城下町は防犯のため、やたらと角が多く、道の先が見通せない作りになっている。逆に言えば、こういう特徴の道があるのは城下町であることが多い。こんな風に土地は言葉ではなく、形や別の何かで過去を物語る。
本書は錦糸町、川崎、上野、大阪、呉、六本木を舞台に取り、それぞれに現れる過去の亡霊「グンカ」を封じ込めるために行動する一族―鮎観、彼女の元夫遼平を中心に描く。
彼女たちの訪ねる場所についていくと、突然異空間に投げ出され、否応なくグンカと対面する。でもグンカっていったい何なのだろう、という疑問が頭に渦巻いていた。
ふと思う。見えないものほど怖いものはない、と。普段は見えないグンカがだけど、実はそこかしこにいる……そんな想像をしてゾッとしてしまった
日本各地の旧軍都に埋もれる負の記憶は時とともに忘れられていく。でも決して消えてはいない。このダークファンタジーは癖になりそうだ。
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