借りた金、返さなかったとか?
そんな疑惑を覚えつつ、とりあえず私は左右に首を振った。
「開運グッズを必要としているのは、私じゃありません。大学の先輩なんです。その人、つい先日、なんだか妙な目に遭って、憧れの王子様との仲が悪くなりそうで……」
「ほう、妙な目に遭った……というと?」
「先輩、足を踏んだんです。王子様の右足を。でも本当は足なんて踏んでいないらしいんです。踏んだのは近くにあった石ころで……でも王子様はなぜか酷く痛がって、結局のところ先輩は踏んだってことにされてしまって、謝らされて……えーと、判りますか、この話?」
「ううん、サッパリだね」
お手上げ、というように両手を広げた竹田津さんは、「まあ、僕だけ座っているのも不公平だ。ちょっと君も上がりなさい」といって掌で小上がりの畳をポンと叩く。そして座布団から腰を上げながらいった。「とりあえず茶でも淹れるとしよう。それから、いまの話、もう少し詳しく聞かせてもらいたいな。そうすれば相応しい開運グッズも見つかる……かもしれないからね」
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