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連載

カドブン meets 本が好き! vol.52

謎の絵画に秘められた、戦時を生きた女たちの過去── 『海は地下室に眠る』レビュー【本が好き!×カドブン】

カドブン meets 本が好き!

『海は地下室に眠る』レビュー【本が好き!×カドブン】

書評でつながる読書コミュニティサイト「本が好き!」(https://www.honzuki.jp/)に寄せられた、対象のKADOKAWA作品のレビューの中から、毎月のベストレビューを発表します!
今回のベストレビューは、あおいさんの『海は地下室に眠る』に決まりました。ありがとうございました。



一枚の絵画が繋ぐ現代と戦時下。時代を経ても変わらない大切な人への想いに溢れていた。

レビュアー:あおいさん

千葉県・稲毛海岸近くの洋館から見つかった謎の絵画。
絵画の謎を追うひかり、戦時下の記憶を語る祖母。
千葉市美術館で学芸員をしているひかりは、ある調査で訪れた洋館で一枚の絵に出会う。

女が白い壁の室内にいて、こちらを振りかえっている絵にひかりは心惹かれる。何かにとりつかれたかのように、その絵に心を揺さぶられる。

ひかりが謎を追う一枚の絵画とはいったいどんな作品だったのか。いったい誰が描いたのか。
絵画に込められた、戦時下を懸命に生きた人々の想いが少しずつ明らかになっていきます。

祖母が戦時下に友情を結んだまさかの相手。その友情は美しくもあり、儚いものでもありました。
でも大切な人を思い守りたいという気持ちは、時を経ても変わらず心に深く残りました。

稲毛海岸に行ったことはありますか?
私は行ったことがありません。今では人工的に白い砂で覆われた海岸だそうです。
ひかりが勤務する千葉市美術館の所蔵する作品も何点か登場しますが、その一枚ジョルジュ・ビゴーの「稲毛海岸」という作品をぜひ検索してみてください。

この作品はジョルジュ・ビゴーが日本滞在中に描いた作品ではなく、帰国後に稲毛海岸を思い描きながら描いた作品だそうです。今の稲毛海岸とは景色が違うけれども人々がそこに生活し、憩いの場としての海岸が描かれているように私には感じます。

ジョルジュ・ビゴーが描いた「稲毛海岸」のように一枚の絵画に描かれたのは、その時や場所人々を切り取った瞬間に過ぎないのかもしれません。
時代が代わり風景が変わっても、画家の思いが受け継がれる限りその絵に込められた思いは変わらずそこにあり続けるのだろうと思います。

現代と戦時下の二つの時代を通し、それでも変わらない大切な人への思いが込められた絵画を心に描きながらぜひ読んでほしいと思います。

▼あおいさんのページ【本が好き!】
https://www.honzuki.jp/user/homepage/no15278/index.html

書誌情報



海は地下室に眠る
著者 清水 裕貴
定価: 1,980円(本体1,800円+税)
発売日:2023年01月30日

謎の絵画に秘められた、戦時を生きた女たちの過去。
稲毛海岸近くの古い洋館・伝兵衛邸の地下から、正体不明の絵画が発見された。ドレスを翻し踊る女を描いたその絵は、過去にこの地域で流行っていた“赤いドレスの女”の怪談を思い出させるという。
学芸員のひかりは、絵について調べようとしていたところに映像作家の黒砂からある資料を預かる。千葉一の花街として栄えた蓮池にまつわるインタビューを集めたその資料では、ひかりの祖母が”流転の王妃”として知られる嵯峨浩との戦前戦中期の交流について語っていた。
地下室の絵画と祖母の過去、そして“赤いドレスの女”の怪談。欠片をひとつずつ紐解くと、運命に翻弄された女たちの秘められた過去が明らかになる――。
詳細:https://www.kadokawa.co.jp/product/322201000339/
amazonページはこちら


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