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試し読み

W杯開幕直前! 元ラグビー日本代表主将・廣瀬俊朗『ラグビー知的観戦のすすめ』試し読み

 来る2019年9月20日、日本初開催となるラグビーワールドカップが開幕します。

 でも、ラグビーってそもそもルールが複雑。しかも「トライは5点」「前に投げちゃいけない」といった基本ルールがわかったところで、どんな動きが“ナイスプレー”なのか、どこが勝負の別れ目なのか、うまい選手にはどんな特徴があるのか、観戦のポイントがいまいちつかめない……。
 そんな方におすすめしたい書籍があるんです。


 角川新書『ラグビー知的観戦のすすめ』

 元日本代表のキャプテンで、2015年ワールドカップ南アフリカ戦の大金星にも貢献した廣瀬俊朗(ひろせとしあき)さんが、基本のルールブックから一歩進んでゲームを楽しむためのポイントを著した、観戦術本です。
 これを読めばきっと、「今はこっちのチームが有利だな」とか、「選手はいまこんなことを考えているな」とかいったことを考えながら、より深く、より確かにゲームを味わうことができるようになるはず!

 9月7日発売予定の新刊の一部を選り抜きで、一足早く公開します!


廣瀬俊朗(ひろせとしあき)さん

廣瀬俊朗(ひろせとしあき)さん

____________________
(本文 「第二章 ラグビーはこう見ると、よくわかる!」より抜粋)

 この章では、細かいルールの説明ではなく、「なぜパスをするのか」「なぜキックを蹴るのか」「タックルされるとどうなるのか」といった素朴な疑問を中心に、ゲームの「肝」となるポイントを説明しよう。
 多くの人が「難しい」「わかりにくい」と思っているラグビーのルールも、この「肝」がわかれば、実はそれほど難しいものではないことがわかってくる。
 だいいち、僕も含めてラグビー選手のすべてが、ルールを勉強してからプレーを始めたわけではない。みんな、ボールを持って走ったり、タックルしたりするのが面白くてラグビーを始めたのだ。だから、「難しいのでは」と、勝手にハードルを上げる必要はまったくない。
 最初に覚えて欲しいことは、たったふたつだけ。
 第一に、ラグビーはボールを持った人が一番先頭にいるということ。第二に、立っている人しかプレーできないということだ。
 ラグビーは、ボールを持って走り、相手に倒されたら、後ろからきたチームメイトのサポートを受けてボールを継続し、トライを奪うゲームだ。
 つまり、ボールを持つ選手が主人公であって、ルールも、ボールを持った選手が常にチームの先頭にいることを求めている。
 前にいる味方にパスできない(スローフォワード)のはそのためだ。主人公より前に出てプレーすることが禁じられているのだ。ボールを前に落とす(ノックオン)とそこで攻撃を止められるのも、基本的にはこの競技がボールを「持って」走る競技だからだ。
 そして、タックルされて倒れた人、タックルして膝をついた人、グラウンドに寝ている人はプレーすることができない。立っていないからだ。
 そんな非常にシンプルな原理・原則だけ頭に入れて、さらに深くラグビーの面白さを追求してみよう。

なぜパスを放るのか

 ラグビーでは、前にいる選手にパスを放ることはできない。スローフォワードという「軽い反則」があるからだ。
 ラグビーには、スローフォワードのようなミスに起因する「軽い反則」と、ラグビー精神に関係する「重い反則」がある。
「軽い反則」は、スローフォワードのほかに、ノックオンなど、ハンドリングエラーが原因で起こるケースが多い。一方、「重い反則」は、オフサイドや相手のプレーの妨害、危険なプレーなど、ラグビー選手たちが守るべき「約束」を破ったときに起こるものだ。この「約束」については後述するが、まずはラグビーには「軽い反則」と「重い反則」があって、「軽い反則」を代表するのがこのスローフォワードだと理解しておいて欲しい。
 話を戻すと、ボールを前に投げることができないために、ボールを持った選手は前へ走りながら、真横よりも後方にパスせざるを得ない。
 その瞬間に、パスを受けた選手が相手にタックルされたら、ボールの位置は、パスを放る前より後ろに下げられる可能性が高い。
 パスには、こういう〝損〟になるリスクがある。
 なぜ、それでもパスを放るのか。
 それは、パスを捕った選手が、パスを放った選手よりもより良い状況になるだろうと、判断できるからだ。
 逆に言えば、パスを受けた選手がその瞬間に相手に捕まるような状況ではパスをすべきではないし、ボールを持っている選手の前に相手が誰もいなければパスを放る必要もない。
 アタック側がふたり、ディフェンス側がひとり、という2対1の状況を思い浮かべて欲しい。
 このとき、ディフェンス側の選手が、ボールを持っている選手目がけてタックルに入ろうとすれば、その隣にサポートに入ったアタック側の選手の前には誰もいないことになる。
 だから、ボールを持った選手は、十分に相手の注意を自分に引きつけてからパスを放つ。
 そうすれば、パスを受けた選手はそのまま一直線にゴールライン目がけて走ることになる(図A参照)。
 こういう状況が起こるのは、ゲームのなかではむしろレアケースで、通常は、相手のディフェンスが並んでいる状況でパスを放る。
 たとえば、ラックからボールが出たときに、アタック側の選手が4人ラインに並んでボールを待つ。このときにディフェンスが3人であれば、テレビの実況アナウンサーが「余ったあああ!」と叫ぶ状況が生まれる。ひとりひとり順番にパスをまわして行けば、一番外側にいる4人目の前にはディフェンスがいない―つまり、人数的な優位(ラグビーではオーバーラップと言う)が生まれているのだ(図B参照)。



 ところが、このときに早く一番外側(ラグビー用語では「大外」とも言う)の選手にボールを渡そうと、アタック側が味方の選手を「飛ばして」パスを放ると(こういうパスを「飛ばしパス」と言う)、相手に意図を読まれることがある。相手が「飛ばされた」アタック側の選手をマークせず、横にずれて人数が揃ってしまう。
 実際に試合を観戦していると、こういう場面をよく見かけると思う。
 ひとりひとり順番に相手のマークを引きつけて早くパスを送ることは、簡単そうに見えて実は難しい。その間にミスが起こるリスクもある。だから、早く外側へとボールを送りたくなるのだが、ディフェンスの動きを慎重に見極めながら、どういうパスが効果的なのかを考えないと、せっかくのトライチャンスがつぶれてしまうことになる。
 このとき大切なのが「スペース」という考え方だ。
 密集からボールが出た時点で、一番外側の選手の前には大きなスペースが開けている。
「飛ばしパス」は、このスペースにいち早くボールを送るための手段だ。でも、ディフェンス側も、外側にスペースができたことに気づいているから対応されやすい。
 対照的に、ひとりひとり短いパスを放れば、ディフェンス側は外側のスペースを気にしつつも、目の前のアタック側の選手から目を離せない。つまり「足が止まる」ことになる。結果、大外の選手の前にあるスペースが、ずっと保存されていることになる。
 このように、パスには空いているスペースにボールを送るためのパスと、相手の出足を止めながら、かつスペースを大事に保存しながらボールを動かすパスの2種類がある。
 どちらのパスを使うにしても、基本は、パスを受けた選手が、受ける前よりも有利な状況に立てるように考えないと、有効なパスにはならない。
 他にも、たとえば一度ほとんど真横にパスを出して、次の選手が角度をつけて深いパスを放るような、相手の目先を変えるためのパスもある。それから、目の前のディフェンスに、あえて強いランナーをぶつけるために放るパスもある。

 もう少しわかりやすく言えば、アタックを有利に進めるための「種まき」のパスがあり、トライを奪うための「仕留め」のパスがある―と、考えてもらっていいだろう。
 実際、「このパスでトライが生まれる!」と手応えを感じて放るパスは、ゲームのなかでさほど多くない。むしろ、パスを続けることで攻撃を継続し、相手にプレッシャーをかけることを意図している場合の方が多い。種まきをたくさんして、それが実るのは何分の一といったところだ。
 ラグビーは、もちろんパスだけでアタックが構成されているわけではない。
 パスしなくても、誰も前にいなければ走ればいいし、ステップに自信があれば、目の前にディフェンスが立っていても、自慢のステップで抜くことでチャンスを広げられる。ただ、パスを何回も放ることで、パスというオプションを持っているとディフェンス側に思わせることができる。それが、パスではなくランを選択したときに効いてくる。あるいは、南アフリカ戦の立川選手みたいに、後半25分過ぎまで一度もパスを放らず、相手にこの選手はパスをしないと思わせたところで、とっておきのパスを放つような選択肢もある。
 パスは、パスだけでアタックを完結させるために放るのではなく、その他のオプションを有効に使うためにも必要なスキルなのだ。
 もっとも、観客席から見て、ひいきのチームが何回もパスを回しているのに、エリア(地域)がどんどん後退していくような場合は要注意だ。そういうときは、観客席で見ているファンにもなぜパスをしているのか意図があまり伝わらず、「どうしちゃったんだろう?」と心配になるだろう。
 そんな「意図のないパス」を見抜くためにも、パスを受けた選手が有利な状況になっているかどうかは、大切な判断材料だ。
 国代表の選手たちが競い合うワールドカップのような高いレベルの大会では、逆にパスが何回もつながるようなことが少ないかもしれない。パスしたら状況が良くなるか悪くなるかを判断できる選手が揃っているから、少しでもリスクを感じると、パスをせずにディフェンスに当たり、攻撃を継続しようとする。だから、たいてい多くてもパスが2回くらいしかつながらない。
 でも、そういう試合でパスが3回つながるようなことがあれば―それはグッと身を乗り出したくなるような、エキサイティングなチャンスが訪れることを告げているのだ。

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 このように、ラグビーのポイントを、端的に、明解に教えてくれる『ラグビー知的観戦のすすめ』は9月7日に発売予定! ぜひお近くの書店でお求めください。

■また、2019年9月6日(金)からTwitterでのプレゼントキャンペーンが始まります。詳細につきましては、角川新書公式Twitterでお知らせします。フォローをよろしくお願いいたします!



書籍詳細

書名:ラグビー知的観戦のすすめ
著者名:廣瀬俊朗(ひろせ・としあき)
刊行予定日:2019年9月7日
定価:840円(+税)
体裁:新書版・並製・240P
発行:KADOKAWA
レーベル:角川新書
ISBN:9784040823195
https://www.kadokawa.co.jp/product/321904000022/

【目次】


第1章 ラグビーをやっているのは、こんな人たちだ

~各ポジションのキャラクターがわかればラグビー理解がグンと深くなる~

第2章 ラグビーはこう見ると、よくわかる!

なぜパスを放るのか/なぜキックを蹴るのか/なぜ1対1はビッグチャンスにつながるのか/タックルのあと、グラウンドでは何が起こっているのか/ボール争奪の原則 ほか

第3章 「世紀の祭典」ワールドカップと、世界ラグビーの勢力図

ラグビーを生んだフットボール/カップ戦の誕生/アマチュアリズムとプロフェッショナリズム/加速度的に成長したラグビー・ワールドカップ/代表選手資格はなぜ国籍だけではないのか/ジャパンのライバルたち(アイルランド、スコットランド、ロシア、サモア) ほか

第4章 僕がラグビーを大好きな理由

ラグビー最大の魅力は「多様性」/ラグビーが教えてくれた「議論する」文化/代表チームのキャプテンであることの重圧と喜びを越えて/僕にとってのラグビーは「多面体」である/みんなで「アンセム(国歌)」を歌ってワールドカップを盛り上げよう! ほか

付録 アンセムを歌おう! 歌詞カード

著者プロフィール

廣瀬俊朗(ひろせ・としあき)
1981 年、大阪府生まれ。ラグビーワールドカップ2019 公式アンバサダー。スクラムユニゾン発起人。5歳のときにラグビーを始め、北野高校、慶應義塾大学を経て、2004 年に東芝入社。1999 年度、U19日本代表、高校日本代表、2007年より日本代表。2012 年から2013 年まで日本代表のキャプテンを務める。2015年W杯では日本代表史上初の同大会3勝に貢献。通算キャップ28。ポジションはスタンドオフ、ウィング。


紹介した書籍

カドブンノベル

最新号 2019年10月号

9月9日 配信

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