KADOKAWA Group
menu
menu

連載

「小説 野性時代」連載コラム「告白します」 vol.2

和田正雪「同じ顔の女」【連載コラム「告白します」】

「小説 野性時代」連載コラム「告白します」

最も旬で刺激的な物語が詰まった月刊文芸誌「小説 野性時代」より、コラム「告白します」を特別公開!
執筆者の個性が光る「告白」をお楽しみください。

(本記事は「小説 野性時代 2023年6月号」に掲載された内容を転載したものです)

和田正雪「同じ顔の女」
【連載コラム「告白します」】

「小説 野性時代」読者の皆さま、初めまして。『夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない』というホラー小説をKADOKAWAから刊行しました和田正雪と申します。「わだ しょうせつ」と読みます。名前だけでも覚えて帰ってください。
 さて「告白します」というテーマでエッセイを一本書きませんか? というご依頼をいただいて、何かあったかなとうんうん考えていたところ、小説の元ネタについて誰にも話していないことが一つあったのを思い出しました。
〝告白します〟……拙作『夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない』に登場する怪談の中には、創作ではない、実際の自分の恐怖体験が含まれています。
 私自身は霊感なんてものはないですし、幽霊が出たとかそういう話でもないのですが――。

 数年前の話です。当時、私は〇〇区のマンションに住んでいたのですが、職場が遠い妻の方がいつも先に家を出て、しばらくしてから遅れて私が出社するという生活を送っていました。
 ある日、いつものように妻が家を出てから五分ほど経った頃でしょうか。インターフォンが鳴りました。モニターを見ると妻が映っています。あぁ何か忘れ物かなと思ったのですけど、ここでふと気づいたことがあります。
 なぜインターフォンを鳴らしたのだろうか? 鍵を持ってるのだから勝手に入ってきたらいいのにと。
 横目に玄関の鍵を確認したところ、きちんと施錠されています。鍵をかけて出ていったのは間違いありません。
 再びモニターを見ると……そこに映っていたのはニタニタと笑う妻によく似た人物でした。よく似ているのですが、どこかが違う。どこが違うとも言えないのですが。モニターに映る妻に似た彼女があまりにも不気味で、恐ろしくなってしまった私はその場を離れ、自室に引きこもって居留守を使い、結局応答はしませんでした。
 数年経った今ではそんなには似ていなかったようにも思えてきますし、宗教の勧誘や訪問販売の類だったのかもしれません。たまたまよく似た風貌と服装の人が訪ねてくることもあるでしょう。
 ただあの時感じた恐怖だけは今もまだ残っています。この感覚を小説にしたいと思い、少し形を変えて作中に登場させました。
 この体験、そして小説のエピソードにしたことは妻には話していません。このエッセイをもってネタにしたことを〝告白します〟。

 ちなみに作中で使った自身の恐怖体験がもう一つあるのですが、これは『怪と幽 vol.013』での吉田悠軌さんとの対談記事でお話ししていますので、そちらをご覧ください。

プロフィール

和田正雪(わだ・しょうせつ)
1987年生まれ。岡山県出身。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。2023年、Web小説サイト「カクヨム」投稿作に改稿を加えた『夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない』でデビュー。

書籍紹介



夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない
著者 和田 正雪
定価: 1,705円 (本体1,550円+税)
発売日:2023年04月24日

僕の彼女は、怪談になった―。大切な人に会いたくなる切ない青春恋愛ホラー
オカルト雑誌編集部で働く大学生ライター×異界へ行くことを夢見る「赤い女」
ラストが深く沁みる、新時代の青春恋愛ホラー

零細出版社でアルバイトをしている大学生の米田は、雑務やHPの更新の他に実話怪談の記事の執筆を担当している「怪談ライター」だ。
ある日米田は取材の最中に、乃亜という不思議な、赤い服を着た女性と出会う。
彼女はオカルトマニアで実際に怪談の現場に多数足を運び、科学的に証明できるのかどうかや、再現性がある事象なのかどうかを確かめているのだった。
そして乃亜は怪談の中でも特に「神隠し」について執着しており、自らもいつか異界へと行くことを夢見ていた。

初めはかかわり合いになりたくないと感じていた米田だったが、深夜のオカルトスポット巡りなどのまっとうではないデートを通じて、否応なく距離を縮めていく。
だが彼女には、怪異にまつわる切ない過去があった――。

そして夏休み、米田と乃亜は、奇妙な祭りの風習があるという話を聞いて、後輩の実家がある山奥の土地に赴いたのだが……。

==
僕の彼女は、怪談になった――。
大切な人に会いたくなる、切なくみずみずしい青春恋愛ホラー
==

※Web小説サイト「カクヨム」投稿作に大きく加筆修正をし書籍化。
装画=春 (『ノーコピーライトガール』)

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322210001442/
amazonページはこちら

掲載号紹介



小説 野性時代 第235号 2023年6月号
編:小説野性時代編集部
希望小売価格:385円(本体350円+税)
発売日:2023年05月25日
商品形態:電子専売

デザインリニューアル号! 【新連載】増田俊也「七帝柔道記II 立てる我が部ぞ力あり」&【読切】貴志祐介「くさびら」&【短期集中掲載】木下昌輝「剣、花に殉ず」掲載!

【新連載】
増田俊也――七帝柔道記II 立てる我が部ぞ力あり
大反響を呼んだ、汗と、涙、涙、涙の青春小説、待望の続編がついにスタート!

【読切】
貴志祐介――くさびら
キノコの幻影が私の全てを包み込んでいく。
奇想と哀愁の読切ホラーミステリ。

【短期集中掲載】
木下昌輝――剣、花に殉ず
宮本武蔵、最強のライバル・雲林院弥四郎。
彼の猛き生涯を描く――これが、剣豪エンタメの最新形!

【連載】
赤川次郎――余白の迷路
秋山寛貴(ハナコ)――人前に立つのは苦手だけど
伊岡瞬――清算 最終回
今村翔吾――天弾
垣根涼介――武田の金、毛利の銀
河崎秋子――銀色のステイヤー
新川帆立――目には目を
中山七里――こちら空港警察
真山仁――ロスト7 最終回

【コラム】
告白します――草森ゆき「怖い人ではありません」
告白します――和田正雪「同じ顔の女」

【記事】
Book Review「物語は。」吉田大助
――西加奈子『くもをさがす』

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322301000677/
amazonページはこちら


関連書籍

MAGAZINES

小説 野性時代

最新号
2024年5月号

4月25日 発売

ダ・ヴィンチ

最新号
2024年6月号

5月7日 発売

怪と幽

最新号
Vol.016

4月23日 発売

ランキング

アクセスランキング

新着コンテンツ

TOP