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連載

北上次郎の「勝手に!KADOKAWA」 vol.8

北上次郎の勝手に!KADOKAWA 第8回 フェリックス・レガメ『明治日本写生帖』(林久美子訳) 「日本の夜明け」が蘇る

北上次郎の「勝手に!KADOKAWA」

数々の面白本を世に紹介してきた文芸評論家の北上次郎さんが、KADOKAWAの作品を毎月「勝手に!」ご紹介くださいます。
ご自身が面白い本しか紹介しない北上さんが、どんな本を紹介するのか? 新しい読書のおともに、ぜひご活用ください。

フェリックス・レガメ『明治日本写生帖』


フェリックス・レガメ『明治日本写生帖』(角川ソフィア文庫)


 この本の27ページに「荷馬」というページがある。そこに描かれているのは、日本の田舎の風景だ。荷物を運ぶ馬に、男が座って草を与え、それを赤子を背負った女性が見ている。そこに次の一文が付けられている。

「田舎の風景。日本の馬は大変に小柄である」

 当時の馬がポニーのように小さな馬であったことは広く知られている。大きな馬が日本に入ってきたのは明治以降である。諸外国に負けないように改良を重ねて、馬を大きくしたわけだ。だから、戦国時代を描いた映画などで大きな馬が駆ける風景は、虚構にすぎない。明治も後半になると、大きな馬が現れ、95ページの「騎兵隊」という項目には、馬にまたがる正装の下士官が描かれ、次のように書かれている。

「現在、われわれの戦列連隊で用いられている馬と、ほぼ同じような大きさの馬を有しているのは、ほとんど将校のみに限られている。それらの馬は、ヨーロッパやアメリカからもたらされている」

 もう一枚、馬の絵を引く。238ページに「ポニーに乗った幼い主人を学校まで送る使用人」と題して、少年の乗る馬を馬丁がひく絵が描かれている。そこにこうある。

「伝統的な着物を着ているが、西洋の召使いの庇帽がそこに付け加えられている。主人は資本家の子どもで、師範学校の生徒である」

 まだ町にはポニーがいて、将校だけが西洋ふうの大きな馬に乗っていた明治後半の、過渡期の日本の風景がここにある。

 フェリックス・レガメが来日したのは、明治9年と明治32年。本書は、著者がスケッチした明治日本の素描と、日本で収集した複製版画、挿絵などを紹介した「貼り交ぜ帖」で、見ているだけで飽きない。当時の街頭に出ていたさまざまな「見せ物」が紹介されているのだ。148ページの「芸者」の絵は、カラーで見たかった。

フェリックス・レガメ/訳:林久美子『明治日本写生帖』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321806000094/


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