書評家・作家・専門家が《今月の新刊》をご紹介!
本選びにお役立てください。
(評者:鹿内武蔵 / FXライター)
FX雑誌の編集部に11年在籍し、独立後はFXライターとして活動させてもらっています。
仕事がら、たくさんのプロトレーダーのお話を聞く機会に恵まれているのですが、成功している方に限ってほぼこのようにおっしゃいます。
「FXで結果を出すためには、手法は重要ではない」
この言葉を聞いて、どこか納得できない自分がいました。利益を出すために、優位性のあるトレード手法は絶対必要じゃないのか? 他のトレーダーを出し抜いて、いち早く利益を出すためのやり方もなしに、厳しいFXの世界で結果が出せるのか? いつもそう思っていました。この言葉の意味を、ずっと考え続けながら活動していました。
そして、この本の存在が、この言葉を理解する一つの鍵になりました。
「FXで結果を出すためには、優位性のある手法はあって当たり前。それと同じかそれ以上にポートフォリオの意識が大切である」
ということを、学ぶことができました。
この本の著者である、あっきんさん、鈴さんは、どちらもトラリピというFXの自動売買で資産を築き、勤務先を辞めて自由な生活を手にしています。トラリピはまさに手法にあたる部分で、爆発的な利益を得ることは難しいものの、しっかり計算してリスクを低く抑えれば、年間に10%前後のリターンを得ることが可能です。そして、放置に近い運用ができます。でも、手法であるトラリピ以上に重要なものが、ポートフォリオを組み、それを成長させていく考え方です。
というのも、お二人のように今の仕事をやめたいとお考えの方はたくさんいるはず。そのためにFXの勉強をし、トレードの練習をするのはもちろんよいことだと思うのですが、大切なのは仕事をしなくても生きていけるだけの資金を、どういう計画で貯めるのか。
どんなトレードにも、想定される利回りがあります。そして、原資と利回りから計算できるリターンしか得ることができません(もちろんプラス収支にできる段階のお話です)。
生きていくために年間500万円必要で、利回りが年20%のトレード手法を持っているなら、投資だけで生きるには2500万円の資金が必要になりますよね。こうやって書くと当たり前のことなんですが、恥ずかしながら私はこういう基本もあまり意識できていなかったです。
そして、今すぐに投資できる資金がそれほど多くなければ、投資だけで生活していくことはできないという、当たり前の結論になります。
ここで生きてくるのが、ポートフォリオの考え方です。何もいきなり最初から投資から得たお金だけで暮らさなくてもよいのです。仮にトラリピが年12%のリターンなら、3000万円で月に30万円が入ってきますから、3000万円をどう作るかという発想になります。
あっきんさん、鈴さんともに、労働の報酬を有効に活用して原資を作ることを推奨していますし、お二人もそうやって原資を大きくしました。また、トラリピより手はかかるものの、もっと利回りが良い裁量トレードの手法を研究するのもありでしょう。
このように、労働報酬も含めたポートフォリオの意識を持ち、さらに利益再投資による複利効果も加えて、総合的に原資を大きくしていくことが、投資をする上での第一のゴールであることがよく分かりました。
どうしてもFXで稼ぎたいと思うと、目先のチャートや値動きに集中しすぎてしまうものです。もちろんそれらも大切ですが、自分の資産を育てていく意識がないと、そのときどきのお金の増減に一喜一憂することに終始してしまう可能性があります。
生活、労働、投資、体力、今の資金など、自分を構成する要素をポートフォリオの意識で組み合わせて、人生100年時代を生き抜く土台を構築していきましょう。
▼あっきん / 鈴『黄金の卵を産むニワトリの育て方 FXトラリピ最強トレーダーの投資術』詳細はこちら(KADOKAWAオフィシャルページ)
https://www.kadokawa.co.jp/product/321909000030/