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中学で習ったハンムラビ法典の「目には目を歯には歯を」とは、自分が受けた害と同等の害を相手に加える報復律。加害者を戒めるだけでなく、被害者側の無限かつ過度な報復を防ぐという意味もあるらしい。
長峰の一人娘・絵摩は未成年の少年たちに蹂躙され、無残な姿で発見される。
現代にハンムラビ法典は通用しない。そして罪を犯した未成年者には少年法がある。つまり絵摩を貶めた少年たちは法に守られる。長峰は何かに突き動かされるように自分の手で彼らを裁くことを決意する。
正直読んでいる間、苦しく辛かった。長峰の気持ちが痛いほど伝わったからだ。一方で正義とは、愛とは何なのかを考え続けた。被害者、警察……正義にはそれぞれの言い分がある。しかし愛には善も悪もなく、ただひたすらに注がれる……たとえ罪を犯した子どもにも。
長峰が振りかざしたのは正義の刃だろうか。その刃はラストで読者に突き刺さる。
>>東野圭吾『さまよう刃』