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試し読み

「了解」「了承」「承知」はどう違う? 試し読み『さらに悩ましい国語辞典』第3回

知っていると一目置かれる、誰かに話したくなる日本語のウンチクを、神永曉さらに悩ましい国語辞典』から厳選してお届け!

りょうかい【了解】 〔名〕

 「了解」「了承」「承知」の違いとは?
 類語の話である。
「了解」「了承」「承知」という三語は、相手の言う意味を理解するという意味で使われるが、それぞれの違いをお考えになったことはあるだろうか。このような意味の似ていることばは、例文を考えて、その中でそのことばが使えるかどうかを考えると違いがわかりやすく、かつて私が担当した『現代国語例解辞典』や『使い方のわかる類語例解辞典』という辞典でも、それを特長のひとつにしたことがある。たとえば、
「その話なら〇〇しています」
という文を考え、それに今回の三語を当てはめてみて、使えるかどうか考察するというわけである。
 この例文の場合は、三語とも使えるということに異論のあるかたはおそらくいらっしゃらないであろう。ただ、それぞれの文章を比べてみると、ニュアンスには違いがありそうである。「了解」は相手の話を理解した上でそれを認める、「了承」はそれを受け入れる、「承知」はただ知っているという違いがあると言えるかもしれない。
 また、三語とも意味がわかるということでは共通しているのだが、単にわかると言うときには、「了解」しか使えないこともありそうである。たとえば、
「ここに書かれている意味が〇〇できない」
といった場合である。
 ただ、最近は三語の違いはかなり曖昧になっていて、相手に何かを受け入れてもらいたいと頼む場合も、ニュアンスの違いはあるものの三語とも使われるケースが多くなっている気がする。たとえば、
「少し遅れますので御〇〇ください」
という場合、従来はもっぱら「了承」「承知」を使って、「了解」を使うことはあまりなかったような気がするのだが、最近では「了解」を使うこともあるのではないだろうか。これは「了解」の意味が広がっているということなのかもしれない。
 前述の二つの辞典では類語のグループを作って、これらの語が例文によって使えるか否かを示した表組みを掲載しているのだが、この「了解」のように意味が広がっている語もあり、改訂の度に見直しが必要だと感じている。
 なお「了解」を使う場合、敬語のマナーの問題もありそうである。相手から何か頼まれたときに、「了解しました」と言うことがあるが、「了解」は軽い感じがするので、ビジネスの場など改まった場面や目上の人に対しては、「承知しました」などと言うべきだとされている。
 このような類語の意味やニュアンスの違いは普通の国語辞典からは読み取れないことが多く、そのためのものとして類語辞典がある。英語圏では類語辞典はシソーラスと呼ばれ、子ども向けのものまでかなり充実しているのだが、日本では認知度がまだ低く、かつ通常の国語辞典ほどは売れないため発行点数もあまり多くはない。類語を使いこなせれば、生き生きとした文章を書くことができると思われるので、とても残念なことである。


写真

神永曉『さらに悩ましい国語辞典』
定価: 1,232円(本体1,120円+税)
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次に、「かい」の部分の漢字、どう書くかで悩みませんか?

ぎょかいるい【魚介類】 〔名〕

 カニやエビを含むかどうかで変わる?
 海産動物を総称して「魚かい類」と言うが、「かい」の部分の漢字をどう書くかで悩むことはないだろうか。「魚介類」か「魚貝類」かで。
「介」と書くと、この漢字にはよろい、甲羅、殻などという意味があるため、貝類だけでなく甲羅をまとった生物であるカニやエビなども指すことになる。一方、「貝」と書くと貝類だけと受け取られるおそれもあり、海産動物の総称とは言えなくなってしまいそうである。
 しかも、漢字「貝」の「かい」という読みは音だと思っているかたも大勢いらっしゃるだろうが、実は訓なのである。音は「ばい」である。従って、「魚介類」は「介」を「かい」と読むのはどちらも音読みなので問題はないのだが、「魚貝類」を「ギョカイ」と読むと重箱読みになってしまう。
 このようなこともあって、国語辞典によっては見出し語の表記欄には「魚介(類)」だけしか示していないものもある。新聞では、たとえば時事通信社の『最新用字用語ブック』でも「ぎょかい(魚貝)→魚介~魚介類」として、「魚介(類)」と書くようにしている。
「魚介」と「魚貝」ではどちらが古くから使われていたかというと、「魚介」の方が古い。「魚介」は江戸時代後期の使用例があるが、「魚貝」は近代になってからの例ばかりである。
 ことば遣いに一家言あった芥川龍之介は、「魚介」も「魚貝」も使っているのだが、明らかに区別して使っている。たとえば、『ちようこうどうざつ』というエッセー集には、
あんずるに『言海』の著者おほつきふみひこ先生は少くとも鳥獣ぎよばいに対するばうの性を具へた老学者である」
とあるのだが、「魚貝」は「ぎょばい」と読ませているのである。
 ただ、「魚貝」を「ぎょばい」と読むと、耳で聞いただけでは何のことかわからないという人も多くいるだろうから、「魚貝(類)」は間違いではないとしても、「魚介(類)」と書いた方が無難なのかもしれない。

神永曉『さらに悩ましい国語辞典』 詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321904000028/


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