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特集

対談 和田正雪×吉田悠軌 「怪談ライター」小説でデビューの作家が本物に訊く!

「実話怪談」との出会いが生んだ、青春恋愛ホラー

カクヨム掲載時から話題を呼んだ和田正雪さんのデビュー作『夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない』(2023年4月24日発売)。「実話怪談」を集める大学生ライターと、異界に魅せられたヒロインの切ない関係を描いた、青春恋愛ホラーです。和田さんが実話怪談を知るきっかけとなった憧れの人、吉田悠軌さんとの対談をお届けします!



取材・文=朝宮運河
写真=首藤幹夫

怪談を実際に取材している人がいる、という衝撃


吉田悠軌さん(左)と和田正雪さん(右)。和田さんはお仕事の都合で顔出し不可。

吉田悠軌(以下・吉田):なんでも和田さんは、私の活動をずっと追いかけてくれていたそうですね。

和田正雪(以下・和田):はい。吉田さんのファンなので、今日こうしてお会いできて光栄です。

吉田:それは奇特な(笑)。そもそも和田さんが、吉田悠軌という人間を知ったきっかけは何だったんですか。

和田:吉田さんが毎年出演されていた舞台です。初めて観に行ったのが2013年の公演。その舞台でこの世に「実話怪談」というジャンルがあることや、それを専門にしている方がいることを初めて知りました。

吉田:あの舞台は前半がオーソドックスな怪談ライブ、後半が仲間内で旅行に行ったら不思議な出来事に巻き込まれた、というドキュメンタリー演劇という、変則的な構成でした。その後半で毎回、私がヒロインに振られるという『男はつらいよ』みたいなお約束があって(笑)。

和田:それ以来吉田さんの活動を追いかけていて、京都での公演にも遠征しましたし、同人誌の『怪処』(=吉田さん所属の怪談サークル「とうもろこしの会」が刊行していたオカルトスポット探訪マガジン)や『一行怪談』をコミケまで買いに行きました。だから以前にも一度、コミケのブースでお会いしているんです。

吉田:それまで実話怪談、つまり不思議な体験をした人への取材をもとにした怪談というジャンルには、触れる機会がなかったんですか。

和田:そうですね。もともとホラーや怪談にそう詳しい方じゃなかったですし、世の中の怪談は“本当にあった”という体のフィクションだと考えていたんです。だから体験者がちゃんと特定できる怪談があって、吉田さんのようにそれを文章や語りで発表している方がいるというのが衝撃で。大げさな表現をすればパラダイムシフトというか、ものの見方が変わるような体験でした。

現代人の「異界観」が反映されたストーリー


吉田:2013年頃といえば、今ほど怪談イベントも多くなかったですもんね。今だったら実話怪談のプレイヤーもイベントの数もかなり増えていますけど。

和田:今回本にしていただいた『夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない』という小説は、実話怪談のライターをしている米田という大学生が主人公なんです。この設定は明らかに吉田さんの影響ですね。

吉田:このところ実話怪談のライターや怪談師が登場するフィクションが、徐々に増えているような気がしますね。当事者からするとやや複雑な描かれ方というか……、要は「こんなに儲かる仕事じゃないぞ」ということなんですけど(笑)。

和田:(笑)

吉田:それでも現代の文化シーンにおいて、実話怪談の認知度が上がってきた証拠なのでしょうから、歓迎していますよ。世間一般ではまだまだですが、和田さんのようにアンテナを張っている若い方の間では、「実話怪談? 何それ?」と言われることが減ってきた。

和田:YouTubeでの怪談配信も人気ですしね。カジュアルに実話怪談に接することができる時代なのかなと思います。小説では米田が取材を通して乃亜というヒロインと知り合い、とある集落の儀式を取材することになります。前半の舞台が東京、後半の舞台が地方という構成も、吉田さんが出演されていた舞台へのオマージュなんですよ。

吉田:ああ、言われてみれば! そこまで再現してくださっていたとは。ちなみに米田たちが後半で向かう山村は、岡山あたりですか。

和田:おっしゃるとおりです。自分が岡山出身なので、地元にある地名をもじって舞台にしました。実在する場所はなくてあくまでモデルですが、都内からの距離も大体岡山あたりを想定しています。

吉田:「ウシイド」などの固有名詞から、そうじゃないかと思いました。異界に魅了された現代の若者たちが新宿から岡山に向かうという展開には、無意識的であるにせよ、現代の異界観が表れているように思います。

早稲田大学近辺で囁かれる怪談あれこれ


和田:新宿といえば、先日吉田さんの『新宿怪談』という本を読ませていただいたんですが、早稲田大学の近くにあるT公園の怪談が載っていましたよね。僕が早稲田の学生だった頃にも、同じような噂が流れていたので懐かしかったです。

吉田:どういう噂でしたか?

和田:小高い山に幽霊が出るという噂で、具体的にどんな姿かは語られていなかったと思います。公園の地下に大量の人骨が埋まっているという話もありました。

吉田:私は和田さんより7歳上ですが、やっぱり同じような噂を早稲田在学中に聞いています。T公園の怪談はあの辺の学生たちに代々受け継がれているんですね。他に早稲田界隈で奇妙な噂は?

和田:某お弁当屋さんのおばちゃんがアンドロイドだという都市伝説は、結構有名だと思います。大勢の学生が好き好きに注文しても、一切ミスすることなく注文をさばくので、理工学部で作られた人造人間だと囁かれているとか(笑)。

吉田:それは聞いたことがないな(笑)。昔はどの駅のキヨスクにも、そういう凄腕のおばちゃんはいました。それを知らない若い人たちの中で、新しい都市伝説が生まれているのかもしれないですね。早稲田が舞台の青春恋愛小説といえば、村上春樹の『ノルウェイの森』が代表的だけど、和田さんの小説もその系譜にあるといえるかもしれない。

和田:実話怪談や異界をモチーフとした作品ですが、中心にあるのは米田と乃亜の関係です。ある意味、切ない話になっているんですが、こういう形の幸せもあるんじゃないかと思う。ここには僕の恋愛観が表れていると思います。

吉田:そこが異界というモチーフと無理なく繋がっていて、なるほどと感心しました。実話怪談や異界が扱われてはいるけれど、怖いものがあまり得意じゃない人でも楽しめる。間口の広いエンターテインメントだなと思います。今後の抱負はありますか。

和田:非現実なんだけど読者の方が自分のことが書いてあるかのように身近に感じる小説というのを今後も追求していきたいと思っています。本日はありがとうございました。

*2023年4月26日発売予定の「怪と幽」vol.013では、対談の別バージョンを掲載!
そちらでは、和田さんが怪談の実体験をどのように小説に盛り込んだかのお話や、吉田さんが著書『現代怪談考』で追究した〈赤い女〉との関連の話題も盛りだくさん。ぜひお楽しみください。

プロフィール

和田正雪(わだ・しょうせつ)

1987年生まれ。岡山県出身。早稲田大学教育学部国語国文学科卒。2023年、Web小説サイト「カクヨム」投稿作に改稿を加えた『夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない』でデビュー。

吉田悠軌(よしだ・ゆうき)

1980年、東京都生まれ。怪談研究家。怪談サークル「とうもろこしの会」会長。著書に『現代怪談考』 『新宿怪談』『一行怪談』『禁足地巡礼』『一生忘れない怖い話の語り方』など多数。

作品紹介



『夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない』
和田正雪 KADOKAWA
オカルト雑誌編集部でアルバイトをしている大学生・米田は、実話怪談の取材の最中、乃亜という赤い服を着た不思議な女性と出会う。オカルトマニアの乃亜は、いつの日か「異界」に行くことを夢見ていた。新鋭が放つ、みずみずしく切ない青春恋愛ホラー。

詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322210001442/
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『現代怪談考』
吉田悠軌 晶文社
現代人がもっとも恐れる怪談、それは「子殺し」を描いた怪談だ。カシマ、口裂け女、テケテケなど数多くの怪談を取りあげ、その真相にある現代人の恐怖をえぐり出す論考集。怪談・オカルト研究家である著者が長年追い求めている、「赤い女」にまつわる考察を含む。


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