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特集

【対談】島田慎二×川淵三郎「僕は初対面で島田さんに『チェアマンをやってくれ』と言ったんだ」

川淵三郎がJリーグを立ち上げたのは1993年のこと。あれから24年の月日が経過したが、改革の意欲に何ら変わりはない。長らく混沌としたバスケットボール界に足を踏み入れると、その辣腕を発揮し、ほんの1年半ほどでBリーグを立ち上げて見せた。競技・運営の両面で躍進する千葉ジェッツへの称賛を惜しまぬ川淵と、代表として経営を引っ張る島田慎二。2人の初対談──。
※この対談は『CHIBA JETS FUNABASHI Memorial Book2016-17』に掲載された記事を抜粋して構成したものです。
協力:CHIBA JETS FUNABASHI Memorial Book2016-17、BASKET COUNTバスケット・カウント

「新リーグのチェアマンを」と言われてびっくりした

──まずはお2人がどのように出会ったのかを教えてください。

川淵三郎(以下、川淵): 2015年です。クラブの社長をやっている人がチェアマンに適任ではないかと思って、いろんな人を探したんです。過去、バスケットボールを立て直そうとした人や、Jリーグのクラブの元社長とか、何人かに当たってみたんだけど「その任にあらず」という感じで。

島田慎二(以下、島田): タスクフォースに川淵さんが来られて改革を進めていらっしゃる最中ですね。当時、川淵さんはいろんな方と面談されていて、その中の1人が私でした。タスクフォースのメンバーだった境田正樹先生からの紹介でした。

川淵: そう、初めて見た時に「面構えがいいな」と思ったのが第一印象。その時に千葉ジェッツの成り立ちや歴史もある程度は知っていて、島田さんが来て変わったと。普通の会社を経営していてバスケットと何も関係がなかった。こういう人こそ新しいプロリーグのチェアマンに相応しいと思ったんだ。

島田: 私はリーグ統一が念願でした。「統一なくして成長なし」と信じていて、統一されるか共倒れになるか。バスケットがなくなることはないので、いつかは統一される。でもいつなんだろう、と思っていました。そこに川淵さんが来られて一気に成し遂げて、川淵さんが何かをするならサポートしなきゃ、と考えていました。第一印象はイメージ通りでした。己の利益ではなくて、川淵さんはよく「怒り」とおっしゃいますが、「こんな理不尽なことがあってなるものか」、「何としてでも変えてやる」という迫力を感じました。うれしかったし、もう一方ではそういう感覚がバスケ界から生まれてこなかったことに忸怩たる思いもありました。

川淵: 僕はそこでもう「チェアマンをやってくれ」と言ったんだ。

島田: 川淵さんも忙しいので30分ほど、という話だったんですが、結局は今のバスケ界がどうなのか、今後はどうすべきなのか、と1時間ぐらい話したんです。私は「川淵さんに一度会ってみてくれ」と言われていて、タスクフォースの実務で動いてくれ、みたいな話かなと思っていたんですが、だんだん大きな話になってきて。「新リーグのチェアマンを」と言われてびっくりしたことを覚えていますね。

客観的に物事を見ることができるのがいいんだ

──たくさんの人に会って「その任にあらず」という評価をされてきた中、島田代表に白羽の矢を立てた理由は何だったのですか。

川淵: 島田さんと他の人の一番の違いは、バスケットボールに何の関係もなかったということ。客観的に物を見ることができるのがいいんだ。僕もサッカーをやっていたけど、Jリーグができる時には「今のレベルで何がプロ化か、笑わせるんじゃねえよ」と思ってたから。第三者的に物事を見ていたから、僕はサッカー界にのめり込んでいない。サッカー界の連中とつるんだりなんか、現役時代から絶対にしなかった。それが成功した理由の1つだと思う。

島田: バスケットは詳しくないですけど、どうしたらその状況が良くなるのかは、経営者としての長い経験や、人で苦労してきた、組織で苦労してきた経験があるので、その勘所みたいなところは分かります。私の仕事はビジネスを良くすること。選手たちもちゃんと経営していないと尊敬してくれません。実績を作らないのでは説得力がないので。それがあれば彼らも話を聞いてくれます。彼らはプロの選手で、私はプロの経営者です。プロと認めてもらえる状況を作ること。だからまずは経営ですよね。

川淵: 細かいところまで詳しく知る必要はなくて、要は勘所だね。チームの運営、試合の勝ち負け、チームの求心力のために何を一番にやらなきゃいけないのか。その勘所は島田さんぐらいになればバスケットの素人でも分かるということ。ところでオーナーは結構やりたいようにやらせてくれたの? 全権委任?

島田: そうですね、基本的には「やって」ということだったので口は出さずに任せっぱなしにしてもらいました。

川淵: オーナーも偉いよね。金は出すけど口も出す、というのが大部分のオーナーなんだから。

島田: 勝ちたいとは言われましたが、それ以外は任せてもらえました。

川淵: それが一番難しいんだよ。

島田: 最初の頃は、「すぐに勝ちたいのであれば、資金を増やしていい選手やコーチを引き抜けばいい」と言いましたが、地に足をつけてじっくり成長していこうということで一定の金額以上は出てきませんでした。でも逆にそれが良かったです。オーナーが勝ちたいからってお金を出すようでは、経営者が甘えてしまって育ちません。その点で私は良い意味でラッキーだったと思います。

ポイントを察知する力がとてつもなくすごい

──「何としてでも変えてやる」という迫力はお2人に共通しているんじゃないかと思います。

島田: 滅相もないです(笑)。私と川淵さんを並べるのは川淵さんに失礼ですから。

川淵: そんなことないよ(笑)。結局、自分が我慢できないから変えるんじゃないの? 「このままじゃ納得できない」、「自分がやれる限りはやってやろう」っていう。そうでないとなかなかやれないよ。島田さんにも同じようなことを感じるね。ただ、「我慢ならない」と言ったところで、手段や方法がないと変えようがないから、そういうアイデアを持っていたことが大きい。それがなければ絶対に成功しない。気持ちだけじゃダメだね。

島田: それはさっきの勘所みたいな話だと思います。川淵さんもバスケ界の混沌を見て一瞬にして理解されていた。あとはFIBA(国際バスケットボール連盟)の制裁という黒船来航みたいなものもあって。それに対して「選手たちの未来を閉ざすわけにはいかないだろう」と。手段はメディアを使うことであったり、プレーヤーズファーストもありました。問題をちゃんと見抜いて、ぐうの音も出ない正論をボンと言う。プレーヤーズファーストに対して「何を言ってるんだ」と反論した瞬間に、日本バスケットボール協会という組織は崩壊するわけじゃないですか。そういう環境をすべて逆手に取って、どこが突破ポイントかを直感的に判断されたんだと思います。そのへんの情報を吸収して、ポイントを察知する力がとてつもなくすごいと感じました。

川淵: いやいや、そんなことないんだけど、今は情報量がめちゃくちゃある。膨大な情報の中から読み解いて、何がポイントなのかを判断する。次に何にプライオリティを置いてポイントを解決していくのか。その判断が正しくできるかどうかが経営者の価値だね。


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