
戦時中、何もかもが暗く恐ろしいわけじゃなかった。独裁的な国や大人の下、明るく生きた子供達の姿はまぶしい。『ギブミー・チョコレート』【本が好き×カドブン】#10
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第10回のベストレビューは、こまちさんの『ギブミー・チョコレート』(著者・飯島敏宏)に決まりました。こまちさん、ありがとうございました。
戦時中、何もかもが暗く恐ろしいわけじゃなかった。独裁的な国や大人の下、明るく生きた子供達の姿はまぶしい。
レビュアー:こまちさん
テレビ局の演出部・映画部で活躍した飯島敏宏さん。
御年87歳にして初の小説をお書きになった。
時は太平洋戦争のさなか、子供だった飯島さんの実体験を元にした物語。
普通の子供達が体験する普通の日々と、普通じゃない日々。
ちょっとずつ変っていく日常が、淡々と普通っぽく描かれているのが逆に真実味を増していて、戦争の怖さや理不尽さが伝わってくる。
戦時中であっても自由な精神で、子供達の成長を見守る先生がいたかと思うと……。
まさに軍隊的な教育で子供達を統率する熱血教師もいる。
先生からの往復びんたは日常茶飯事だなんて、今だと体罰問題です。
でも、この物語に出てくる通称鬼久保先生には、まだ愛情のかけらがあるから救われます。
その後に出てくる通称イタチ先生は戦地での体験がそうさせたのか、狂信的で恐いです。
先生はさておき、子供達ですが皆元気です。
戦時中だから意気消沈してるのか思いきや、楽しく過ごす術を知っている、さすが子供はスゴイ。
主人公ヒロシの親友のチュウという男の子の存在が、ピカイチ光ってました。
積極的で勇気があって正義感がある。古い表現かもしれないけど男の中の男って感じの少年です。
チュウの祖母や女の先生など、優しく賢い女性も出てきて、彼女らの存在も光っていました。
戦争を過去の物語として語るだけでなく、そこから未来へ向けての発信をしていく。
そんな小説を書けるのは戦争を体験した人だからこそでもある。
そして、著者のあとがきにもあるのですが、なによりも面白く読んでくれたかな?という著者の問いかけが良かったです。
戦時中、何もかもが暗く恐ろしいわけじゃなかったんですね。
独裁的な国、大人の下、時には反抗しながらも伸び伸びと明るく生きた子供達の姿、まぶしいです。
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