menu
menu

レビュー

【評者:美村里江】美味しそうな魚料理に唸り、無口で渋いお爺さんに痺れる『エミリの小さな包丁』

 内陸育ちのためか海辺の暮らしに強く憧れていて、魚料理が好き。19歳から“マイ包丁砥石”を持っている、そんな私にぴったりの小説だった。
 人間関係で傷ついたエミリは、職場に居場所がなくなり、長年疎遠だった海辺に住む祖父を訪ねる。元来無口な祖父が口にする言葉は少なく、老犬の散歩や、住民との交流、食材を得るための海釣り。何よりその魚を一緒に料理していくことによって、二人は打ち解けていく。毎日料理前に包丁を研ぐ日課も加わり、エミリの心も少しずつ、夏の海辺で輝きを取り戻していく。
 この祖父「大三だいぞう」が、とても格好いい。言葉は少ないが、名言が沢山あり、こういうのを“学のある人”というのだろう。役者ならその奥行きを演じてみたくなるような、滋味深い人物像が素敵である。
 「浦」=「心」のことだという話も深く染みた。羨ましいは、心が疚しい。裏切るは、心を切る。心=裏=浦=美しいもの。だから心が美しく保たれていれば、気分が良い。覚えておきたい、優しい人生訓だと思う。

「ダ・ヴィンチ 2019年12月号」より
ご購入&試し読みはこちら▶森沢明夫『エミリの小さな包丁』| KADOKAWA

関連記事
田舎暮らしの理想形が詰まった、海辺の小さな町での癒しと再生の物語『エミリの小さな包丁』


紹介した書籍

関連書籍

新着コンテンツ

もっとみる

NEWS

もっとみる

PICK UP

  • 伊坂幸太郎〈殺し屋シリーズ〉特設サイト
  • 伊岡瞬 特設サイト
  • 新井すみこ『気になってる人が男じゃなかった』特設サイト
  • 「おでかけ子ザメ」シリーズ特設サイト
  • 煮ル果実『ポム・プリゾニエール』特設サイト
  • カドブンブックコンシェルジュ ~編集部があなたにぴったりの本をご提案します~ 【編集部おすすめ小説記事まとめ】

MAGAZINES

小説 野性時代

最新号
2024年2月号

1月25日 発売

ダ・ヴィンチ

最新号
2024年3月号

2月6日 発売

怪と幽

最新号
Vol.015

12月22日 発売

ランキング

書籍週間ランキング

1

人間標本

著者 湊かなえ

2

恐竜はじめました2

著者 クラナガ

3

地雷グリコ

著者 青崎有吾

4

気になってる人が男じゃなかった VOL.1

著者 新井すみこ

5

カラフルな魔女 角野栄子の物語が生まれる暮らし

監修 KADOKAWA

6

777 トリプルセブン

著者 伊坂幸太郎

2024年2月11日 - 2024年2月18日 紀伊國屋書店調べ

もっとみる

レビューランキング

TOP