【第192回】柚月裕子『誓いの証言』〈佐方貞人シリーズ弁護士編〉
【連載小説】柚月裕子『誓いの証言』

柚月裕子さんによる小説『誓いの証言』を毎日連載中!(日曜・祝日除く)
大人気法廷ミステリー「佐方貞人」シリーズ、待望の最新作をお楽しみください。
【第192回】柚月裕子『誓いの証言』
佐方は、被害届を出された男性は間違いなく平尾弁護士事務所にいた久保であることを伝え、彼を救うために協力してほしい、と頼んだ。
清水はその場で、佐方の頼みを断った。あなたも弁護士ならわかっているだろうが、自分たちには守秘義務がある。請け負った案件について話すことはできない、そう答えた。
言われるまでもなく、守秘義務に関しては佐方もわかっていた。しかし、佐方は粘った。どうしても久保を救いたい。なんとか力になってほしい、と食い下がる。
佐方の粘りに根負けしたのか、話を聞いているうちにかつて同僚だった男への情が蘇ったのか清水は、自分からはなにも言えないが、久保が扱っていた案件の関係者に会えるよう動いてみる、と言う。会える段取りが整ったらこっちから連絡をする、そういって清水は電話を切った。
清水から連絡があったのは、翌日だった。
二日後なら、蕃永石事業協同組合の理事を務めている男性に会える。もしその日にこっちに来られるなら、自分が同行して男性に引き合わせる、と清水は言う。佐方は二日後の午前中に清水と高松空港で待ち合わせる約束をした。
その話を小坂に伝えたところ小坂は目を輝かせて、一緒に行く、と言い出した。あっちでなにか困ったことがあったらひとりでは大変だ。助手として自分がついていく、と言う。
(つづく)
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