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連載

北上次郎の「勝手に!KADOKAWA」 vol.5

北上次郎の「勝手に!KADOKAWA」 第5回 小松左京『復活の日』

北上次郎の「勝手に!KADOKAWA」

数々の面白本を世に紹介してきた文芸評論家の北上次郎さんが、KADOKAWAの作品を毎月「勝手に!」ご紹介くださいます。
ご自身が面白い本しか紹介しない北上さんが、どんな本を紹介するのか? 新しい読書のおともに、ぜひご活用ください。

 ◆ ◆ ◆

 新刊書店の文庫コーナーで、新刊にまじって小松左京『復活の日』の表紙を見たとき、なぜ今ごろ? と最初はその意味がわからなかった。そうか、この作品は新種のウイルスで世界が滅びる話だったか、とすぐに気がついたが、半世紀以上前に書かれた作品が、いまこうして読まれることになろうとは、実に感慨深い。

 角川文庫版の解説(小松実盛)によると、1964年3月に出版された小松左京の第一長編『日本アパッチ族』が10万部を目指したものの、「7万5000部しか売れなかった」ので、その責任を取るかたちで書いたのが、あの大ベストセラー『日本沈没』だったという。7万5000部も売れれば十分だと思うが、そういう時代の差も興味深い。

 それはともかく、『復活の日』は1964年8月に書き下ろし長編として刊行された。『日本アパッチ族』と同年の刊行とはすっかり忘れていた。いまから56年前のことで、わかりやすく言うならば、東京オリンピックの年である。私が高校3年のときで、『日本アパッチ族』も『復活の日』も、近所の貸本屋で借りて読んだことを思い出す。

 小松の第三長編『エスパイ』も高3の年に読んだと思っていたが、いま調べると『エスパイ』の刊行は1965年。高校に向かう坂道を上りながら、あれはエロチックな小説だったなあと考えた記憶があるのだが、1965年の刊行では私がすでに大学に入っているから、それは偽記憶だろう。

 半世紀ぶりに今回、『復活の日』を再読したが、まさかこの物語がこんなにリアルなものになろうとは思ってもいなかった。すっかり忘れていたので大変面白い。特にラスト近く、吉住が南極を離れてアメリカに向かう「冒険行」が興味深い。通俗的な展開とも言えるのだが、こういうケレンをきっちり描くところが好きだ。『エスパイ』も再読したくなってきた。



小松左京『復活の日』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321710000583/


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