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連載

カドブン meets 本が好き! vol.51

可能性の扉を、少女達は自分の手で次々に閉じていってしまう。── 『君の教室が永遠の眠りにつくまで』レビュー【本が好き!×カドブン】

カドブン meets 本が好き!

『君の教室が永遠の眠りにつくまで』レビュー【本が好き!×カドブン】

書評でつながる読書コミュニティサイト「本が好き!」(https://www.honzuki.jp/)に寄せられた、対象のKADOKAWA作品のレビューの中から、毎月のベストレビューを発表します!
今回のベストレビューは、鳩羽さんの『君の教室が永遠の眠りにつくまで』に決まりました。ありがとうございました。



可能性の扉を、少女達は自分の手で次々に閉じていってしまう。その時間に留まるために。それは愚かにも、ひどく羨ましいようにも思えた。

レビュアー:鳩羽さん

 厚い灰色の雲におおわれ、晴れることのない町、不思子町。小学六年生の葵は、ちょっとした誤解で仲違いをしてしまった紫子と仲直りをするため、ある作戦を決行しようとしていた。しかし、その作戦を手伝ってくれるはずだった担任の石山は、急病で入院してしまい連絡が取れなくなる。
 石山の代わりにやってきたクラス担任の狭間百合は、ベテラン教師の風格があり、どこか懐かしいような、旧知の人物のような感覚を生徒たちに抱かせた。落ち着きのなかったクラスは、百合の指導のもとに一つにまとまっていくが、葵は百合に心を許すことができないでいた。

 大人びているようで、子供である。
 それは葵の年齢のせいなのか、それとも年月を経て子供時代を振り返っているからなのか、一部で描かれる小学六年生の葵の一ヶ月ほどの時間は、濃密で息苦しくて、切ないくらいに思い詰めている。とある作戦の協力者である石山も、完全に信頼できる人物のようには描かれておらず、新しくやってきた担任教師の百合も胡散臭い。警察官になることを当然のように押しつけてくる両親に頼ることもできず、警察官という職業から見ると驚くくらい幼い、愚かな物言いをする父と母には、読者も閉口してしまう。
 大人が信用できない、という訳ではなく、小学六年生にして、人と人は容易に超えがたい隔たりを持っているのだと確信しているのだろう。だが、その諦めは、葵に過ちを犯させることになる。
 背が高くてしっかり者、決して仲間はずれにされるようなタイプではないが、葵の日常は静かで孤独、いろんなものから断絶されているように見える。情報を持っているはずなのに、それを結びつけて知識にできていないというか、話せば伝わることもあるのに、なぜかそれを選択しないというか。
 そんな、経験が浅くて、居場所を得られていない不安定な少女が、何に悩み、思い詰めているのか。
 読者は否応なしに引きつけられ、急な展開にドキドキし、何重にも「えっ」と驚いてしまう。

 その後の二部、三部は、視点や時代が変わり、一部の補足や補強が為される。ミステリでいうところの謎解きや、ホラーでいうところの決着みたいな事柄だ。
 葵視点で描かれていた一部と、微妙に事態のニュアンスが違っていたりするので、他者の視点だから違うのか、それとも断片的な情報や経験しかない子供の視点だから違うのか分からず、その辺りは妙にリアルに感じられた。
 信頼できない子供の語り手は、無知ならば愛しく、嘘ならば可愛いものだ。紫子の誤解を解いて、仲良しに戻りたいという気持ちの純粋さだけが信じられて、結局のところ何が起こっていたのかとか、社会的にどう決着をつけるのかとか、物語は全部放り投げてしまう。

 だが、すっきりとオチがついた大団円を求めないのであれば、あるいはミステリでもホラーでもなく、ただひたすら1人の少女を求めた少女同士の恋の話だとすれば、これでいいのではとも思う。
 誤解がなくても、葵と紫子は仲良しの関係を続けていけただろうか。それは友情だろうか、恋愛感情だろうか。双方が同じ気持ちであればいい。だが、食い違ってしまったら?
 その最悪の結果は、作中に見事な構図で表現されてもいる。
 関係の成就は、時間を止めてしまうしか方法がなかったのかもしれない。

▼鳩羽さんのページ【本が好き!】
https://www.honzuki.jp/user/homepage/no15102/index.html

書誌情報



君の教室が永遠の眠りにつくまで
著者 鵺野 莉紗
定価: 1,870円(本体1,700円+税)
発売日:2022年12月06日

スクールホラー、クローズドタウン、百合ロマン。全ての読者を驚愕させる!
大嫌い、大好き。――だからお願い、地獄に落ちて。
二人の少女をめぐる、運命と戦慄の「百合」×「ホラー」

30年以上、正体不明の灰色の雲に頭上を覆われている北海道F町。この町に暮らす小学六年生の遠野葵は、同級生の落合紫子が無二の親友であり、また友情を超えた感情をも抱きながら幼い日々を幸福に暮らしていた。しかし、葵が犯した過ちがきっかけで、研究者をしている紫子の父のスキャンダルが暴かれる。紫子は町中からバッシングされ、学校でも激しいいじめに遭ってしまう。葵は謝罪すらできないまま、紫子は転校して町を去る。同じ頃、町では住人が相次ぎ失踪する事件が起き、新しい担任の狭間百合が学校にやってくる。百合は葵に「私はあなたの秘密も過ちも知っている。そして私だけがあなたを助けることができる」と告げる。その言葉に従い、葵は恐ろしい儀式に手を染める。やがてついに、葵たちは運命の日を迎えることになるのだが……。スクール・ホラー、クローズド・タウン、そして儚い百合ロマン。ミステリとホラー、それぞれの読者を驚愕させる、規格外の横溝正史ミステリ&ホラー大賞「優秀賞」受賞作
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322207000265/
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