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連載

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』 vol.112

【第272回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉

【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』

柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。

【第272回】柚月裕子『誓いの証言』

 晶は法廷をあとにし、裁判所の建物を出た。上を見る。秋晴れの空は高く、薄い雲が広がっている。
 陽のまぶしさに、晶は目を細めた。
 空を見上げたのは、いつ以来だろうか。思い出せないほど、ずっと前のような気がする。
 裁判所の正面玄関で、晶がぼんやりと空を見ていると、まわりから大勢の人間が駆け寄ってきた。腕に新聞社やテレビ局の腕章をつけている。裁判を傍聴していた報道関係者だ。晶はその人間たちに、あっという間に取り囲まれた。
「安藤晶さんですね。ちょっとお話を伺いたいのですが。今日の判決をどのようにお聞きになりましたか。控訴するんですか」
「あなたのおじいさんが、亡くなった経緯を詳しく聞きたいんですけど」
「今回のことは、久保さんへの復讐だったんですか」
「判決は無罪でしたが、久保さんは社会的に大きなものを失いました。あなたはいま満足ですか」
「今日の無罪判決を受けて、こんどは被告人があなたを訴えてくる可能性もありますが、それをどうお考えですか」
 報道関係者は、矢継ぎ早に訊いてくる。
 晶はなにも言わず、人垣から出ようとした。しかし、彼ら彼女らは、晶を逃がさない。行く手を阻み、同じ質問を繰り返してくる。
 晶はたまらず、声を出した。
「通してください」
 その声は、報道関係者の怒声にも似た問いにかき消されてしまう。晶は声を張った。
「お願いです。通して」

(つづく)

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連載小説『誓いの証言』は毎日正午に配信予定です(日曜・祝日除く)。更新をお楽しみに!
https://kadobun.jp/serialstory/chikainoshogen/

第1回~第160回は、「カドブン」note出張所でお楽しみいただけます。

第1回はこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/n/n266e1b49af2a
第1回~第160回の連載一覧ページはこちら ⇒ https://note.com/kadobun_note/m/m1694828d5084

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